環境ビジネス
豊田通商グループ再生可能エネルギー事業
3,000MWを超える豊田通商グループの再生可能エネルギー事業
国際社会の共通目標としてサステナブル(持続可能)な社会の実現を目指すSDGs。豊田通商は、電力事業分野において、地球環境課題の解決に貢献する事業として、風力発電・太陽光発電・バイオマス発電・水力発電などの各種再生可能エネルギー発電を中心にグローバルに事業を展開し、電力安定化やコストダウンに取り組んでいます。
時代に先駆けて再生可能エネルギー事業に進出した当社グループは、1987年に米国で風力発電事業を開始。その過程で得たノウハウを活用し、英国、イタリア、スペインなど欧州圏や、アジア・日本、アフリカへと展開し、風力発電は当社グループの再生可能エネルギー事業で最も規模が大きいエネルギー源となっています。2019年10月にはエジプトで初となる風力発電IPP(IndependentPower Producer)事業が商業運転を開始しています。また、国内では、1999年に北海道でウインドファームを建設して以降事業を推進し、 日本の風力発電事業者として国内1位の規模へと成長しています。現在、2022年完工予定の事業として、北海道に発電施設と国内蓄電池を使用する送電網を構築しています。発電した電気を安定的に送電できないという課題を、蓄電池を使うことによって解決する豊田通商グループの新たな取り組みです。
風力以外の再生可能エネルギー事業も広がっています。例えば、グループ初となる風力発電事業を手掛けた(株)ユーラスエナジーホールディングスは2008年に韓国にて太陽光発電事業をスタート。2011年には米国カリフォルニア州に米国最大級の太陽光発電所を建設し、2017年には化石燃料資源が乏しく、エネルギー資源を輸入し続けてきたハワイ州オアフ島でも、同州最大級となる発電所の操業を開始しました。
国内では2013年に太陽光発電事業をスタート。北海道、東北、近畿地方で大規模太陽光発電所(メガソーラー)プロジェクトを推進してきました。当社グループ会社の(株)エネ・ビジョンは2015年に木質バイオマス発電の営業開始。同社が手掛ける発電は森林の保全や整備の際に出る間伐材などを利用するため発電時にかかる環境負荷が小さいのが特徴です。また、バイオマス発電は風力や太陽光発電などと比べて天候に左右されにくく、安定的に電気を作り出すことができます。さらに2018年には、国内の中小水力発電事業を手掛ける東京電力グループの東京発電(株)に出資。エネルギー源の多様化を通じて、30年以上前に5,000KWの風力発電からスタートした当社グループの再生可能エネルギーの発電量は、現在までに600倍以上に成長しています。
30年以上の歴史と豊田通商グループの強みを生かした事業戦略
豊田通商グループの再生可能エネルギー事業は30年以上の歴史があり、京都議定書の採択から10年以上もさかのぼる1986年がその始まりです。(株)トーメンの電力事業(現在は当社グループの(株)ユーラスエナジーホールディングス(持ち株比率60%))が手掛けた米国カリフォルニア州の風力発電事業の参画以降、他社に先駆けて地球環境の課題解決に取り組み、日本を含む世界各国で各種再生可能エネルギーの普及に努めてきました。
サステナブルな環境づくりに貢献するために、当社グループはグローバルな成長領域を見極めて、自身の強みを最大限に生かすことができる事業を推進しています。例えば、当社グループがプレゼンスNo.1を目指しているアフリカ地域においては、環境問題が喫緊の課題でありながらも、各国の経済成長に伴いエネルギーの需要が高まっています。このニーズに応えるべく、当社グループは同地域において、風力発電事業やミニグリッド事業などの環境に配慮した再生可能エネルギー事業を展開しています。その背景には、国内外の風力発電事業をリードしてきた強みと、他地域における多様な事業経験を通じて蓄積した発電事業の開発や運用ノウハウがあります。
2030年以降を見据えた再生可能エネルギー分野の将来像
豊田通商グループの再生可能エネルギー戦略は、2つの軸を持って進んできました。1つ目の軸は、グローバル展開です。グローバルネットワークを生かし米州、欧州、アジア・日本でシェアを拡大している再生可能エネルギー事業は、今後当社グループが強みを持つアフリカ諸国や新興国への展開を加速させていきます。
すでにアフリカではエジプトで風力発電所のIPP事業を開始し、2019年にはケニアの無電化地域にて太陽光発電システムと蓄電池を組み合わせたミニグリッド(電力インフラが乏しい地域などに構築する分散型電源)事業を展開する米国ベンチャー企業のPowerhive Inc.に出資しています。サブサハラ地域で電力供給がない生活をしている人たちに、豊かな暮らしと経済発展の実現を支援しています。
2つ目の軸は、事業領域の拡大です。引き続きエネルギー源の拡充に取り組む他、V2G(Vehicle to Grid)やVPP(Virtual Power Plant)、クリーン電力の小売といった新たな事業領域にも積極的に挑戦します。
V2Gは、エコカーなどの車載バッテリーとスマートグリッド(電力の需給を把握・制御する次世代送電網)をつなぐ新たな仕組みのことです。再生可能エネルギーは日射量や風量など自然条件によって発電出力が変動しますが、バッテリーを蓄電池として機能させ、余剰分を蓄積したり不足分を供給することで、電力の受給を調整するインフラとして活用することができます。
VPPは仮想発電所とも呼ばれ、V2Gの仕組みや、全国に点在している企業、家庭、工場などの発電設備と蓄電池を束ね、効率よく、無駄なく再生可能エネルギーを利用できる環境を構築します。その取り組みの一つとして、2019年には大手住宅メーカーと提携し、FIT(固定価格買取制度)の契約が終了した家庭で発電した余剰電力の買取サービスを開始しました。
V2GとVPPは、新時代の電力インフラの一つとして定着し、市場やビジネスモデルも確立されていくでしょう。そのような未来を見据えて、当社グループは2017年に欧米でV2G事業を展開するNuvve Corporationに出資。翌年にはV2G制御システムの実証試験も行ってきました。
この他にも、当社グループは、再生可能エネルギー分野において、地球環境課題の解決に向けさまざまな事業に取り組んでいます。2020年には、国内全ての事業所で使用する電力の全量を、実質的に再生可能エネルギー電力にしました。具体的には、再生可能エネルギー発電由来のJ-クレジットを活用し、11都道府県18カ所の事業所の使用電力をCO2フリーにすることにより、実質100%の再エネ化を実現しました。
また、2020年にトヨタ自動車(株)と中部電力(株)と共に、国内の再生可能エネルギー電源の取得・運営会社であるトヨタグリーンエナジーを設立。将来的にはトヨタグループにクリーンな電気を供給し、生産工場などから排出されるCO2をゼロにすることを目指しています。
その他環境事業
リチウム生産で次世代環境車の電池原料安定供給に貢献
気候変動対策としてのCO2削減をモビリティの視点から見ると、電動化が進んだ次世代環境車の普及が大きな鍵を握っています。それに応じてリチウムイオン電池の生産が世界的に拡大していますが、豊田通商ではその川上領域において、希少資源であるリチウムの安定供給に取り組んでいます。
豊田通商は、次世代環境車の本格的な普及に先駆けて、2014年から車載用リチウムイオン電池の原料である炭酸リチウムの本格生産を開始しました。生産拠点であるアルゼンチンのオラロス塩湖は湖水のリチウム含有量が多く、リチウム不足を背景として当社がグローバル規模で取り組んだ鉱量調査の結果としてたどり着いた湖でした。世界各国の企業が塩湖の採掘権の獲得を目指す中、権益を所有する豪州資源会社Orocobre Limitedは当社の販路やバリューチェーン機能を評価。豊田通商は2012年に本プロジェクトの権益の25%相当を取得し、現在はオラロス塩湖産リチウムの100%販売代理権を持つパートナーとなっています。
2018年国内初の水酸化リチウム製造専門会社として豊通リチウム(株)を設立。同社はリチウムイオン電池の原料となる水酸化リチウムの製造・販売を目的とし、福島県の楢葉町に製造工場を建設中で、2022年の生産開始を目指しています。このようなアライアンス強化とリチウム資源の安定供給を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していきます
電動化の先を見据えた一手を打つ
一方で、電動車の普及は、今までになかった社会課題をもたらします。次世代環境車の廃車プロセスでは、大量生産された使用済みの車載電池をどう処理するのか、この課題解決がまだ確立されていないからです。
豊田通商グループは1970年代にELV(使用済み自動車)の適正処理事業をスタートしました。この分野の取り組みは、タイやインドをはじめとしてグローバルで加速しており、また鉄、非鉄、貴金属、樹脂などへと事業領域も拡大しています。この仕組みを次世代環境車のライフサイクルにも適用し、ガソリン車時代にはなかった再資源化ニーズに応えていくことが豊田通商の新たなチャレンジです。
グループ内ではすでにHV用の使用済みニッケル水素電池や、リチウムイオン電池の回収と適正処理を開始。さらには、電池利活用マーケットの拡大などBattery to Batteryの再資源化事業などにも注力。車載用電池の総合的なリサイクルとサステナブルな自動車産業のプロセス構築に貢献することで、次世代環境車の動脈事業(電池原料の生産、新素材・新技術への取り組みなど)を静脈事業(自動車資源の適正処理や再利用など)につなぎ、再び動脈につなぐというリバースサプライチェーンの構築に取り組んでいきます。
こうした仕組みによって、次世代環境車の普及を支えていくことが豊田通商の使命と考えています。
石油由来に比べ、CO2削減効果のある素材
素材の分野では、豊田通商とグループ会社の豊通ケミプラス(株)が南米最大の化学メーカーであるBraskem製の「バイオポリエチレン」を取り扱っています。
バイオポリエチレンは植物由来のポリエチレンで、Braskemが2011年1月に世界で初めて商業生産を開始しました。開発段階から協業してきた当社が正式パートナーとしてアジア・オセアニアで幅広く販売しています。
バイオポリエチレンは、サトウキビ由来のバイオエタノールが原料です。ブラジルでは、もともとバイオエタノールは主にガソリン代替として燃料用途で使用されています。サトウキビ畑は、アマゾン熱帯雨林とは約2,000km以上離れた地域で主に栽培されています。
また、CO2を吸収する植物が原料であるためバイオポリエチレン製品を燃やしたとしてもCO2は排出されますが、カーボンニュートラルの考え方の下、石油由来のポリエチレンと比較し約70%のCO2削減効果が見込まれます。
バイオポリエチレンは、すでにシャンプーボトル、スーパーマーケットやコンビニのレジ袋、買い物かご、市町村指定のゴミ袋、ペットボトル飲料のキャップや食品の容器などで使用されています。
モノづくりを支える循環型静脈事業戦略
自動車やレアメタルを含む電子機器においてリサイクル機運が高まるなど、限りある天然資源は極力使わず、破棄されている製品や原材料などを新たな資源と捉え、再利用して次の製品をつくる循環型経済が広がっています。
当社では、自動車ビジネスにおける生産に関わる事業を「動脈事業」、生産後に出てくるスクラップ・廃棄物・廃車などに関する事業を「静脈事業」と呼びます。重点分野として取り組んでいます「循環型静脈事業戦略」では、従来「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」として捉え、再び循環させる仕組み、エコシステムを静脈事業として推進し、モビリティから派生するもの(車両・部品)にとどまらず、プラスチックなどの生活資材や廃棄物まで幅広く取り組みます。
当社は、1998年からリサイクルで再生したアルミ二次合金地金を、よりCO₂削減効果のある溶湯状態でお客様へ供給しており、世界トップクラスの取扱量です。エネルギーを大量消費し製錬したアルミ新地金に比べ、再生アルミの溶湯供給は、一般的に約98%のCO₂削減効果が見込まれます。アルミ需要が増える中、低級アルミ屑の価値や利用率を向上させる技術開発、エネルギー効率を高めるスマートファクトリー化を推進しています。
また、「リサイクル」に貢献するため日本国内での樹脂再生事業にも取り組んでいます。日本最大級の再生プラスチック製造会社である「(株)プラニック」を2018年12月に設立、2021年に稼働を予定しています。現在有効活用されていない自動車や家電などから出る使用済プラスチックを原料に、日本初の高度比重選別技術を活用することで、高品質な再生プラスチックを製造します。その他にも2020年7月には廃ペットボトルの再資源化事業を行う新会社「豊通ペットリサイクルシステムズ(株)」を設立しました。