人権尊重

豊田通商グループ人権方針

本方針は、豊田通商株式会社の取締役会において、2022年3月29日に報告されています。

基本方針

豊田通商グループは、企業理念において「人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業を目指す」ことを掲げ、事業活動を通じ、社会課題の解決に取り組んでいます。

その中で、私たちがGlobal Visionの「ありたい姿」‐パートナー・ステークホルダーにとって代替不可能・唯一無二の存在「Be the Right ONE」‐となるため、事業を展開する国・地域の人権課題を理解し、適切な行動をとっていくことが極めて重要な責任であると認識しており、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)の一つとして『人権を尊重し、人を育て、活かし、「社会に貢献する人づくり」に積極的に取り組む』ことを掲げています。

なお、本方針は豊田通商グループにおける、人権に関する最上位の方針として位置づけます。

  1. 1国際規範や法令に対する考え方

    私たちが世界中でビジネスを展開するに際し、国際基準に則った人権尊重はその基盤になるものと考え、国連「世界人権宣言」を含む国際人権章典、「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権を尊重します。

    また、私たちが定める行動指針に、良き企業市民として「人間を尊重し、活性化された働きがいのある職場づくりに努める」ことを掲げ、グローバル行動倫理規範(COCE)においては人権尊重を明示し、人権への配慮を重視しています。

    特に、性別、年齢、国籍、人種、肌の色、民族、宗教、性的指向、障がいの有無、政治的見解等に基づくあらゆる差別を行わないこと、強制労働、児童労働、不当な低賃金労働の防止を定め、不適切な雇用の撲滅や各国労働法令を遵守した最低賃金を上回る賃金の支払いを行うこと、企業活動の中で関わる関係者全員のプライバシーや表現の自由を保護することに努めます。

  2. 2適用範囲

    本方針は、私たち全ての役職員に適用します。また、サプライヤーを含む全てのビジネスパートナーの皆様においても、本方針を理解し、遵守いただくことを期待します。

  3. 3人権デューデリジェンス

    私たちは、人権デューデリジェンスの仕組みを通じて、私たちの事業における人権への負の影響を特定し、その防止、または軽減を図るよう努めます。

  4. 4是正・救済

    私たちの事業活動が、人権に対する負の影響を引き起こした、または関与したことが明らかになった場合、適切な手続き・対話を通じてその是正・救済に取り組みます。

  5. 5苦情処理メカニズム

    私たちは、全ての役職員および私たちの事業と関係する人権課題を適宜把握し、対応していくため、通報や苦情処理の仕組みの構築に努めます。

  6. 6教育

    私たちは、本方針が役職員に浸透するよう、役職員に適切な教育と研修を行います。また、本方針が事業活動全体に定着するよう、ガイドラインやその他必要な手続きの中に反映します。

  7. 7進捗確認と情報開示

    私たちは、人権尊重に向けた取り組み及びその進捗状況を継続的に確認し、ウェブサイト等を通じて、適宜開示していきます。

  8. 8ステークホルダーとの対話・協議

    私たちは、人権に対する負の影響について、人権に関する専門知識を有する第三者機関に相談するとともに、関係するステークホルダーの皆様との対話・協議を行うよう努めます。

2020年1月策定
2022年3月改訂

代表取締役社長
貸谷 伊知郎

個別方針
子どもの権利
私たちは未来を担う子どもの人権には配慮が必要と考え、国際機関が掲げる児童の権利に関する条約内容に賛同し、「子どもの権利とビジネス原則」を支持します。
先住民の権利
私たちは先住民が生活する国・地域での事業活動において、先住民が保有する固有の文化・歴史を認識し、当該国・地域の法令や、「先住民の権利に関する国際連合宣言」等の国際規範に定められた先住民の権利への配慮を行います。
警備会社起用の考え方
私たちは、警備における武器の使用においては人権侵害の潜在的なリスクが伴うことを認識しています。事業活動に伴う警備組織等の起用に関しては、事業活動を行う国・地域の法令や国際規範、および関連する国際的な取り決めを支持し、人権尊重に努めます。
現代奴隷への対応
私たちは事業活動において強制労働および人身売買等の現代奴隷が発生しないための取り組みに努めます。

COCEにおける人権尊重

豊田通商では行動指針をより具体化したグローバル行動倫理規範(Global Code of Conduct & Ethics:COCE)の第9条で人権尊重について言及しています。社長メッセージと「COCEブックレット」各言語版(23言語)を我々のイントラネットに掲載することで、世界中の全従業員が閲覧できるようにしています。COCEグローバルネットワークを通じて 世界中の豊田通商グループの役職員一人一人から世界共通の行動倫理規範(COCE)の誓約書を取得することで、人権尊重の周知徹底を図っています。

「グローバル行動倫理規範」ブックレット

グローバル行動倫理規範(COCE)10カ条について、より具体的な行動の指針を示したブックレットを掲示しています。

体制

当社および当社グループは、人権主管部署(人事部)を管掌する、CHRO(Chief Human Resources Officer)の責任の下、人事部が人権方針及びグローバル行動倫理規範(COCE)に基づいて人権に関わる日常的な取り組みを行っています。また、サステナビリティ推進委員会で実績や進捗の報告を行い、今後の取り組み予定を協議しています。サステナビリティ推進委員会での審議事項は定期的に取締役会に付議・報告されており、取締役会による監督が適切に図られる体制となっています。

ESG(環境・社会・ガバナンス)の3つの観点から、長期的な視野を持って持続可能な社会の実現に向けた取り組みを強化するため、各営業本部及び海外極にサステナビリティ担当者を設置し、人権の尊重を含むサステナビリティ関連の取組みを推進しています。また、当該取り組みはCheck10活動(連結ベースでリスクの評価・分析・改善を行う活動)に統合し、連結子会社のCheck10担当による取り組みの推進を今期より開始しています。Check10活動は「統合リスク管理委員会(委員長:CFO)」が管理しており、適宜、取締役会に報告されています。

人権デューデリジェンス

豊田通商では、社会的重要性の高まりを受け、2022/3に人権方針と行動指針を改定し、その方針に基づき人権に関するリスク評価を行いました。リスクが高い分野を特定した上で、アンケートや現地実査を実施するなど、リスク軽減に向けた人権デューデリジェンスを実施しています。

人権デューデリジェンスのプロセス

連結子会社を対象とした取り組み

事業活動を通じて社会に影響を与える人権リスクへ対応するため、2022年3月期より全連結子会社を対象に人権デューデリジェンスの取り組みを開始しています。

2022年3月期は社内外専門家の意見を踏まえ、世界各国に存在する全連結子会社において事業特性(業種)、所在拠点(国)、取り扱う商材の3 点から人権リスクの分析を行い、当社として優先的にリスクの確認が必要と思われる93社を特定しましたが、2023年3期より連結ベースでリスクの評価・分析・改善を行うCheck10活動に統合し、年に一回全連結子会社を対象に人権リスクアセスメントを実施する体制を整えるとともに、グローバルなリスクマネジメント状況を検証する全社会議体「統合リスク管理委員会」で結果報告を行い、全社としてモニタリングする仕組みに進化させました。

人権リスクアセスメントは、社内外専門家の意見を踏まえ、事業特有の課題などから「強制労働」「児童労働」「差別」「結社の自由・団体交渉権」の4つの人権課題を中心に、労働安全衛生、賃金、労働時間等の人権リスクの管理状況を評価するための質問票を通じて実施しました。

本プロセスを通じ、直ちに顕在化が懸念される人権課題は特定されなかったものの、人権リスク低減に向けた取り組みは今後も継続・強化していきます。(2022年3月期は、人権調査の結果に基づき、さらなる調査が必要と思われる2社に対して第三者機関立ち会いによるインタビューを通じ、実態調査を行った結果、顕在化が懸念される人権課題は特定されませんでした。)
人権に対する負の影響を引き起こした、または関与したことが明らかになった場合、適切な手続き・対話を通じてその是正・救済に取り組みます。

なお、本プロセスの状況および評価結果についてはサステナビリティ推進委員会で報告しています。

また、既存事業に対する人権リスクアセスメントだけでなく、新たに合併・買収・譲受けにより連結子会社になる場合、投資審査のプロセスに、人権対応に対する事前評価を組み込みました。
さらに国内の連結子会社に対して、2022年3月期より毎年一回、外国人技能実習生に関する調査を実施し、受入れ状況や監理団体の把握を行っています。加えて、2023年5月より、一般社団法人JP-MIRAIが提供する「責任ある外国人労働者の受入れ企業協働プログラム」に参加し、情報収集や専門家との意見交換等を行っています。

サプライチェーンを対象とした取り組み

サプライチェーン上の人権リスクに対しては、2024年3月期よりサプライチェーン向け人権デューデリジェンスを進めています。国際的指標・ツール等を活用して、連結子会社を対象とした取り組みと同様に、事業特性(業種)、所在拠点(国)、取り扱う商材の3点から人権リスクの分析を行い、リスクが高いと判断されたサプライヤーへは質問票を通じた調査および必要に応じた実地監査等を行っていきます。これらの取り組みを通じて、人権への負の影響を特定し、その防止・軽減を図るよう努めていきます。

相談窓口

当社は主に5つの窓口で人権・労務問題に関する相談・通報を受け付けています。

窓口 範囲
will do. 豊田通商及び国内連結子会社社員
SPEAK UP 豊田通商及び国内外連結子会社社員
ハラスメント相談窓口 豊田通商社員
JaCERの苦情通報フォーム サプライチェーン上のあらゆるステークホルダー
HPのお問い合わせ窓口 取引先、サプライヤー、地域住民、豊田通商及び国内外連結子会社社員など全ステークホルダー

上記窓口に寄せられた相談・通報に加え、上司やコーポレート部門への相談・通報は、人事部が速やかに関係者へのコンタクト・ヒアリングを行い、その結果、賞罰規程に抵触する場合は、当該規程に基づき処分の検討を行います。
また、人権リスク低減のため、社員の人権・労務への意識を高めるための研修を実施するなど、防止策を講じています。

2023年3月期は、人権・労働環境に関して、窓口等を通じて17 件の相談・通報(内訳は下記の通り)があり、17件すべて関係者にコンタクト・ヒアリングを行い、調査を実施しました。結果、1件はハラスメントと認定し、賞罰規程に則り、懲罰を実施しました。対策として、該当部署の管理者に対し、内部通報規程の内容を説明し、その重要性を再度周知しました。今後も相談・通報には適切な対応を実施して参ります。

人権・労務関連の相談・通報内容内訳

2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期
ハラスメント 10 5 12
職場環境 3 5 5
・内部通報窓口(will do./SPEAK UP)

2002年に国内向けに設置したwill do.に加えて、2017年11月に、多言語(150言語以上)対応窓口SPEAK UPを外部専門機関に設置し、グローバル化ならびに匿名性・秘匿性を向上することで、あらゆる形態の腐敗行為、人権侵害などを含むCOCE違反に関する相談や通報がしやすい内部通報体制を整備しています。

・ハラスメント相談窓口

職場でセクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメント、差別的発言など人権に関わる問題が万が一起きた場合には、「ハラスメント相談窓口」に通報・相談できます。相談窓口では、匿名性・秘匿性を確保し、通報者が報復を受けないように、調査の必要性の有無を判断した上で実際の調査を行い、必要に応じて結果を相談者に通知しています。

・HPのお問い合わせ窓口

当社ではホームページ上に、一般の方及び豊田通商のステークホルダーの方からの人権に関するお問い合わせを頂けるように窓口を設置しております。

関連リンク

研修・啓発活動

豊田通商では社員の人権意識を向上させるために、人事部を中心に、研修や啓発活動に取り組んでいます。
毎年10月の企業倫理月間に合わせたコンプライアンスイベントを通じて、単体および国内連結子会社に対し、人権に関する世の中の潮流や当社グループ人権方針を学ぶe-learningを実施したほか、グローバルに事業展開を行う連結子会社の人権責任者を対象とした勉強会を開催しました。

また、人権に関する知識向上のため、国際情勢や法制化の最新動向、企業への期待値変化を理解するため、外部有識者との情報交換を定期的に行っています。2022年には、人権問題に精通した国際弁護士をお招きし、CHRO・社内関連部部長との意見交換を行いました。2023年には、人権に対して先進的な活動を行う企業を訪問し、その取り組みをヒアリングしました。

さらに、適切な労務管理の意識向上を目指すべく、管理職の実務研修として、部下からハラスメントの相談があった場合の対応等、具体的な事例をもとに傾向と対策を学ぶ「ハラスメント研修」を導入し、豊田通商社員だけでなく関連会社社員にも実施し、人権に関わる啓発活動を行っています。

公正な採用

採用にあたっては、性別・年齢・国籍の違いや障がいの有無などではなく、業務上の能力、適性などが豊田通商の求める人財像に合致しているかどうかという点を、公正に判断しています。また採用担当者・採用協力者には研修を実施し、必要に応じ関係当局、弁護士に確認することで、差別や偏見のない採用に努めています。

児童労働・強制労働など人権侵害撲滅に向けた取り組み

私たちは、グローバル行動規範(COCE)の中で、児童労働、人身売買、その他あらゆる種類の強制的な労働に関与しないことを宣言しております。具体的な取組みとして、例えば採用の際にはIDによる年齢確認を必須とすることで、児童労働の防止に努めています。

一方、上記を含むあらゆる形態の腐敗行為や人権侵害の事象が発生した場合は、匿名性・秘匿性が確保され、多言語(150言語以上)対応可能な外部相談窓口を設置し、関係者からの情報提供に基づき、適切な対応ができる体制を整えております。

関連リンク

同一労働同一賃金

「人権方針」「サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」を全世界に展開し、各社がそれに従って現地の法律に準拠した報酬体系を設定することを推進しています。国内では、「人事集いの会」を設け、国内関連会社の人事担当者向けに、法に則り同一労働同一賃金を行うようアナウンスしています。豊田通商では法定最低賃金を順守し、同一資格、同一職務レベルにおいてジェンダー間で統一された報酬体系を適用しています。