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未来の子供たちのために、豊田通商だからできる環境戦略

気候変動、資源枯渇、生物多様性の喪失など、地球規模で進む環境問題。どの企業も早急な対応が求められているなか、豊田通商ではサーキュラーエコノミーのリーディングプロバイダーを目指し、カーボンニュートラルな社会の実現に本気で取り組んでいます。豊田通商に根付く独自の文化と、豊田通商だからこそできる推進体制、目指す姿を紹介します。

2025年5月30日

環境や社会への貢献は50年前から続く“当たり前”のこと―

かつてない危機に直面している地球環境。企業が環境に配慮した取り組みを行うことは、今や当然の責務となっています。2000年代以降、製品ライフサイクルのあらゆる段階で資源の効率的・循環的な利用を図るサーキュラーエコノミーという考えが世界的に浸透しましたが、私たち豊田通商にとって、この考えに基づく取り組みは目新しいことではありません。

今から50年以上前の1970年代、当社はトヨタグループをはじめとしたお客さまやパートナーの事業課題にお応えするために、使用済み自動車(ELV:End-of-Life Vehicles)の適正処理事業をスタート。自動車生産のバリューチェーンの中で、生産に必要な原材料の調達から、廃車や廃プラスチックなどの資源回収、そして再資源化までを一貫して行ってきました。サーキュラーエコノミーという言葉が広く知られるようになるずっと以前から、資源循環は当社にとって「当たり前」の事業だったのです。

豊田メタル㈱での使用済み自動車の適正処理事業の様子(1972年)

世界的な環境意識の高まりとともに当社の長年の取り組みが注目を集めるようになり、積極的に情報公開するようになった現在、当社はグローバル規模で資源循環事業を加速させています。透明性の高い情報開示とそれによって得られた環境格付けの高い評価は、資金調達や企業としての信頼獲得に直結し、「豊田通商さんはこのような取り組みをされているんですね」と、さまざまなステークホルダーの皆さまからお声がけいただくことも増えました。現在の事業活動の根底には、長年にわたり改善活動を実践し資源循環に関する知見とノウハウを蓄積してきたことがあります。トヨタグループの「カイゼン」活動の一環として、肌に染み付いたこの文化こそが、当社の強さなのです。

未来の子供たちのために、“いいお節介”をやきつづける

当社が「当たり前のこと」としてサーキュラーエコノミー事業を推進できているのは、根底に「人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりに貢献する価値創業企業を目指す」という企業理念が根付いているからです。さらに「Be the Right ONE」というグローバルビジョンが、豊田通商ならではの環境戦略を展開するための土壌を育んでいます。

それはすなわち、満遍なくすべての事業に注力するのではなく、私たちが強みとする事業に特化すること、この方針は、従業員一人ひとりが目先の利益にとらわれることなく将来の豊かな環境づくりに貢献することを目指し真剣に考える企業風土を醸成してきました。

そして「未来の子供たちにより良い地球を届ける」というミッションが、この動きをさらに加速させています。投資の是非、取り組みの継続、新しいビジネスの創出。あらゆる意思決定の場面において、私たちはいつも「どの選択が『Be the Right ONE』、かつ、未来の子供たちのためになるか」を考えます。

お客さまの脱炭素化に貢献する再生可能エネルギー事業、水素・バイオ燃料事業の推進、モビリティの電動化や、その鍵となるバッテリー領域の課題解決。営業部門、コーポレート部門を問わず、当社が得意とする分野で「この取り組みこそ、未来の子供たちに貢献できる」と確信した瞬間に積極的に行動を起こす。私たちは、未来の子供たちに対してそんな「お節介」とも言える熱意を持っています。

豊田通商のミッション・ビジョン・バリュー

戦略実行のカギは「本部横断型」の5つのワーキンググループ

当社は、2021年に脱炭素社会移行への貢献に向けた具体的な方針として「2050年カーボンニュートラル達成」を掲げたほか、2024年に「豊田通商グループ環境方針」を改訂し、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染などの幅広いテーマについても方針を明確化。気候変動への対応、森林及び生物多様性の保全、省資源、省エネルギー、水の有効活用と深刻な 水不足や洪水などが懸念される地域(水ストレス地域)での水使用量削減にも取り組んでいます。

脱炭素社会の実現に向けては、2021年~2030年までの間の10年間で総額2兆円規模の投資を行い、とくに「再生可能エネルギー・エネルギーマネジメント(再エネ・エネマネ)」の分野には、半分の1兆円規模の投資を行っていくことを表明しています。

こうした環境戦略を実行する豊田通商ならではの特長的な体制が、本部の垣根を越えて組成された5つのワーキンググループ(WG)です。多岐にわたる事業と多様なネットワークがある当社だからこそ実現できる本部間の横連携。横軸・縦軸の両方から事業機会と環境課題を結び付ける戦略的アプローチは、他社にはない私たちの大きな強みです。

世界的な脱炭素社会を実現するには、全世界でCO2排出量が多いモビリティ分野の脱炭素化や、化石エネルギーから再生可能エネルギーへの移行などが不可欠です。
再生可能エネルギー、蓄電池、モビリティ。この3つの分野に強みを有する当社ですが、これら3分野をすべて事業として展開する企業は多くはありません。さらに、本部を横断するWGという組織編成により、各本部が持つ技術やノウハウを組み合わせ、システム全体をコーディネートできる体制を構築し、お客さまや社会の脱炭素化の加速に貢献しています。

バッテリーWGでは、資源循環・3RWGの分野ともまたがり、電気自動車用バッテリーに必要なリチウム資源の安定供給・生産製造から使用済みバッテリーの回収・再利用・リサイクルまで、広範囲に事業領域を拡大。発電事業や水素製造といった単一の事業ではなしえない、いわばサーキュラーエコノミーそのものの構築を行っています。

アルゼンチン・オラロス塩湖での炭酸リチウムの生産(Sales de Jujuy社)
集電体用アルミ箔の製造(Sama Aluminium社)
バッテリー式電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)用電池の生産(Toyota Battery Manufacturing, North Carolina社)
使用済みの車載用リチウムイオン電池からのブラックマスの回収(豊田ケミカルエンジニアリング㈱)
※ 電池のリサイクル原料となるレアメタルを多く含んだ粉末

このような独自の体制により、当社では過去にないスピードで、これまで接点のなかった企業とのさまざまな合弁事業や資本提携を次々と実現しています。その分野は再生可能エネルギー、バッテリーに留まらず、近年は廃棄ロスが深刻なアパレル分野でも取引が拡大。ナイロンtoナイロンの繊維リサイクル実現に向け、海洋プラスチック汚染の主要因である廃漁網のリサイクル事業へも参入しました。繊維事業部は「サステナブルファッション部」へと名称変更し、社内外で注目されるビジネスへと生まれ変わりつつあります。

廃業網の回収の様子
回収した廃漁網
廃漁網のリサイクル作業の様子
リサイクルした廃漁網はダウンジャケットなどの製品に使用されています。

WGを実効的に機能させていくために、当社では、社長・CEOを議長としたカーボンニュートラル推進会議を月1回で開催し、経営層、各本部トップ、各WGリーダーが一堂に会し、活発な意見交換を行います。さらに、この会議での意思決定の背景や議論のプロセスは、海外拠点を含めた社員にもストーリー性をもって共有され、このような体制のもと、WGリーダー間の連携が促進され、試験的な共同プロジェクトが立ち上がっています。また、各本部内でサーキュラーエコノミーに関するイベントや会議が開催されるなど、カーボンニュートラル実現に向けた社員の意識が高まり、日々醸成されているのです。

サーキュラーエコノミー、カーボンニュートラルな社会への先導者として

50年以上前、使用済み自動車の適正処理事業をスタートした時は、当社はお客さまの困りごとに対する「縁の下の力持ち」的な存在と評価いただいていました。続く2010年代は、お客さまの事業を推進する「伴走者」として、お客さまとともに成長してきました。そして、これからの当社がありたい姿は「先導者」です。

当社はサーキュラーエコノミーの取り組みをこれまで以上に加速させるため、サーキュラーエコノミー関連の先端技術の探索やビジネスモデルの開発を行う「一般社団法人サーキュラー・コア」をトヨタグループとの協働で設立し、世界をリードするサーキュラーエコノミープロバイダーとして、循環型社会の実現に本気で挑戦していきます。

これまでのリニアな経済ではなく、循環型の経済を構築するには、さまざまなステークホルダーの皆さまとの協働が不可欠です。当社が、TCFD※1、TNFD※2の提言に沿った透明性の高い情報開示を積極的に進めているのは、多くの皆さまからの信頼と共感を得て、協働を加速させたいと考えているからです。

おかげさまで当社グループは、その取り組みが外部からも評価され、CDPからのトリプル「Aリスト企業」選定、FTSE ESGスコア4.7点/5点満点(対象企業での順位7位)を獲得し、FTSEのESG投資指標の構成銘柄にも選ばれました。

CDPから「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」の3部門すべてで「Aリスト企業」に選定されました。
FTSEの「FTSE Blossom Japan Index」構成銘柄に選定されています。

当社は、未来世代に負債を残すのではなく、より良い地球環境を引き継ぐ責任を果たす企業でありたいと強く願っています。そして、そんな企業が増えれば、未来に良い地球が残せるはずです。環境対策と経済成長が両立できる姿を当社が示すことで、これからの企業成長のロールモデルとなることを目指しています。

  1. ※1気候関連財務情報開示タスクフォース。気候変動によるリスクや機会に関する情報開示の国際的な枠組み。
  2. ※2自然関連財務情報開示タスクフォース。自然資本や生物多様性に関連する情報開示の国際的な枠組み。TCFDの自然版。
INTERVIEW
カーボンニュートラル推進部
長合 誠也さん

豊田通商では環境対応を「絶対にやり遂げるべきこと」であると同時に「豊田通商のビジネスを発展させる機会」とも捉えています。地球規模の変化がすでに起きている中で、未来の子供たちへの責任を果たす取り組みを、義務感ではなく、“前向きに”実行していくことを意識しています。当社が積極的に情報を開示することで、一社でも多くの企業が当社の活動に興味を持ち、未来の子供たちにより良い地球を届けるビジネスを、共に創っていけたらと思っています。

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