気候変動
方針
世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃まで抑える努力をすることを目標に掲げるパリ協定は2020年から実施段階に入りました。この目標達成のためには国・政府だけでなく、企業に寄せられる期待が大きくなっており、事業を通じた気候変動対策の取り組みが必要となっています。
豊田通商グループは「クリーンエネルギーや革新的技術を活用し、自動車/工場・プラントCO2を削減することで、脱炭素社会移行に貢献」をサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)の一つとして特定し、再生可能エネルギー戦略を成長戦略における7つの重点分野の1つに位置付けています。
また、気候変動対策の一つとして欠かせないのがサーキュラーエコノミーへの移行です。豊田通商グループでは「廃棄物を資源化することで、モノづくりを支え、循環型社会に貢献」もサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)の一つとして認識しており、7つの重点分野に「循環型静脈事業」が含まれています。
環境方針では「クリーンエネルギーや革新的技術を活用し、自動車/工場・プラントのCO₂排出を削減することで、脱炭素社会移行に貢献するとともに、自らの事業活動を通じた温室効果ガスの排出を削減し、カーボンニュートラルを目指す」ことを掲げています。
豊田通商グループはパリ協定に賛同しており、2021年7月には脱炭素社会移行への貢献に向けた具体的な方針として「2030年までに2019年比で50%削減することを目指し、2050年にカーボンニュートラル」とするグループ共通の削減目標を策定しました。気候変動の影響を「緩和」し、すでに生じている、また将来予測される気候変動の影響による被害を最小化(適応)するため、さまざまな角度から豊田通商ならではの気候変動対策に取り組むなど、全社を挙げて世界のカーボンニュートラル(CN)・サーキュラーエコノミー(CE)を推進しています。
当社グループでは従来からCN・CEの実現につながる事業を展開してきました。1970年代から開始したELV(End of Life Vehicle:使用済み自動車)の再資源化事業や、1980年代から注力している再生可能エネルギー事業等、これまで取り組んできた「脱炭素社会移行への貢献」につながる事業を、今後もさらに拡大していきます。
産業ライフサイクルを通じた温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下GHG)の削減貢献事業を、全社レベルで加速・推進できるのは豊田通商グループの強みです。全従業員が一丸となり、CN・CE社会の実現に向けて先導役を担うことで、社会課題の解決に貢献していきます。

- ※1自社での燃料の使用等によるGHGの直接排出(石炭・ガス等)
- ※2自社が購入した電気・熱の使用によるGHGの間接排出
- ※3当社グループの Scope 1, 2排出量が対象。GHGプロトコルにて算出
カーボンニュートラル推進会議
当社グループおよび世の中のCN実現に向けた戦略を決定するために、社長を議長とした「カーボンニュートラル推進会議」を月1回開催しています。
同会議では、世界各国のCN実現に向けた政策・提言と当社グループのGHG排出削減施策の連動確認や、5つのワーキンググループ(WG)による成長戦略について議論・決定しています。
議長 | 社長 | |
---|---|---|
事務局 | 担当役員 | 副社長(CTO※1) |
部署 | カーボンニュートラル推進部 | |
会議メンバー | CSO※1 CFO※1 CHRO※1 各営業本部CN担当役員 (経営幹部または執行幹部から選任) 各極CEO※1 各WGリーダー(執行幹部から選任) CSO補佐(経営企画部担当) |
- ※1 CTO:Chief Technology Officer CSO:Chief Strategy Officer
CFO:Chief Financial Officer CHRO:Chief Human Resources Officer
CEO:Chief Executive Officer
カーボンニュートラル推進体制
当社グループでは全社のCN推進を使命としたカーボンニュートラル推進部(CN推進部)を設立し、グループ内外の脱炭素の取り組みをさらに加速させています。CN推進部ではCN宣言達成に向けた制度設計や排出量管理に加え、当社グループが強みを持つCN・CEに結び付く事業領域の成長戦略に基づく5つのWGを組織し、縦軸・横軸で事業の拡大と脱炭素社会実現の両立を目指します。5つのWGについては、「カーボンニュートラルロードマップ」を策定し、その進捗をモニターしています。
ミッション :未来の子供たちへ より良い地球環境を届ける
ビジョン :リーディングサーキュラーエコノミープロバイダー

カーボンニュートラルを推進していくための5つのワーキンググループ(WG)
これらのようなCNにつながる取り組みを力強く推進していくために、特に当社が強みを持つ5つの分野でWGを組成しています。
なお、当社は「エネルギーをつくる」「エネルギーを集める・整える」「モノをつくる」「モノを運ぶ」「モノを使う」「廃棄物処理をする」「再利用する」という産業ライフサイクルの各段階において、サーキュラーエコノミーを支える事業に携わっています。
TCFD提言に基づく情報開示
豊田通商グループは気候変動を重要な経営課題の1つとして認識しており、2019年5月に、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しており、TCFD提言に沿って、責任あるグローバル企業としてステークホルダーとの対話を踏まえ、積極的な情報開示を進めています。
1. ガバナンス
当社グループでは気候変動に関わる事業リスク・機会をマテリアリティの1つとして選定しています。マテリアリティについては、社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会(年1回開催)※1でその取り組み内容を確認し、同委員会の構成メンバーである各営業本部CEOを通じて、事業戦略に反映させています。2020年よりマテリアリティに係るKPIを設定し、同委員会がその進捗を確認、議論内容を取締役会へ報告しています。また取締役は気候変動も含めたESGに関する豊富な経験・能力を有しており、適切な監督が行われる体制を整えています。
気候変動については社長を議長とするカーボンニュートラル(CN)推進会議(毎月開催)※2において脱炭素社会への移行に向けた戦略を議論するとともに、当社が排出する温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下GHG)削減の進捗管理も行っています。同会議の事務局は2022年4月に設置されたCN推進部が務めており、同部は専門組織として脱炭素への取り組みをさらに加速させる役割を担っています。
省エネに関する目標達成状況や気候変動に関する法令改正および新たな要求事項への対応状況については、年に1回、安全・環境会議※3で審議し、その進捗の確認を行っています。その審議内容は、同会議の構成メンバーである各営業本部・グループ会社担当者を通じて、事業活動に反映しています。
なお、当社はGHG排出量削減を促進するために、社内カーボンプライシング制度を導入しています。この制度では、GHG排出量削減への各営業本部の取り組みの進捗状況をその責任者である本部CEOの業績・報酬に反映させています。
※1
サステナビリティ推進委員会 | 気候変動を含むマテリアリティに係る方針、重要事項の決定 |
---|---|
委員長 | 今井 斗志光(社長)
|
担当役員 | 富永 浩史(取締役・CSO※4) |
事務局 | 経営企画部 サステナビリティ推進室 |
※2
カーボンニュートラル推進会議 | CN実現に向けた戦略の決定 |
---|---|
議長 | 今井 斗志光(社長)
|
担当役員 | 唐戸 潤(CTO※5) |
事務局 | CN推進部 |
※3
安全・環境会議 | 気候変動に関する法令対応等の進捗管理 |
---|---|
議長 | 綿貫 辰哉(副社長)
|
担当役員 | 松村 英之(CSKO※6) |
事務局 | 安全・環境推進部 |
- ※4CSO : Chief Strategy Officer
- ※5CTO : Chief Technology Officer
- ※6CSKO : Chief Safety & KAIZEN Officer
2. 戦略
(1)気候関連のリスクと機会
区分 | 想定される影響 | 時間軸※3 | ||
---|---|---|---|---|
リスク | 移行※1 | 政策・規制 | 炭素税等の導入による事業コストの増加 | 中~長期 |
技術 | 低炭素/脱炭素技術の導入に伴う、既存製品/サービスに対する需要の変化 | 中~長期 | ||
市場 | 市場状況の変化に伴う、既存製品/サービスに対する需要の変化 | 中~長期 | ||
評判 | 気候変動対策への遅延や開示劣後によるレピュテーション低下 | 中~長期 | ||
物理的※2 | 急性 | 風水害の頻発化・激甚化による事業被害 | 短~長期 | |
慢性 | 気温上昇および海面上昇による事業への影響 | 長期 | ||
機会 | 資源効率 | 資源循環に対する意識の高まりによる当社リサイクル事業の需要拡大 | 短~長期 | |
エネルギー源 | 再生可能エネルギーへのニーズの高まりによる当社再生可能エネルギー事業の需要拡大 | 短~長期 | ||
製品およびサービス | 脱炭素/低炭素化に貢献する製品/サービスに対する需要拡大 | 短~長期 | ||
市場 | 新興市場の成長および成熟化に伴う事業機会の増加 | 短~長期 |
- ※1移行リスク…カーボンニュートラルへの移行に伴う規制や技術、市場環境などの変化がもたらすリスク
- ※2物理的リスク…自然災害の激甚化や気温・降水変化などがもたらすリスク
- ※3短期:~1年、中期:~3年、長期:4年~
リスク・機会への対応として、Scope 1, 2排出量の削減に加えて、Scope 3排出量の削減と社会のGHG削減貢献にも積極的に取り組んでいます。
(2)シナリオ分析
当社は気候変動の影響が大きい事業を選定し、TCFD提言に沿った形でシナリオ分析を実施しています。
事業への影響については、影響が大きい要素を選定してシナリオ分析をしました。リスクでは移行リスク(政策・規制、技術、市場、評判)および物理的リスク(急性・慢性)を、機会では資源効率、エネルギー源、製品およびサービス、ならびに市場を考慮しました。
また、当社では2030年にGHG排出量を2019年比50%削減することを目指しており、今回のシナリオ分析においても同様に2030年を分析のタイムフレームとしています。
参照シナリオ
気候変動に起因して、当社の事業環境が大きく変化した際に、新たなビジネスの機会および事業レジリエンスを評価し、事業への影響を分析することを目的として、IEA(国際エネルギー機関)およびIPCC(気候変動に関する政府間パネル)等の下記シナリオを参照しています。
区分 | シナリオの概要 | 主な参照シナリオ |
---|---|---|
1.5℃/2℃ 未満シナリオ |
脱炭素社会の実現に向けた政策・規制が実施され、産業革命前からの世界全体の気温上昇幅が1.5℃/2℃未満に抑えられるシナリオ。4℃シナリオと比べ、移行リスクは高いが、物理的リスクは低く抑えられる。 |
|
4℃シナリオ | 新たな政策・規制は導入されず、GHG排出量が継続的に増加するシナリオ。1.5℃/2℃未満シナリオと比べ、移行リスクは低いが、物理的リスクは高くなる。 |
|
対象事業選定
当社グループ事業のうち、気候変動の影響が大きい事業(下記A~Dの観点)を対象事業として選定し、リチウム事業、資源循環事業、再生可能エネルギー事業、自動車販売事業、自動車部品物流事業についてシナリオ分析を行いました。なお、2024年3月期まではアルミ溶湯事業を選定していましたが、GHG排出量、シナリオ分析の対象範囲拡大の観点から、2025年3月期よりアルミ溶湯事業を含む資源循環事業として選定し、分析範囲を拡大しています。また、同様の観点から新たに自動車部品物流事業を選定し、シナリオ分析に追加しました。

当シナリオ分析におけるシナリオ・事業環境認識は、国際的な機関等が提示する主なシナリオを基にしており、当社の中長期の見通しではありません。
(3)各事業におけるシナリオ分析結果
当社は、電動車に不可欠な車載用リチウムイオン電池の原料を供給するため、アルゼンチンのオラロス塩湖で炭酸リチウムの生産を2014年に開始しています。また、日本国内では、福島県双葉郡楢葉町において水酸化リチウムの製造工場を建設し、2022年に生産を開始しました。
気候関連リスク・機会
区分 | 内容 |
---|---|
リスク | 災害・異常気象等によるアルゼンチン炭酸リチウム生産事業における生産量の減少 |
機会 | 自動車の電動化等によるリチウム製品需要の増加 |
各シナリオ下における事業への影響
1.5℃/2℃ 未満シナリオ |
1.5℃/2℃未満シナリオと4℃シナリオを比較すると、1.5℃/2℃未満シナリオの方が電動車や蓄電池需要の大きな増加が見込まれ、当事業全体の機会は拡大すると想定される。 | ![]() |
---|---|---|
4℃シナリオ | 降雨に伴うアルゼンチン炭酸リチウム生産事業における生産効率悪化のリスクについては、2022年実績比較で降雨量に変化が見られず、リチウム生産への影響は軽微と想定される。 | ![]() |
いずれのシナリオにおいてもリチウム電池を使用する電動車や蓄電池の需要増加が見込まれる。
当社の対応策
電動車の本格的な普及に伴うリチウムの需要増加に対し、既存能力の増強により長期安定的な供給体制構築を目指します。また、今後の電池高容量化に伴う水酸化リチウムの需要増加を見込み、事業領域を拡大し、安定供給に向けた体制構築を進めていきます。
当社グループのリサイクルの歴史は古く、1970 年代から約50 年にわたり、サーキュラーエコノミー(CE)を事業として推進してきました。当社グループは、「全てのモノは資源」と考えており、廃棄物を回収し、それを選別、再資源化し、モノづくりを支える「資源循環」を推進しています。
気候関連リスク・機会
区分 | 内容 |
---|---|
リスク | 廃棄物の減少による量の確保 資源価格の変動 |
機会 | リサイクル材の需要増加に伴う市場規模拡大 |
各シナリオ下における事業への影響
1.5℃シナリオ | 1.5℃シナリオでは、リサイクル材の需要増加に伴う市場規模拡大により当事業全体の機会は拡大することが想定される。 | ![]() |
---|---|---|
4℃シナリオ | 4℃シナリオでは、1.5℃シナリオで見込まれる程の市場規模拡大は発生せず、当事業全体への影響は限定的であると想定される。 | ![]() |
当社の対応策
当事業は重点分野である「循環型静脈」の主要事業と位置付けられており、リサイクルバリューチェーンの川上から川下までの機能強化を図り、クローズドループの構築を進めていきます。
当社は、風力、太陽光、水力、地熱、バイオマス等の発電事業をグローバルで展開しており、アフリカ、新興国での開発促進、洋上風力開発等の事業にも注力しています。
気候関連リスク・機会
区分 | 内容 |
---|---|
リスク | 再生可能エネルギー関連政策(固定価格買取・補助金・減税等)の見直しによる事業への影響 |
機会 | 再生可能エネルギー需要の増加 |
各シナリオ下における事業への影響
1.5℃/2℃ 未満シナリオ |
1.5℃/2℃未満シナリオでは、再生可能エネルギー政策の見直しによる固定価格買取制度の廃止等の影響を受ける可能性はあるものの、世界全体での政策の進展や再生可能エネルギーへの需要の大幅な増加に伴い、関連する技術革新の進展と共に、再生可能エネルギーの基幹エネルギー化が見込まれる。そのため、再生可能エネルギーへの需要に対応するための開発を進めていくことで、当事業全体の機会は拡大することが想定される。 | ![]() |
---|---|---|
4℃シナリオ | 4℃シナリオでは、再生可能エネルギーへの需要は、1.5℃/2℃未満シナリオほどの高まりはないものの一定の増加が見込まれる。政策の見直しによる影響を受ける可能性はあるものの、当事業全体への影響は限定的である。 | ![]() |
当社の対応策
当事業は重点分野である「再生可能エネルギー・エネルギーマネジメント」と位置付けられており、既存ビジネスモデルを強化してグローバル展開を加速させるとともに、電源メニューの多様化やエネルギーマネジメント等、事業領域の拡大を図っています。競争力のある再生可能エネルギーの安定供給で、より良い地球環境づくりに貢献します。
当社は、トヨタグループを中心とした自動車・輸送用機器メーカーが国内外で生産する乗用車、バス・トラック等の商用車、産業車輌、補給部品を世界各国へ輸出しています。また、世界150カ国に及ぶグローバルネットワークを通じて、輸入販売総代理店や販売店の事業を展開しています。
気候関連リスク・機会
区分 | 内容 |
---|---|
リスク | ガソリン車と電動車の販売構成比の変化に伴う事業への影響 |
機会 | 電動車需要の増加 |
各シナリオ下における事業への影響
1.5℃/2℃ 未満シナリオ |
1.5℃/2℃未満シナリオでは、燃費規制の強化等に伴い、総販売台数に占めるガソリン車の販売割合は減少するものの、電動車の販売割合が増加することが見込まれ、当事業全体の機会は拡大することが想定される。 | ![]() |
---|---|---|
4℃シナリオ | 4℃シナリオでは、1.5℃/2℃未満シナリオで見込まれる燃費規制の強化等が行われず、ガソリン車および電動車の販売割合への影響は小さいため、当事業全体への影響は限定的である。 | ![]() |
いずれのシナリオにおいても、新興国を中心にグローバルでの新車総販売台数の増加が見込まれるため、当事業全体のリスクは軽微と想定される。
当社の対応策
新車販売市場は新興国を中心に今後も拡大していくことが想定されていることから、当社は全世界での販売体制を強化していきます。また、電動車ラインアップの拡充に併せて、その基幹部品である電池素材の資源確保や電池の3R(リビルト・リユース・リサイクル)事業領域を開拓し、電動車の普及を促進します。
当社グループは世界中に現地法人および事業体を展開し、各拠点・物流網を駆使し、最適な部品の一貫物流体制を整えることにより、グローバル規模での自動車部品サプライチェーンを構築しています。
2025 年3月期より、GHG 排出量、シナリオ分析の対象範囲拡大の観点から新たに自動車部品物流事業を選定、分析しました。
気候関連リスク・機会
区分 | 内容 |
---|---|
リスク | 自動車の電動化に伴い自動車構成部品の変化による事業への影響 |
機会 | 自動車の電動化に伴い新技術が用いられた高単価な自動車部品の需要増加 |
各シナリオ下における事業への影響
1.5℃シナリオ | 1.5℃シナリオでは、電動化に伴って自動車構成部品が変化していく中で、高単価な電池等の部品・製品取扱量の増加が見込まれる。また、グローバルでの自動車生産台数の継続的増加に伴い、当事業全体の機会は拡大することが想定される。 | ![]() |
---|---|---|
4℃シナリオ | 4℃シナリオでは、1.5℃シナリオほど電動化が進まず、当事業全体への影響は限定的であると見込まれるが、グローバルでの自動車生産台数の継続的増加に伴い、当事業全体の機会は維持・拡大することが想定される。 | ![]() |
当社の対応策
グローバルでの自動車生産台数の増加に伴い、自動車部品市場は今後も拡大することが予想されます。当社グループは電動化における新たな部品パートナーとの連携強化・グリーンな物流を推進し、自動車部品サプライチェーンの持続的な成長に貢献していきます。
3. リスク管理
当社は、気候変動を含む環境のリスク・機会を、高い基準で管理しています。気候変動に関わる事業リスク・機会は、CN推進会議、安全・環境会議とサステナビリティ推進委員会で審議され、その構成メンバーが事業戦略策定や活動に取り入れています。特に、CN推進会議は社長を議長として毎月開催、外部環境を踏まえた気候変動のリスク・機会の識別や当社への影響の評価、また気候変動に関連する事業の進捗を確認しています。
統合リスク管理委員会では、グローバルなリスクマネジメント状況を検証するために、最も注力すべき10のリスク項目を定義、その一つとして、環境を掲げ、全社的なリスク管理プロセスの中でも気候変動リスクを管理しています。
さらに、そのリスク管理プロセスをモニタリングするために、当社は環境マネジメントシステムに関する国際規格であるISO14001を取得しており、3年に1度国内外の連結子会社を対象に本社による環境内部監査を実施しています。
投融資案件
投融資委員会には副社長・CSO・CFO※1が、投融資協議会にはCSO補佐・CFO補佐が、また、投資戦略会議には社長・副社長・CSO・CFO・経営企画部長がメンバーとして参加することで、投資案件がESGに与える影響を確認しています。投融資委員会または投融資協議会に上げられた一定要件以上の案件は、CNに関する事前評価を必須としており、投資に伴って増加するScope 1、Scope 2の排出量の把握とその削減方法、また、その投資によるScope 3の削減効果、社会のGHG 削減に貢献する効果について確認をしています。
- ※1CFO:Chief Financial Officer
4. 指標と目標
GHG排出削減目標と今後の取り組み
社会のCNへの貢献と同様に、自社が排出するGHGのCNは不可欠です。当社はパリ協定を支持し、脱炭素社会移行に貢献するための具体的な方針として、GHG排出量(Scope 1,2)を、2030年までに2019年比で50%削減し、2050年にCNとする目標を策定しています。
当社グループは徹底的な省エネ・再エネ推進(LED化、太陽光発電設備の設置等)を実施しています。また、生産プロセスや物流においても燃料転換・消費効率化・技術革新によるGHG排出量削減を進めることで、この目標の実現を目指します。
産業ライフサイクルを通じてGHG削減に貢献する事業を、全社レベルで加速・推進できるのは当社グループの強みです。当社グループの全従業員が一丸となり、全力で取り組んでいくことで、社会課題の解決に貢献していきます。
削減目標 |
対象 : 単体、国内海外連結子会社(Scope 1、Scope 2)
|
---|
Scope1,2の排出削減実績
2023年と基準年(2019年)の排出量の実績を比較すると、ペットボトルリサイクル工場や電動車向けにも使用されるリチウム工場の新設を含む事業拡大に伴い排出量は増加した一方、増加量を上回る62千t-CO2の削減を実現しました。

- ※2当社グループのScope1,2排出量が対象。GHGプロトコルにて算出
- ※3Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:二酸化炭素を回収・貯留し有効活用する技術
脱炭素設備投資助成制度/社内カーボンプライシング制度
GHG排出量削減のための投資に関わる減価償却、金利等の負担を全社負担として助成する仕組み(脱炭素設備投資助成制度)や、GHG排出量の増減に応じて各本部の業績を加減算する仕組み(社内カーボンプライシング制度・単価 ¥30,000/t-CO2)を取り入れ、削減促進の好循環を実現しています。

グリーンボンド
当社はグリーンボンド発行およびグリーンローン調達のために、「グリーンファイナンスフレームワーク」を策定しています。これは国際資本市場協会(ICMA)が定めるグリーンボンド原則2021、およびローンマーケット協会(LMA)、アジア太平洋地域ローンマーケット協会(APLMA)およびローンシンジケーション・トレーディング協会(LSTA)が定めるグリーンローン原則2021に基づいています。
GHG排出量削減への取り組み
脱炭素商社としての成長戦略
Scope3の削減活動と削減貢献事業は当社の得意領域
当社グループは、資源循環、物流/製造の効率化、低炭素エネルギーの供給等の当社が長年培ってきた強みを活かし、自動車を 中 心としたサプライチェーン(SC)全 体 のCO2排出量(Scope3)削減に注力します。
さらに本活動を幅広く展開し、世の中の排出削減に寄与することで引き続き成長していきます。

- ※1Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:二酸化炭素を回収・貯留し有効活用する技術
- ※2円の数は5つのワーキンググループ(WG)・新規のScope3排出削減活動、削減貢献に係る事業数、大きさは事業規模をイメージ
Scope3削減の主な取り組み
当社グループは、以下のような「豊田通商ならでは」の取り組みによってScope3の排出量を削減するとともに、これらの取り組みをお客さまに提供することで世の中の排出削減に貢献し、新たなビジネス機会を創造しています。

2023年における排出・削減量実績
Scope3排出量実績
当社グループの2023年におけるScope3排出量実績は合計約124百万t-CO2で、特徴は以下の通りです。
- 排出の大きい金属資源や化石燃料の取り扱いが少なく、また火力発電等のCO2多排出事業も多く保有していません。※4
- 自動車 SCを中心にさまざまな取り組みを行っており、購入した製品・サービス(カテゴリー 1)と販売した製品の使用
(カテゴリー 11)による排出が大半を占めています。
排出量の多いカテゴリー 1,11については、Scope3削減の主要な取り組みを自動車 SC 全体に展開し、排出量を削減していきます。
- ※42025年3月期を目途に石炭・重油発電事業から完全撤退、火力発電事業も早期撤退予定
カテゴリー | 排出量(千t-CO2) |
---|---|
1 購入した製品・サービス | 77,588 |
2 資本財 | 596 |
3 燃料・エネルギー関連 | 137 |
4 輸送・配送(上流) | 3,460 |
5 事業から出る廃棄物 | 19 |
6 出張 | 9 |
7 雇用者の通勤 | 29 |
8 リース資産(上流) | 0 |
9 輸送・配送(下流) | 4,695 |
10 販売した製品の加工 | 143 |
11 販売した製品の使用 | 34,245 |
12 販売した製品の廃棄 | 18 |
13 リース資産(下流) | 23 |
14 フランチャイズ | 6 |
15 投資 | 3,160 |
合 計 | 124,128 |
削減貢献量実績
当社グループではScope3の削減と削減貢献事業を成長機会と捉え、さまざまな削減活動に取り組んでいます。一層の取り組み加速を図るため、削減活動を定量化し削減貢献量として開示しています。当社グループでは、多様な削減活動を、自社が製造・提供する製品・サービスによって削減する“直接貢献※5”と、他社製品に当社が間接的に寄与、削減する“間接貢献※5”に分類しています。この分類の下、2023 年の削減貢献量実績は、直接貢献約8百万t-CO2、間接貢献約31百万t-CO2でした。

- ※5直接貢献:
当社が排出削減効果のある最終製品・サービスを生み出している、または、当社が担う製造工程で排出削減を行っているもの
(その他:削減貢献量は未算定な一方、世の中のGHG排出量削減に寄与する他取り組みも多数主導(例 非鉄金属スクラップ回収/加工、省エネデータセンター運営))
間接貢献:
当社が排出削減効果のある最終製品・サービスの製造工程の一部を担う、または、排出削減効果のある最終製品・サービスを販売するもの - ※6経済産業省『温室効果ガス削減貢献量 定量化ガイドライン』5.5削減貢献量の累積方法を参照
- ※7FL: フォークリフト
- ※8LCA:製品のライフサイクル全体における環境負荷を定量的に評価する手法
<計算方法>
削減貢献量の算出にあたり、経済産業省や日本LCA学会、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)等のガイドラインを参照していますが、現時点で統一された算定ルールがないため、今後、国際的な議論や世の中の動向を踏まえ、算定方法や開示内容の見直しを随時行っていく方針です。
(“既存の製品・サービス・製造工程の排出量” - “新たな製品・サービス・製造工程の排出量”) × 普及量
<計算例>
再生アルミ:当社が供給する再生アルミを、仮に新地金で供給した場合の排出量との差で削減貢献量を算出
電動車: (ICE車のLCA排出量※9 - 電動車のLCA排出量※9) × 当社がSCで関与する電動車の販売台数
- ※9ICE車(内燃機関車)、電動車のLCA排出量は IEA「Global EV Outlook 2024」参照
法令対応
豊田通商はパリ協定に賛同し、気候変動の緩和に資する法規制や政策である 「省エネ法」 「温対法」等を全面的に支持し、年1回行政に対してエネルギー使用量、省エネルギー目標の達成状況、温室効果ガス排出量についての報告書を提出しています。
尚、省エネ法における事業者クラス分け評価制度では省エネが優良な事業者とされる「Sクラス」の評価を受けております。この様な取り組みを通じて、当社は温室効果ガス削減の目標達成に向けた役割を果たしています。
気候災害リスクを想定したBCP(気候変動ヘの適応)
気候変動の影響に対応し、被害の防止または軽減を目標として気候変動への適応策を講じています。豪雨や猛暑などの気象災害リスクは高まっており、これらリスクを想定したBCP(事業継続計画)を策定・管理・運用することが重要と認識し、グループ全体で取り組んでいます。
<事例「タイ国の洪水発生時に代替拠点で事業継続」>
豊田通商では、気候変動の物理的リスクにより、重要な経営資源が使用不能になることを想定してBCPを策定し、様々な対策を講じています。
2011年にタイ国北部・中部を襲った大洪水では、バンコク市内や7つの工業団地に被害が及び、日系企業約450社が被災しました。2年後の2013年10月にも再び大規模な洪水が起きた時には、タイ国最大規模のアマタナコーン工業団地が浸水するなど再び甚大な被害が発生しましたが、いずれも豊田通商グループの運送会社で同地域に拠点を持つ「TTK Asia Transport (Thailand) Co., LTDでは、予めBCPで決めていた代替拠点に人員、所有トラックを全て移動させ、事業を中断することなく継続させることができました。
投資戦略
豊田通商は、脱炭素社会の実現に向けて、2030年までの間に2兆円規模の投資を実施します。強化する事業として、「エネルギーをつくる」「エネルギーを集める・整える」「モノをつくる」「モノを運ぶ」「モノを使う」「廃棄物処理をする」「再利用する」という産業ライフサイクルの各段階において、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を支える5つの注力分野を設定しました。
国内の全事業所における使用電力の実質100%再エネ化を実現
当社では国内全ての事業所(11都道府県18カ所)で使用する2022年度の使用電力を、トラッキング付き非化石証書を活用することでCO2フリーとし、実質100%の再エネ化を実現しました。
社内外連携
当社グループは、社内外のステークホルダーに対して、CNに関する情報を積極的に開示し、脱炭素商社ブランドの浸透を図り、企業価値の向上を目指しています。CN推進の風土を社内で醸成する目的でインナーコミュニケーションを活性化させています。また、社内表彰等の制度を拡充することで削減取り組みに対する動機付けを行っています。社外との連携については、「CN 商品・サービスカタログ」を活用し、イベントや展示会への出展等を行っています。
社内浸透

社内CN座談会
当社従業員のCN意識向上を目的に、対面での座談会を開催しました。営業本部および海外拠点において、約200名の従業員を対象に、CNに関する基礎知識の共有と、CN事業の拡大に向けたディスカッションを行いました。今後もコミュニケーションを継続し、従業員のCNに関する意識向上に対する取り組みをさらに加速していきます。

豊通CNアプリ
全社員がCNについての理解を深めるとともに、営業活動においても役立つツールとして「豊通CNアプリ」を開発しました。
CNに関する教育コンテンツや、社員同士の交流を促す機能等を通じて、CNの重要性を楽しく学べる環境を提供しています。このアプリを活用することで、社員のCN意識を高め、CN推進に向けた社内の機運を高めていきます。
社内表彰
1年を通じて会社への貢献度が高かった組織や社員を表彰する制度である「Be the Right ONEアワード」に、CNの実現に向けてモデルとなるような取り組みを表彰するCN賞を2024年度より追加しました。本制度にCN賞を追加することで、表彰された組織や事業体がけん引役となり、他の組織や事業体でのCNの取り組みの推進を図ります。


社外連携

CN商品・サービスカタログ
当社グループが有するCN関連ソリューションをScope 1, 2, 3のそれぞれにひも付く形で当社ウェブサイトに掲載しています。当社グループがこれまでに蓄積してきた各種ソリューションを通じて、お客さまのGHG排出量削減をお手伝いすることで、脱炭素社会移行へ貢献していきます。

GHG排出量の算定・可視化サービスを提供する㈱ゼロボードとの連携強化
当社グループでは、GHG排出量の算定・可視化サービス「zeroboard」を提供するゼロボードとの連携を強化しています。自社での「zeroboard」活用に加え、ゼロボードと共に自動車業界を中心とした国内外のお客さまやサプライヤーに対して、GHG排出量の可視化とカーボンフットプリントへの対応を進め、再生可能エネルギー事業やリサイクル事業等GHG排出削減ソリューションを提供することで、バリューチェーン全体でのCN実現にワンストップで貢献していきます。
外部との協働
日本貿易会
日本貿易会はパリ協定を支持しており、脱炭素社会構築に向けた政府、経団連の取り組み(『地球温暖化対策計画』『カーボンニュートラル行動計画』)に賛同し、他業界・他団体とも連携しながら、取り組みを推進しています。日本貿易会でも独自に『環境自主行動計画』を策定し、脱炭素社会構築に向けた商社業界の課題として取り組んでいます。
当社は 気候変動緩和策・適応策の検討・実施を重要課題と捉え、新たなビジネス、ソリューションの創出に積極的に努めると共に、日本貿易会の主旨に賛同し、当会の副会長会社の1社として参加しています。2023年度は日本貿易会の各種委員会の一つである地球環境委員会の委員長として、この『環境自主行動計画』に中心的な役割で携わっており、パリ協定の長期目標である2050年カーボンニュートラルの達成に向けた活動に貢献しています。
一例として エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)の特定荷主制度において、特定荷主企業は輸送会社と連携し省エネを進めることを求められていますが、現行法が求める指標・目標がその実現を困難としており省エネの進捗を遅らせているとして、貿易会が設定した特定荷主制度対象の会員企業と政府当局(経済産業省・資源エネルギー庁)との意見交換会の場を通じて問題提起しました。そのことが契機となり 経済産業省・資源エネルギー庁 荷主判断基準ワーキンググループに 貿易会を通じた当社のオブザーバー参加が実現しました。
また、2021年より同ワーキンググループの「荷主省エネの課題と検討の方向性」に関する業界ヒアリングにおいて、当社 安全・環境推進部の室長と担当者が貿易会を通じてオブザーバー参加して上述の問題提起を行い、省エネ法改正にあたり 輸送業者との省エネ活動が推進しやすい環境づくりを目指した働きかけや提言を継続しています。
<国内の事業活動における2030年の削減目標(商社業界)>
日本貿易会は2030年の電力使用原単位(会社全体における床面積あたりの電力使用量)を2013年度比で15.7%削減することを掲げています。これは、省エネ法で求められている努力目標(中長期的にみて年平均1%以上を低減させること)を参考にしており、さらに努力を継続することにより達成可能と考えられる最大限の目標として、年率1%減を前提に掲げたものです。
当社も日本貿易会の一員として、また、同会地球環境委員会 会長会社としてこの活動の一翼を担っており、省エネ活動の推進を図り、脱炭素社会の構築に向けた取組みを実施しています。
電池サプライチェーン協議会(Battery Association for Supply Chain; BASC)
一般社団法人電池サプライチェーン協議会は2021年4月に脱炭素社会実現に向けて電池のサプライチェーンを持続可能な形で発展させることで、世界の電池産業に貢献していくために設立された団体です。
豊田通商グループでは豊田通商をはじめとして、豊通リチウム、豊通マテリアル、豊通テックも同団体へ参加しています。豊田通商 執行幹部の片山(金属本部COO)は同団体の副会長を務めており、また豊田通商は幹事企業10社の中の1社として、団体を代表して、政策に対する働きかけを行っています。
水素協議会
水素は利用時にCO2を排出せず、またバイオマスや再生可能エネルギーを使って製造することができ、且つ貯蔵も可能なことから、低炭素社会の実現に向けた有力な選択肢になると認識しています。当社は、エネルギー移行に資する水素について統一した長期的なビジョンを持つ大手エネルギー、輸送機器産業の企業によるグローバルなイニシアチブである「水素協議会」にSupporting Memberとして、2017年から加盟しています。脱炭素に向けて水素を活用しようとする企業が多く加盟するグローバルな協議会の一員になることで、脱炭素という大きな目標を持つ企業と広く情報・意見交換し、また世界の水素関連情報の収集することで、当社の水素事業の推進に繋げるとともに水素社会実現に貢献することを目的としています。
現在、当社は水素社会実現の原単位モデルづくりのため、港湾、公共交通・物流等の分野にて、水素製造・供給からFC(燃料電池)モビリティ導入までの利活用モデルの構築やFC外販 及び FC搭載機器メーカーの開発支援などに取り組んでいます。刻々と変わるマーケット動向や規制強化が進む状況下、当社が貢献できるこれら分野を含め各国における水素利活用拡大と水素社会実現が確実に進展するために水素協議会が取り組むべきこととして、水素・FCを使用する動機付けになるようなユーザーへのインセンティヴやメカニズムの創出、GHG算出方法など水素に対する国際的な統一基準作り等を、毎年行われる当協議会の重点活動計画策定の場において提案しています。
水素バリューチェーン推進協議会
我が国では水素に関する研究開発や実証実験などに長期にわたって官民で取り組んできましたが、社会実装に向けたインフラ整備は不十分であり、供給コストも既存燃料対比で高く市場は未成熟です。
水素バリューチェーン推進協議会はサプライチェーン全体を俯瞰し、業界横断的かつオープンな組織として社会実装プロジェクトの実現を通じ、早期に水素社会を構築することを目的としています。
当社は当協議会設立当初の2020年12月より参加しており、「事業化・規制ワーキンググループ」に所属し「水素の需要創出、規制緩和等の政策提言」に向けて積極的に協働しています。2022年11月の同協議会会員セミナー開催の際には、「水素エネルギーにおける国内外の取組み」について発表し、カーボンニュートラルの実現に向け、協議会を通じて水素の社会受容性を高める為の普及活動に貢献しています。
内航船の廃食油回収・バイオ燃料活用の連絡協議会
当社は、日本内航海運組合総連合会、一般社団法人日本旅客船協会、全国油脂事業協同組合連合会及び鉄道・運輸機構(JRTT)が「廃食油回収の促進とバイオ燃料活用の拡大による内航分野におけるカーボンニュートラルの推進」を目的として発足した「内航船の廃食油回収・バイオ燃料活用の連絡協議会」に協力者として参画しました。
2021年10月に改訂された政府の地球温暖化対策計画では、2030年度の内航海運におけるCO2排出量を2013年度比で17%減らすとの削減目標の見直しが行われたことから、既存船における省エネ・省CO2の取り組みの一つとしてバイオ燃料の活用可能性が注目されていますが、内航船からの廃食油については、現在はほとんど廃棄されているのが現状です。
当社は、オブザーバーとして参加している国土交通省海事局や協力者として参加している株式会社ダイセキ環境ソリューションとこの連絡協議会を通じて内航船の実態調査を実施し、廃食油回収の事業者ガイドラインの策定等の取り組みを進めてまいります。
炭素会計アドバイザー協会
当社は株式会社ウェイストボックス、中部電力ミライズ株式会社、日本生命保険相互会社、MS&ADインシュアランスグループのあいおいニッセイ同和損害保険株式会社の4社と気候変動財務情報の正しい考え方の普及を目的とした「一般社団法人 炭素会計アドバイザー協会」を2022年7月1日に設立し、同協会へ理事1名を派遣しています。
炭素会計アドバイザー協会は、現在共通言語化されていない「いかに測るか」に焦点を当て、測定基準のスタンダードとなることを視野に、民間資格としての「炭素会計アドバイザー資格制度」を新設しました。この「炭素会計アドバイザー資格3級」は環境省認定制度「脱炭素アドバイザー ベーシック」に認定されています。
炭素会計アドバイザー資格制度の普及が、企業の気候変動対応につながるため、当社は同協会での活動を通じて、当社のみならず、社会全体のカーボンニュートラル実現に寄与してまいります。
経済産業省 GXリーグ

当社は2022年に経済産業省が策定した「GXリーグ基本構想」に賛同表明し、2023年4月に「GXリーグ」に参画しました。
GXリーグは2050年カーボンニュートラル実現と社会変革見据えて、GX(グリーントランスフォーメーション)への挑戦を行い、現在および未来社会における持続的な成長実現を目指す企業が同様の取組を行う企業群を官・学と共に協働する場です。
当社は「未来の子供たちにより良い地球環境を残す」ため、GXリーグの取組みに積極的に関与し、社会全体のカーボンニュートラルに実現に向けて取り組んでいきます。
環境パートナーシップCLUB(EPOC)
豊田通商は、中部地方の産・官・学が一体となって組織された環境パートナーシップCLUB(EPOC)のメンバーとして様々な取組みに参加しています。
EPOCは、環境行動の社会への浸透・風土づくりや環境行動に関する情報発信および国際交流活動を推進するもので、当社はEPOCを通じて中部圏から環境対応に関する情報発信を行い、世界に誇れる環境先進地の形成とともに安全かつ快適な循環型経済社会の構築を目指しています。
COOL CHOICE
豊田通商は、省エネ・脱炭素型の製品への買換・サービスの利用・ライフスタイルの選択など、地球温暖化対策に資する「賢い選択」をしていこうという環境省が推奨する取り組みに賛同しています。また、新たな服装ガイドライン「~Be yourself~」を策定し、豊田通商で働くすべての方々を対象に、自主的に服装を判断し、着用する年間クールビズ・ウォームビズにも対応しました。
CDP

CDPは、2000年にロンドンで設立された国際NGOで、企業に対して気候変動への戦略や具体的な温室効果ガスの排出量に関する公表を求めるプロジェクトです。
運用資産総額130兆米ドルに達する機関投資家を代表して、企業に気候変動、水セキュリティ、フォレストの3分野の質問状を送付、その回答を分析し、評価結果を公表しています。
スコアは、A、A-、B、B-、C、C-、D、D-の8段階で格付けされます。豊田通商では2017年より、気候変動、水セキュリティ、フォレストの質問状への回答を開始しました。
2024年度 CDP評価結果
気候変動 | 水 | フォレスト |
---|---|---|
A | A | A |
CDP(気候変動)
上記の通り、2024年に実施されたCDPの質問書に対する回答の結果、気候変動では、「A」の評価を受けました。
ISO 50001
当社は2020年にISO50001:2018(エネルギーマネジメントシステム)を取得しました。対象範囲は、省エネ法に基づく特定事業者の届出の対象である国内事業所(11都道府県18カ所)および福利厚生施設。拠点ごとにエネルギー管理標準を作成し、その実施状況を省エネ監査で定期確認することで、省エネ活動の推進に努めています。
加盟団体のレビュー 参画している業界団体、イニシアチブの方針が、当社の方針と乖離していないかを定期的に確認し、乖離があると認められる場合は、建設的な対話を通して当団体のスタンス見直しなどを働きかけていきます。 |
パフォーマンスデータ
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|---|
Scope1 | 128,005 | 123,634 | 122,121 | 131,732 | 133,105 |
Scope2 (マーケット基準) |
64,257 | 58,537 | 56,872 | 43,314 | 50,536 |
Scope2 (ロケーション基準) |
66,392 | 59,403 | 58,304 | 62,395 | 70,822 |
Scope1+2 (マーケット基準) |
192,262 | 182,171 | 178,993 | 175,046 | 183,641 |
Scope1+2 (ロケーション基準) |
194,397 | 183,037 | 180,425 | 194,127 | 203,927 |
<電力のCO2排出係数:マーケット基準>
(2022年〜)環境省・経済産業省公表《電気事業者別排出係数》の調整後排出係数
(~2021年)当該年度に公表された《電気事業者別排出係数》の基礎排出係数
<電力のCO2排出係数:ロケーション基準>
IEA CO2 Emission Factorの国別排出係数を使用し算出
<電力以外のCO2排出係数>
環境省・経済産業省公表《温室効果ガス算定・報告マニュアル》Ver.4.7
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|---|
Scope1 | 353,524 | 276,152 | 350,146 | 340,088 | 311,174 |
Scope2 (マーケット基準) |
251,801 | 245,295 | 235,659 | 245,676 | 240,973 |
Scope2 (ロケーション基準) |
255,297 | 245,295 | 235,694 | 237,945 | 234,681 |
Scope1+2 (マーケット基準) |
605,325 | 521,447 | 585,805 | 585,764 | 552,147 |
Scope1+2 (ロケーション基準) |
608,820 | 521,447 | 585,840 | 578,033 | 545,855 |
換算係数出典
ロケーション基準:IEA Emission Factor
マーケット基準:
2021年以前:IEA Emission Factor
2022年以降:マーケット係数を採用している拠点はマーケット係数、それ以外はIEA Emission Factorsの国別排出係数にて算出。但し当該リストにない国については当該リストの”world”の排出係数を使用し算出
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|---|
CO2 | 481,527 | 399,786 | 472,843 | 471,720 | 444,279 |
CH4/N2O/ HFCs/PFCs/ SF6/NF3 他 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
合計 | 481,527 | 399,786 | 472,843 | 471,720 | 444,279 |
尚、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度を踏まえ、年間3,000t-CO2e/ガス種/拠点 を超える排出を対象としています
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|
カテゴリー1(購入した製品・サービス) | 71,292,740 | 77,588,158 | ||
カテゴリー2(資本財)※ | 117,711 | 132,184 | 475,206 | 596,373 |
カテゴリー3(エネルギー関連活動) | 17,505 | 17,854 | 125,321 | 137,091 |
カテゴリー4(輸送・配送(上流)) | 17,167 | 20,093 | 4,771,390 | 3,460,372 |
カテゴリー5(事業から出る廃棄物)※ | 4,395 | 7,864 | 18,043 | 19,043 |
カテゴリー6(従業員の出張)※ | 1,727 | 1,714 | 8,478 | 8,703 |
カテゴリー7(雇用者の通勤)※ | 4,218 | 4,212 | 30,256 | 29,323 |
カテゴリー8(リース資産(上流)) | 0 | 0 | ||
カテゴリー9(輸送、配送(下流)) | 3,007,356 | 4,695,306 | ||
カテゴリー10(販売した製品の加工) | N/A | 142,640 | ||
カテゴリー11(販売した製品の使用) | 31,083,460 | 34,244,849 | ||
カテゴリー12(販売した製品の廃棄) | 17,931 | 18,060 | ||
カテゴリー13(リース資産(下流)) | 38,089 | 22,553 | ||
カテゴリー14(フランチャイズ) | 0 | 5,772 | ||
カテゴリー15(投資) | 3,315,383 | 3,160,207 |
(2021年以前は豊田通商(本社・支店・営業所・出張所)および国内連結子会社を対象として、カテゴリー2~8のみ算定)
- ※サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する 基本ガイドライン(環境省・経済産業省)を参照し算定
2022年 | 2023年 | |
バイオマス燃料使用量(ton) | 228,960 | 228,723 |
バイオマス燃料使用量(kL) | 78 | 2,241 |
2022年 | 2023年 | |
バイオマス燃料使用によるCO₂排出量(t-CO2) | 275,015 | 269,562 |
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
燃料の消費(原材料を除く) | 1,630,527 | 2,080,177 | 2,787,957 | 2,763,162 |
購入または獲得した電力の消費 | 643,898 | 605,252 | 676,649 | 670,259 |
購入または獲得した熱の消費 | 5,588 | 4,223 | 7,850 | 6,012 |
購入または獲得した蒸気の消費 | 4,267 | 5,122 | 4,987 | 4,911 |
購入または獲得した冷熱の消費 | 1,506 | 1,438 | 2,022 | 2,437 |
自家生成非燃料再生可能エネルギーの消費 | 30,027 | 27,521 | 0 | 0 |
合計エネルギー消費量 | 2,315,814 | 2,723,733 | 3,479,466 | 3,446,781 |
エネルギー使用量 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|---|---|
非再生可能エネルギー使用量 | 2,285,787 | 2,694,971 | 2,702,936 | 2,661,880 |
再生可能エネルギー使用量 | 30,027 | 28,763 | 776,529 | 784,901 |
第三者認証
上記のパフォーマンスデータの一部はLRQAリミテッドによる第三者認証を受けています。