プロジェクトストーリー国内海外

リチウム資源の安定供給で
電動車の普及を支える

バッテリー式電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)といった電動車が普及する中で、リチウムイオン電池の需要が急増しています。
豊田通商グループは、リチウムイオン電池の正極材などの原料に使用する炭酸リチウムと水酸化リチウムの生産事業を手掛け、電動車の普及を通じたカーボンニュートラルの実現に貢献しています。

プロジェクトの背景

スマートフォンやPC、定置用蓄電池などに使われるリチウムイオン電池。電動車の普及に伴う需要増を見据えて、豊田通商がリチウム獲得に向けて世界の資源鉱量を調査し始めたのは2008年頃のことでした。
リチウムは、南米、豪州、中国などで生産されるレアメタル(希少金属)の一種で、当時は世界的にもまだ生産者が少なく、日本はリチウム原料の100%を輸入に依存していました。電動車普及の加速が見込まれる中、自動車産業を支えるためにも新たな供給ソースの開拓が必要不可欠でした。
リチウムイオン電池原料に使うリチウム化合物は主に2種類あります。1つは、塩湖のかん水(塩分を含んだ水)や、鉱山から採掘した鉱石を濃縮、精製して生産する炭酸リチウム(Li2CO3)です。炭酸リチウムの用途は、リチウムイオン電池原料以外では、例えば、ガラスやセラミックスなどの原料としても使われます。
もう1つは、炭酸リチウムと水酸化カルシウムを加熱反応させて作る水酸化リチウム(LiOH)です。水酸化リチウムはリチウムイオン電池原料用途が多く、炭酸リチウムよりも水酸化リチウムを原料とした正極材の方がリチウムイオン電池の高エネルギー密度化や優れた充放電特性といったリチウムイオン電池の高性能化に貢献します。

開発パートナーに選定

© Arcadium Lithium All Right Reserved.

2008年、当社は世界の資源鉱量調査に乗り出しました。その結果、着目したのがアルゼンチンのオラロス塩湖です。オラロス塩湖は未開発の湖でありながら、湖水のリチウム含有量が多く不純物が少ないのが特徴で、生産や輸送に必要なインフラが整っていました。
そして2010年1月、世界各国の企業がオラロス塩湖の採掘権獲得に名乗りを上げる中で、当社はオラロス塩湖の権益を所有する豪州の資源会社Orocobre Limited(オロコブレ社)(現、Arcadium Lithium plc(以下アルカディウム社))の開発パートナーに選ばれます。
世界規模の販路を持つトヨタグループの一員であること、グローバルなネットワークを持つ商社として川上から川下まで一貫したバリューチェーン機能の提供できること、そして持続的な成長を目指す当社の方向性が高く評価されたことが選定の理由でした。

炭酸リチウムの本格生産をスタート

© Arcadium Lithium All Right Reserved.
© Arcadium Lithium All Right Reserved.

オロコブレ社(現、アルカディウム社)と共に事業化に向けた調査を始め、2011年にはパイロットプラントでの実証実験を開始します。オラロス塩湖で生産する炭酸リチウムは、当社グループが100%販売代理権を取得して市場に提供します。また、2012年9月には本プロジェクトの権益の25%相当を取得し、同年12月にはオラロス塩湖からかん水を汲み上げて炭酸リチウムを生産するプラントの建設に着手しました。

2014年12月に施設を開所すると、2015年にはいよいよ商業生産が始まります。
リチウムの生産には主に2つの方法があります。1つは、塩湖の水からリチウムを精製する生産方法、もう1つは、鉱石を粉砕して成分を抽出する方法です。今回のプロジェクトは前者で、鉱山から成分を抽出する方法よりも生産工程が少なく、低コストで生産できるという特徴があります。
資源の少ない日本にとって、資源確保は国家戦略の一つです。当プロジェクトは国家戦略にもかなうプロジェクトとして、JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)から鉱量評価調査などへの技術支援とインフラFS(実現可能性)調査に続き、債務保証制度の活用など一貫した支援を受けるプロジェクトとなっています。

生産量を拡張して需要増に応える

生産能力は当初17,500トン/年としていましたが、車載用リチウムイオン電池の需要の伸長が見込まれることから、2018年11月に生産能力の拡張を決定します。具体的には、かん水をくみ上げる井戸、濃縮させるための蒸発池、精製プラントを追加で建設する計画です。2023年に、生産能力を現在の17,500トン/年から42,500トン/年に増強する第二期工場の設備の建設が完了しました。今後、徐々に生産数量を上げていき、2024年末までに生産能力42,500トン/年の到達(完工)を目指します。

国内初の水酸化リチウム生産に着手

所在地:福島県双葉郡楢葉町山田岡仲丸1-40
会社設立:2018年10月
出資比率:アルカディウム社 75%、豊田通商 25%
(議決権比率:アルカディウム社 49%、豊田通商 51%)

炭酸リチウムの生産を開始した後も電動車は急速に普及し、航続距離の伸長につながる車載用リチウムイオン電池の高性能化が続きます。
そこで当社は、2018年にグループ会社として豊通リチウム株式会社を設立し、水酸化リチウムの生産に着手します。

国内と韓国などアジア圏への販売を見据えて、需要地に近い福島県の楢葉町に国内初となる水酸化リチウムの生産工場を建設しました。
工場は2022年11月16日に竣工しました。福島県を拠点とするこのプロジェクトは、東日本大震災からの復興を支援する経済産業省の自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金の対象事業であり、地域経済の活性化や被災地域の産業復興にも貢献します。

水酸化リチウムの生産能力は10,000トン/年です。当社グループが100%販売代理権を取得して、車載用リチウムイオン電池原料用途に限らず工業用途も含めて国内外のメーカーに販売します。製品の品質が需要に適合しているかなどの確認も必要なため、現在、量産体制への移行中です。安定生産と安全操業に向け注力し、将来的には生産能力の拡大や海外展開も視野に入れて、急拡大するリチウムイオン電池市場の期待に応えていきます。

強みを生かしてサステナブルな社会を実現

豊田通商グループは、このプロジェクトの推進によって事業と企業の価値を高めていくとともに、電池サプライチェーンにおける川上分野である資源を手掛けることにより、川下分野のさらなる発展に貢献することを目指します。また、リチウム市場の新しいサプライヤーとして電動車の普及を支え、カーボンニュートラルへの取り組みを通じて「未来の子供たちへ より良い地球環境を届ける」という使命を果たしていきます。

2024年02月16日

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