環境ビジネス
豊田通商グループ再生可能エネルギー事業
6GWを超える豊田通商グループの再生可能エネルギー事業
国際社会の共通目標としてサステナブル(持続可能)な社会の実現を目指すSDGs。豊田通商は、電力事業分野において、地球環境課題の解決に貢献する事業として、風力発電・太陽光発電・バイオマス発電・水力発電などの各種再生可能エネルギー発電を中心にグローバルに事業を展開し、2025年3月現在、全世界17カ国に6GWを超える再生可能エネルギー発電容量を保有。国内の風力・太陽光事業者としてはトップの発電容量を誇るまでに成長を遂げています。
また、発電事業に加えて、蓄電池事業・エネルギーマネジメント事業の取り組みも強化し、再生可能エネルギーの普及・拡大に取り組んでいます。

30年以上におよぶ豊田通商グループの再生可能エネルギー事業の歴史

当社グループの再生可能エネルギー事業は、1987年米国カリフォルニア州の「Mojave風力発電所」で開始しました。これは、当時の(株)トーメンの電力事業部門(現ユーラスエナジーホールディングス)が手掛けたもので、5MWからのスタートでした。以降、欧州ではイギリス(1993年)、アジアでは韓国(2005年)、中南米ではウルグアイ(2015年)、アフリカではエジプト(2019年)で風力発電事業を開始し、世界各国にその事業を拡大しています。
特に当社が強みを持つアフリカでは、同地域で最大となる654MWの発電容量を誇るスエズ湾風力発電所Ⅱが2025年8月にエジプトで運転を開始。既に運転開始をしているスエズ湾風力発電所Ⅰと合わせて合計916MWの規模となり、同地域の再生可能エネルギー電源の拡大および経済発展に貢献しています。
国内においても、京都議定書の締結(1997年)を背景に、日本の豊富な風資源から、風力発電の導入が期待されている中、1999年に北海道苫前町で国内初の大規模風力発電事業を開始しました。その後も、全国の好風況エリアで風力発電所を稼働させ、国内No.1規模の風力発電事業者へと成長を遂げました。
また、ユーラスエナジーの特徴的な取り組みの一例としては、北海道北部(道北)地域での発電、蓄電、送電事業が挙げられます。
道北地域は、風力発電の適地であるものの、送電網が脆弱であることから風力発電の導入と拡大に課題がありました。ユーラスエナジーは、その課題を克服する目的で送電事業のための新会社として「北海道北部風力送電(株)」を設立。国の支援を受け、約78kmに及ぶ大規模な送電網を、世界最大級となる240MW/720MWhの蓄電池と併せて整備。これによって、ユーラスエナジーが保有する450MWの発電所を含む合計500MW以上の風力発電所の連系が可能となり、道北地域の豊かな風資源の最大限活用につながりました。
また、当社グループは太陽光発電事業も積極的に展開しており、ユーラスエナジーによる韓国での事業開始(2008年)を皮切りに、世界各国で事業を推進。2023年に当社が子会社化したテラスエナジー(旧:SBエナジー)の太陽光発電事業も含めて、1GWを超える発電所を保有しています。
2025年4月には、ユーラスエナジーとテラスエナジーを統合し、再生可能エネルギー事業の更なる拡大・強化に努めています。
2030年以降を見据えた再生可能エネルギー分野の将来像
豊田通商グループは発電事業の更なる拡大に加え、今後再生可能エネルギーを安定的にお客様にお届けするために、エネルギーマネジメント事業や蓄電池事業への取り組みも開始しています。
具体的な取り組みとして、エネルギーマネジメント事業「ReEra(リエラ)」が挙げられます。ReEraは、再生可能エネルギーや蓄電池を統合制御するシステムです。AIを活用した需給予測を活用して全国に分散する再生可能エネルギーを「集め」、蓄電池の充放電を最適制御し「整える」ことで、お客様や市場のニーズに合わせた再生可能エネルギーを「届け」ます。再生可能エネルギーによって作られた電力をお客様に一気通貫で届けるバリューチェーンを拡大・強化し、再生可能エネルギーの効率的な利用と更なる導入促進に貢献していきます。
豊田通商グループは、これまで培った再生可能エネルギーのノウハウを活かしながら、持続可能なエネルギー社会の実現と地球環境課題の解決に継続して取り組んで参ります。
その他環境事業
リチウム生産で次世代環境車の電池原料安定供給に貢献

気候変動対策としてのCO2削減をモビリティの視点から見ると、電動化が進んだ次世代環境車の普及が大きな鍵を握っています。それに応じてリチウムイオン電池の生産が世界的に拡大していますが、豊田通商ではその川上領域において、希少資源であるリチウムの安定供給に取り組んでいます。
豊田通商は、次世代環境車の本格的な普及に先駆けて、2014年から車載用リチウムイオン電池の原料である炭酸リチウムの本格生産を開始しました。生産拠点であるアルゼンチンのオラロス塩湖は湖水のリチウム含有量が多く、リチウム不足を背景として当社がグローバル規模で取り組んだ鉱量調査の結果としてたどり着いた湖でした。世界各国の企業が塩湖の採掘権の獲得を目指す中、権益を所有する豪州資源会社Orocobre Limitedは当社の販路やバリューチェーン機能を評価。豊田通商は2012年に本プロジェクトの権益の25%相当を取得し、現在はオラロス塩湖産リチウムの100%販売代理権を持つパートナーとなっています。
2018年国内初の水酸化リチウム製造専門会社として豊通リチウム(株)を設立。同社はリチウムイオン電池の原料となる水酸化リチウムの製造・販売を目的とし、福島県の楢葉町に製造工場を建設し、2022年から生産を開始しております。このようなアライアンス強化とリチウム資源の安定供給を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していきます
電動化の先を見据えた一手を打つ

一方で、電動車の普及は、今までになかった社会課題をもたらします。次世代環境車の廃車プロセスでは、大量生産された使用済みの車載電池をどう処理するのか、この課題解決がまだ確立されていないからです。
豊田通商グループは1970年代にELV(使用済み自動車)の適正処理事業をスタートしました。この分野の取り組みは、タイやインドをはじめとしてグローバルで加速しており、また鉄、非鉄、貴金属、樹脂などへと事業領域も拡大しています。この仕組みを次世代環境車のライフサイクルにも適用し、再資源化ニーズに応えていくことが豊田通商の新たなチャレンジです。
グループ内ではすでにHV用の使用済みニッケル水素電池や、リチウムイオン電池の回収と適正処理を開始。さらには、電池利活用マーケットの拡大などBattery to Batteryの再資源化事業などにも注力。車載用電池の総合的なリサイクルとサステナブルな自動車産業のプロセス構築に貢献することで、次世代環境車の動脈事業(電池原料の生産、新素材・新技術への取り組みなど)を静脈事業(自動車資源の適正処理や再利用など)につなぎ、再び動脈につなぐというリバースサプライチェーンの構築に取り組んでいきます。
こうした仕組みによって、次世代環境車の普及を支えていくことが豊田通商の使命と考えています。
石油由来に比べ、CO2削減効果のある素材


素材の分野では、豊田通商とグループ会社の豊通ケミプラス(株)が南米最大の化学メーカーであるBraskem製の「バイオポリエチレン」を取り扱っています。
バイオポリエチレンは植物由来のポリエチレンで、Braskemが2011年1月に世界で初めて商業生産を開始しました。開発段階から協業してきた当社が正式パートナーとしてアジア・オセアニアで幅広く販売しています。
バイオポリエチレンは、サトウキビ由来のバイオエタノールが原料です。ブラジルでは、もともとバイオエタノールは主にガソリン代替として燃料用途で使用されています。サトウキビ畑は、アマゾン熱帯雨林とは約2,000km以上離れた地域で主に栽培されています。
また、CO2を吸収する植物が原料であるためバイオポリエチレン製品を燃やしたとしてもCO2は排出されますが、カーボンニュートラルの考え方の下、石油由来のポリエチレンと比較し約70%のCO2削減効果が見込まれます。
バイオポリエチレンは、すでにシャンプーボトル、スーパーマーケットやコンビニのレジ袋、買い物かご、市町村指定のゴミ袋、ペットボトル飲料のキャップや食品の容器などで使用されています。
モノづくりを支える循環型静脈事業戦略


自動車やレアメタルを含む電子機器においてリサイクル機運が高まるなど、限りある天然資源は極力使わず、破棄されている製品や原材料などを新たな資源と捉え、再利用して次の製品をつくる循環型経済が広がっています。
当社では、自動車ビジネスにおける生産に関わる事業を「動脈事業」、生産後に出てくるスクラップ・廃棄物・廃車などに関する事業を「静脈事業」と呼びます。重点分野として取り組んでいます「循環型静脈事業戦略」では、従来「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」として捉え、再び循環させる仕組み、エコシステムを静脈事業として推進し、モビリティから派生するもの(車両・部品)にとどまらず、プラスチックなどの生活資材や廃棄物まで幅広く取り組みます。
当社は、1998年からリサイクルで再生したアルミ二次合金地金を、よりCO₂削減効果のある溶湯状態でお客様へ供給しており、世界トップクラスの取扱量です。エネルギーを大量消費し製錬したアルミ新地金に比べ、再生アルミの溶湯供給は、一般的に約98%のCO₂削減効果が見込まれます。アルミ需要が増える中、低級アルミ屑の価値や利用率を向上させる技術開発、エネルギー効率を高めるスマートファクトリー化を推進しています。
また、「リサイクル」に貢献するため日本国内での樹脂再生事業にも取り組んでいます。日本最大級の再生プラスチック製造会社である「(株)プラニック」を2018年に設立、2022年に稼働を開始しました。現在有効活用されていない自動車や家電などから出る使用済プラスチックを原料に、日本初の高度比重選別技術を活用することで、高品質な再生プラスチックを製造します。また、2020年には廃ペットボトルの再資源化事業を行う新会社「豊通ペットリサイクルシステムズ(株)」を設立、2022年に稼働を開始しました。さらに、2023年にはアルミサッシスクラップの破砕選別加工事業を行う新会社「豊通ソーテック(株)」を設立、2025年の事業開始を予定しております。