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高品質な医療サービスでインドのWell-being(ウェルビーイング)な成長と発展に貢献

人口増加を背景に急速な経済成長を続けているインドでは、地方と都市部の医療格差が広がっています。豊田通商は、セコムグループとの連携で現地に病院を作り、10年超に亘って地域の人たちの医療アクセス向上に貢献しています。また、近年では医薬品流通やリネンサプライ等の医療周辺サービス事業も展開し、快適で健やかなインドの未来社会の実現を目指しています。

2025年4月18日

輝かしい経済成長と、その裏にある医療格差の問題

近年著しい経済成長を遂げているインドですが、日本の約9倍の国土と世界最大の14億人超の人口をカバーするためのインフラ整備は道半ばです。医療についても、日本のような国民皆保険制度は導入されておらず、インド全人口に占める健康保険加入者割合は約25%ほどです。インドの病院は政府により運営されている公的医療機関と民間医療機関に分かれていますが、経済成長に伴い、優れた医療機関の新設や医療人材の育成、更に病院運営を支えるためのサプライチェーンなど総合的な医療インフラの整備が社会課題となっています。
こうした課題を解決するために豊田通商は、セコムグループと共同で病院経営/運営、及び、医療周辺サービス事業を現地で展開しています。

きめ細やかな医療サービスで地域に寄り添う

病院経営では、2014年3月に豊田通商とセコムグループが共同しインド第4の都市であるベンガル―ルに「SAKRA WORLD HOPSPITAL(以下SAKRA病院)」を設立しました。この病院は、同国で初となる「日本式」の総合病院で、患者本位のきめ細かな医療サービスの提供と医療品質の向上に取り組んでいます。

具体的な取り組みとして、2019年9月から在宅サービス(訪問看護、訪問リハビリ、訪問検査)を開始し治療から退院後のケアまでシームレスな医療を提供しています。また、SAKRA病院から離れた場所にいる患者にも質の高い医療を提供するために、当事業の第1号クリニックである「Sakra Premium Clinic」を開設しました。

地域に根ざしたSAKRA病院の医療サービスは、コロナ禍による健康被害から地域の人々を守りました。開院から10年を迎え、今後も、現地医療インフラの機能を拡充し、生活習慣病の予防や治療から先進医療まで地域の医療ニーズを包括する質の高いサービス提供を目指していきます。また、近年増加している交通事故の治療やリハビリ、インドの医療現場の課題である院内感染対策にも注力しています。

INTERVIEW
SAKRA WORLD HOSPITAL
Deputy Managing Director(副社長)
松見 直也さん

SAKRA病院は、その特徴の1つとして、利用者に対して診断結果や今後の治療、入院の必要性を十分に説明するプロセスを重視しています。この方針は利用者のみならず、現場で医療を行う医療関係者や病院運営の関係者からの信頼獲得にもつながっていると感じます。病院設立から10年が経ち、コロナ禍をきっかけに利用者の健康維持や予防の意識が高まり、健康診断のニーズが高まっています。今後も現地の健康と医療の水準を高めていくため、地域に寄り添った事業活動を目指していきます。

SAKRA病院では、質の高い医療サービスを提供しています

医薬品サプライチェーンの集約化と効率化を推進

SKITESの倉庫
SKITESでの医薬品パッケージングの様子

インドは世界11位の医薬品市場です。特に昨今の医療ニーズの増加に伴い、今後の医薬品製造業におけるCAGR(年平均成長率)は8~12%と言われ、市場成長が期待されています。
一方、サプライチェーンの課題も見えてきています。インドの医薬品卸は同族経営の中小零細企業が非常に多く、その数は6万5,000社を超えています。医薬品などを仕入れる病院が1社の医薬品卸から購入できる医薬品の種類や数量は限りがあり、必要な薬を揃えるために多数の医薬品卸から調達しなければならず、現状は発注工数や在庫管理が複雑化しています。

この状況を踏まえて、豊田通商は2021年に現地の大手医薬品卸であるSKITES PHARMA(以下、SKITES)に出資をしました。SKITESは2017年設立の医薬品卸で、世界基準の自社倉庫と物流品質、ITインフラ、コールドチェーンの物流システムを備え、約2万2,000種の医薬品を取り扱え、トレーサビリティや最適在庫、安定供給を実現するスマートロジスティックスに強みがあり、約1万2,000の薬局や病院に向けて効率的に医薬品を販売しています。
インドでは、2017年にGSTが導入され州ごとに異なっていた税体系が改善され、これによりSKITESのような大手医薬品卸が州を越えて顧客を獲得しやすくなり、今後も同社の医薬品卸業のさらなる拡大を見込んでいます。

豊田通商は、SAKRA病院の運営を通じて得た病院側のニーズを踏まえ、買い手である病院側の目線も含めながらSKITESの医薬品流通事業の集約化、原価低減、DXによる作業の効率化に貢献していきます。また、医薬品メーカーとの協働によって市販されている医薬品や、ローンチを目指す新規商材の導入にも関わり、さらには、アフリカで医薬品卸事業を展開する豊田通商グループのCFAO Healthcare(Eurapharma)向けに、インドからの医薬品の輸出も検討し、医薬品販売機会の創出と拡充に取り組んでいきます。

  • Goods and Services Tax:2017年7月に導入された間接税。以前は、中央政府と州政府それぞれが複雑な間接税を課し、州をまたぐサプライチェーンを非効率なものにする原因となっていました。
INTERVIEW
SKITES PHARMA
非常勤取締役
久間木 裕介さん

SKITESは当社が出資してから順調に顧客数を伸ばし、事業を展開しているムンバイやその郊外において高い評価を受けています。今後は①DXによるトレーサビリティ、在庫管理の適正化、物流の最適化を実現するスマートロジスティクス、②製造から 販売、物流、アフターサービスまでを網羅するワンストップショップ機能の構築、そして、③パートナー企業やSAKRA病院との連携による安定供給に重点を置いて、SKITESを“Be the Right ONE” の医薬品販売卸へと成長させていきたいと考えています。

SKITESでは医薬品の在庫管理の適正化を進めています。

強みの掛け合わせで医療周辺サービスを拡充

SAKRA病院でのベッドメイキング

病院で使用される寝具やタオルなどリネン類は、衛生面の管理や感染対策の観点で、回収、洗濯、在庫管理に厳しい管理が求められます。しかし、インド国内にはその水準を満たす高品質なサービスを提供できる事業者がほとんどありません。

そこで豊田通商は、リネンサプライ市場のリーディング企業の1つである(株)トーカイと連携し、2022年9月に合弁会社「VALABHI HOSPITAL SERVICES PRIVATE LIMITED」(以下、VALABHI)を設立しました。
VALABHIはSAKRA病院と同じベンガルールに拠点を置き、豊田通商の強みであるトヨタ式の現場改善や運営効率化ノウハウと、(株)トーカイの強みである日本式の感染管理技術や医療周辺事業のノウハウを掛け合わせ、新しいリネンサプライの事業モデルを構築していきます。

同社のサービスでは、リネンにRFIDタグを縫い付けてトレースし、洗濯回数、消耗、紛失を正確に捉えた在庫管理を提供しており、今後は、配送、在庫管理、回収、洗濯など一連のサービス品質を高めるとともに、ベンガルール以外の都市でもこの事業モデルを展開し、リネンサプライ事業の拡大にとどまらず、インドのニーズに合う医療周辺サービスの提供を目指していきます。

INTERVIEW
Valabhi Hospital Services Pvt. Ltd.
Managing Director(社長)
北野 慎平さん

私たちのサービスは、高品質のリネン類を提供することによって病院内の感染減少に向けた管理の強化に寄与しています。また、リネン管理など病院運営の間接業務や非医療行為を外部業者にアウトソースすることは、医療従事者が医療行為に集中できる環境づくりにつながり、その点で、私たちの事業はインドの医療品質の向上に間接的に貢献していると感じています。今後も現地医療のトレンドやニーズを先読みしながら、急速なインドの経済成長に見合う最新の医療周辺サービスを拡充し、インド医療への貢献範囲を拡大していきたいと考えています。

リネンサプライのパートナー企業であるVashkleen の工場での洗濯作業

新病院を設立し医療アクセスをさらに改善

新病院の完成イメージ

インドの医療課題は徐々に解決に向かっています。しかし、インド国内にはまだ病院へアクセスができない空白地帯が多くあり、豊田通商は、ベンガルールにSAKRA病院に次ぐ新病院(名称未定)の建設を計画しています。
新病院は、SAKRA病院の病床数294床を超える約450床となる予定で、総合がんセンター、小児・周産期総合医療センター、高機能健診センターを新設して現地での診療機能をさらに強化します。また、医師や看護師のトレーニング設備を設け教育や訓練の機能を充実するほか、先進的なリハビリテーションプログラムと退院後の在宅ケアによって患者のQOL(Quality of Life)の向上を図ります。

インドの健康を支えるために、豊田通商はここで挙げた施策により医療課題の解決に貢献し、病院運営や医療周辺サービス事業を通じてノウハウや知見を蓄積しながら、ヘルスケア事業を拡大することで、インドのみならず開発途上国の医療アクセスを改善していきます。

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