「内閣総理大臣賞」を受賞した技術で中国の自動車をリサイクル

2018年12月01日

常に時代に先んじてトータルな3R※2取り組みを推進

モータリゼーションの進展とともに日本で「廃車公害」が社会問題となってきた1970年、豊田通商は、トヨタ自動車(株)と共同でシュレッダー会社・豊田メタル(株)を設立し、使用済み自動車(ELV)から鉄屑、非鉄金属などの資源を回収し再資源化する事業を開始しました。1994年には、ELVから排ガス触媒として利用した貴金属を回収・リサイクルする豊通リサイクル(株)を設立。さらに1998年からは世界初の「ASR※3再資源化工場」によりASRリサイクル事業も開始しました。

2001年には、自動車専門の「リサイクル研究所」も設置し、解体しやすい車両構造や効率的な解体技術、レアメタルの循環技術といった研究活動を進めてきました。豊田通商グループがこれまでに国内でリサイクルしたELVは約700万台、現在のリサイクル実効率は99%に上っています。
こうした自動車の全ライフサイクルを通した3Rの総合的取り組みが評価され、3R推進協議会主催の「平成25年度3R推進功労者等表彰」で当社はトヨタ自動車(株)とともに「内閣総理大臣賞」を受賞しています。
北京での実証実験で先進的リサイクルシステムを実現
国内NO.1のELVリサイクル・バリューチェーンを構築している当社は、自動車リサイクル事業の海外展開も積極的に進めてきました。自動車製造工場で発生する金属くずなどのリサイクル事業については世界12カ国23拠点で展開。2012年には、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受け、大規模集約型の「先進的自動車リサイクルシステム」の実証プロジェクトを中国・北京で開始しました。
急速な経済成長を背景に、自動車保有台数が世界第2位となった中国では、今後の環境規制強化によって旧式車両の多くが廃車になっていくことも相まって、近い将来にELVの爆発的増加が予想されています。この膨大なELVを、環境負荷をできる限り低減しながら、安全かつ効率的にリサイクルしていくことは、今後の中国の大きな社会課題です。
北京での実証実験では、2年間をかけて前処理からフロン破壊などの有害物処理、車体裁断や廃タイヤの破砕まで、環境負荷を低減したトータルな解体・リサイクルシステムを構築。年間1万台以上のELV処理を可能にする、日本国内にも類を見ないほどの先進的なリサイクル工場を実現しました。

この実証プロジェクトの成果を踏まえ、当社は2014年2月、実証実験の現地パートナー企業(北京博瑞聯通汽車循環利用科技有限公司)に資本参加し、日本企業としては初めて中国国内での自動車解体リサイクル事業に参入しました。今後はこの合弁会社によって「環境、安全、高生産性」を追求した「中国のELV解体モデル工場」をめざした事業を進めていきます。
自動車リサイクル法の施行など、中国社会の法整備を視野に入れ、順次中国国内の拠点を増やす計画です。そしてNO.1のELVリサイクル・バリューチェーンを中国でも構築し、循環型社会の実現に貢献していきます。
- ※1ELV:End of Life Vehicleの略
- ※23R : リデュース、リユース、リサイクル
- ※3ASR : Automobile Shredder Residueの略。使用済み自動車のシュレッダーダスト