多様性の促進
方針
当社は、絶えず事業環境が変化し顧客ニーズが多様化する中、性別や年齢、国籍などさまざまな違いを尊重して受け入れ、「違い」を積極的に生かすことが、豊田通商グループ全体の優位性を高めることにつながると確信し、経営戦略としてダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進、多様な社員一人ひとりが「強い個」として豊かな個性を発揮し、互いに影響し合い共に進化しながら「強い組織」を構築していくことを目指しています。これまでの業務内容の違いによる職種区分を見直し、社員全員が多様なキャリアパスを選択できる人事制度を導入しています。また、2020年には厚生労働省から子育てサポート企業として「プラチナくるみん」の認定を受けています。有給休暇や男性育児休業の取得推進などワークとライフの充実、フレックスや在宅勤務などの制度の整備、働く習慣を見直す現場施策「いきワク活動」など、柔軟で生産性の高い組織へシフトすべく「働き方改革」にも取り組み、多様な社員がいきいきと働ける環境整備・企業風土の醸成、個人の意識向上を進めています。
これらに加え、各営業本部CEOが毎年のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの取り組み目標を定め、役員会議や取締役会において進捗や実績を報告、人財育成を評価に反映する仕組みも導入しています。
豊田通商グループのDiversity, Equity & Inclusion
1.定義
さまざまな違いを尊重して受け入れ、「違い」を積極的に生かすことにより、変化し続けるビジネス環境や多様化する顧客ニーズに最も効果的に対応し、豊田通商グループ全体の優位性をつくり上げることを目的としています。
Diversity(多様性)
国籍、人種、年齢、性別などの属性やその他の要素(性格や価値観など)の異なる人財が存在する状態。
Equity(公平性)
異なる事情に応じた公正な機会を提供すること。
Inclusion(受容)
「違い」に関わらず、全員が組織に平等に参加し、その能力を最大限に発揮できるようにすること。
2.Diversity, Equity & Inclusion 4つのテーマ
当社はこれまで、加商(株)、(株)トーメンとの合併や、グループ会社、CFAOをはじめとするさまざまなパートナーとの協業により、事業を拡大してきました。その領域はグローバルかつ多分野にわたり、世界で約6.4万名のグループ社員が働いています。今後さらに多様化・複雑化する事業環境や顧客ニーズに柔軟に対応し、持続的な成長を目指す上で、多様な文化・風土や価値観を尊重し、その違いを生かしてさまざまなアイデアとシナジーを生み出していくことはますます重要になっています。これを受け、当社は現在、4つのテーマを重点に取り組みを進めています。
- 1多様な人財の活躍の場と機会の拡大
- 2働き方の見直しとワークライフバランス両立支援
- 3多様性を生かし価値を創出する会社風土の醸成
- 4個人の意識改革
豊田通商は南アフリカ共和国で事業を展開しており、同国では、黒人経済力強化政策(B-BBEE※)の一環として、外国企業に対し南ア黒人資本企業とのパートナーシップ強化が求められています。
- ※B-BBEE:Broad-Based Black Economic Empowermentの略称。黒人の経済的地位向上に向けた企業や諸団体などのB-BBEE促進への取り組みや貢献度についてスコア化し、レベル1~8及び不順守に格付。
多様な人財の活躍の場と機会の拡大
豊田通商では、多様な人財が活躍できる場・機会の拡大に向けて、日本においては女性活躍に重点を置いた取り組みを進めています。そして海外においても、事業を行う地域・国の持続可能な発展への貢献を最大化するというISO26000の考え方に賛同し、現地雇用や現地調達を通じた人財育成や地域社会・経済の活性化を通じ、地域社会との共存共栄に努めています。
1. 女性活躍推進
2014年、経営トップによる「D&I宣言」の下、女性活躍を最優先テーマの一つとし、①人事施策、②人財育成、③環境整備、④風土醸成の4つの軸で女性活躍を推し進める取り組みを実施しています。
女性活躍推進法に基づく行動計画
当社は、行動計画を策定し、同計画の達成に向けて継続的に取り組むことで、女性をはじめ全社員一人一人が多様なワークライフバランスを実現しながら、その能力を最大限に発揮し、互いに影響し合いチームとして進化できる職場環境づくりを推進していきます。
- 行動期間: 2022年4月1日~2026年3月31日迄
- 目標
- 1女性管理職比率を 10%まで高めることを目指す柔軟な働き方や両立支援制度の拡充、自律的なキャリア形成の支援、DE&Iな風土の醸成を通じて、女性の活躍を支援する取り組みを加速していきます。
- 2男性の育児休業及び育児の為の休暇制度の利⽤率 100%を目指すジェンダーロールに捉われない多様な働き方を実現できる環境の整備に注力していきます。
女性管理職比率
女性管理職比率8.4% (2024年4月現在)
【女性リーダーの育成、活躍を促す取り組み】
女性の次世代リーダー候補者層の育成・拡大を目的に、2015年より女性社員を対象としたウィメンズメンタリングプログラム(WMP)を継続的に実施。社内の他本部の部長や社外の女性管理職経験者がメンターとなり、キャリア意識の啓発、視野の拡大、課題解決の支援を行っています。
また次世代の女性リーダーに続く人材のさらなる充実を図るため、採用も強化しています。
キャリア支援の取り組み
社員のライフステージの変化とキャリアの考え方を尊重し、以下のような様々な制度を導入しています。
休職及び退職後意欲的に自己研鑚した多くの社員が、当制度にて再び当社で活躍しています。
「配偶者海外転勤帯同による休職制度」
一定の要件の元、配偶者の海外転勤に伴い、退職せずに休職により配偶者に帯同できる制度です。社員のキャリア形成の支援や経験を積んだ人財の定着を目的としています。
2023年4月現在、通算休職取得実績(累積):19名
「キャリアブリッジ制度」
一定の要件の下、結婚や配偶者の転勤に伴う移住居の変更により退職せざるを得ない社員のキャリア継続支援や、当社経験があり、意欲的に自己研鑚しキャリアアップに取り組む優秀な社員の確保を目的とした再雇用制度です。
2023年4月現在、通算復職実績(累積):32名
女性活躍推進に関する社外評価
当社の女性活躍推進の継続的な取り組みが評価され、2016年「えるぼし(認定段階2)」認定、2020年「プラチナくるみん」認定、2021年「準なでしこ2022」に選定されました。
●プラチナくるみん
当社は2007年より、次世代育成支援対策推進法に基づき策定・届出した行動計画を達成し、継続して「くるみん」認定を受け続け、また2020年3月、より高い水準で両立支援を行っている企業として、厚生労働省より「プラチナくるみん」の認定を受けました。
●えるぼし
当社は2016年7月、女性活躍推進法に基づき、一定の基準を満たし、女性活躍推進に関する状況などが優良な企業として、厚生労働省より「えるぼし(認定段階2)の認定を受けました。
●なでしこ銘柄
なでしこ銘柄は経済産業省と東京証券取引所が共同で、全上場企業を対象に業種ごとに女性活躍推進に優れた企業を選定しています。当社は2022年3月「準なでしこ2022」に選定されました。
2. グローバル人財の育成・登用
当社は、ビジョン 実現に向けてのサステナビリティ重要課題の一つとして、“人権を尊重し、人を育て、活かし、「社会に貢献する人づくり」”を掲げ、グローバルで活躍できる人材育成に取り組んでいます。
特に、事業戦略上、極めて重要なポストの後継者候補については、業務アサインメントを通じた短~中期の育成計画をグローバル人事委員会で毎年議論しています。
先期より海外現地法人所属社員2名を本社部長に登用するなど、組織のグローバル化、多様な人材の活躍を目指して取り組んでいます。
また、国内外人財を対象とした選抜研修の歴年受講者に対し、グローバルネットワーク拡大と、「当社らしさ」の継承を支援するためのウェビナーを新たに開催しました。
3. 地域社会における雇用の創出
①トヨタケニアアカデミー
豊田通商は、2014年にケニアのナイロビ市内に「トヨタケニアアカデミー」を設立しました。当アカデミーは、現地コミュニティに開かれた職業訓練・社会人教育の場です。
自動車整備に関する技能研修のほか、建機、農機などの技術研修、リーダーシップ講習など多様なプログラムを、日本政府や内外機関からの協力も得ながら提供。これまでの修了生は若年層や女性も含む7000人以上にのぼります。
UNHCRやUN WOMENなどの国連組織とも連携し、ケニア国内に滞在する近隣国からの難民向けに、自立促進のための技能トレーニングも提供しています。
②インドにおける就業機会の創出
女性労働参加率が低いインド※の首都デリー郊外にある、エアバッグ製造のToyotsu Ambika Automotive Safety Components India Private Limited(以下、TASI) は、女性が活躍する企業として注目を浴びています。
TASI社では、健康や安全のために工場にエアコンを導入、女性社員専用送迎バス・寮の完備、職場における基本動作や海外への作業訓練派遣を含む教育パッケージを充実させるなど、女性が安心して働ける環境づくりに挑みました。また、女性の就労機会や格差の問題には、社員の家族向けに企業見学会を開くなど信頼関係構築にも努めました。
このような努力の積み重ねにより、生産従事者100%女性という職場も実現させました。またTASI社では、貧困問題が深刻なインド東北部、北部地域に出向き採用活動を実施し、これまで全従業員200名のうち71名を同地区より採用しています。
こうした女性の積極的かつ定期的な雇用への取り組みを通じ、豊田通商はこれからも人権に配慮し、健全な労働環境を整備することで、開発途上国における社会進出を後押ししていきます。
※世界経済フォーラム「女性の経済への参加と機会」国別ランキング→ インド:調査委対象149カ国中142位
世界銀行「女性の労働参加率」(2017年世界標準値:約49%)→ インド:約27% (2005年をピークに減少中)
意識・風土の醸成
これまでの人員構成や過去の成功体験に基づく働き方、指示命令を含むコミュニケーションスタイルなどの組織文化は、時として新たな組織・職場づくりにおいて目に見えないハードルとなることがあります。
これからは環境の急速な変化や、多様性、不確実性に対応するため、異なる経験や背景をもつ人間が夢やビジョンを共有、共鳴することで、組織として結果を出す時代です。従ってDE&Iの実現が会社の成長の鍵となります。
豊田通商ではDE&Iの意識・風土の醸成のために、2014年度から「いきワク活動」と呼ばれる取り組みを実施しています。この活動は、室・グループという小さな単位で行い、組織の持続的な生産性の向上のためにメンバー自身がテーマを決めて全員で取り組むものですが、下記の4つのルールを守れば何をやってもよい、メンバーの自発性を尊重した活動です。この活動の中から、新しい働き方への取り組みや、新規事業を考えるための勉強会など様々な取り組みが生まれています。
- (4つのルール)
-
- 「ありたい姿」の共有
- 全員で意見を出し合う
- 違う考え方や価値観を受け止める
- 合意形成 / 共働 / 共創
この活動によって、社員が異なる価値観をうけとめながら、自律的・自発的に物事に取り組む意識・風土を醸成することを目指しています。
2019年からは単体だけでなくグループ会社への展開も始め、グループ全体でのDE&Iの実現を目指しています。
2020年からはエンゲージメントサーベイによる組織状態の可視化を強化すると共に、社員一人一人が情熱を持って活躍するためのワークショップや講演会等を開催しています。
加えて、ミドルマネジメントを対象に、社員一人一人の主体性やベストパフォーマンスを引き出すことを目的にした”Hybrid Communication Program”(コーチングを含むハイブリッド型のコミュニケーションスキル習得の研修)を開催し、2022年3月までに累計約200名が参加しました。
2021年からは ”Advanced Hybrid Communication Program”も新設し、更に高いレベルのスキル習得の機会を提供しています。