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豊田通商が描く、グローバル・サーキュラーエコノミーの未来

豊田通商は2025年、北米大手リサイクル企業 Radius Recycling, Inc(以下ラディウス社) をグループに迎え入れました。これは単なる企業買収ではなく、循環型静脈事業のグローバル展開を加速させる大きな転機となる出来事です。豊田通商の循環型静脈事業をけん引してきたメンバーの声を通じて、50年以上にわたり築いてきた豊田通商の強み、ラディウス社をパートナーとして選んだ理由、そして私たちが描く未来の姿を紹介します。

2026年1月30日

INTERVIEW

サーキュラーエコノミー本部
リバースサプライチェーン
事業部
バッテリー・3RG
グループリーダー
戸田 将則さん

サーキュラーエコノミー本部
リバースサプライチェーン
事業部
CEイノベーション室
室長
平位 和哉さん

Radius Recycling, Inc出向
Deputy Head, Integration Office
冨田 亮二さん

50年積み重ねてきた“動静脈一貫モデル”という強み

鉄スクラップが山のように積まれたヤードで、巨大な重機が絶え間なく稼働し、ELV(使用済み自動車)が次々に解体されていく。取り出された部品は再利用され、自動車のバッテリーから回収した希少金属が、新たなバッテリーの原料として再生される——

こうした光景は、普段目にすることは少ないかもしれませんが、まさに資源が循環し、新たな価値へと生まれ変わる「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」の現場です。

「私たちにとって、資源循環ビジネスは特別なものではありません。むしろ『当たり前』のこととしてずっとやってきたことなのです」(戸田)

そう語るのは、リバースサプライチェーン事業部でグループリーダーを務める戸田さん。この言葉どおり、私たち豊田通商は、再資源化への要求がこれほど高まるよりずっと以前から、資源循環ビジネスを展開してきました。

「当社はトヨタグループの一員として、1970年代に自動車製造工程で発生する鉄スクラップや廃車の回収・再生を開始しました。以来、トヨタグループのモノづくりに深く入り込み、車両ライフサイクルのあらゆる段階で、その資源が最大化されるよう関与し続けてきました」(戸田)

例えば、新車の生産工程で発生する金属スクラップは、選別・加工・品質管理を経て、鉄鋼・アルミ原料として再利用され、自動車部品へと生まれ変わります。また、廃車からは鉄・非鉄金属・プラスチックなど多様な素材を回収し、それぞれに最適な技術で再資源化。得られた再生材は、新たな車両部品や素材としてサプライチェーンに戻され、資源循環の取り組みを支えています。
電動車の普及を見据え、近年は特にEVバッテリーに注力し、使用済みバッテリーから希少金属を効率的に回収し、高品質な電池材料として再利用するための技術開発と事業化を加速させています。

サーキュラーエコノミーの潮流がもたらす機会と挑戦

北米、欧州、アジア、中南米、アフリカ——トヨタグループをはじめとしたお客さまの生産拠点の拡大に合わせて、豊田通商の資源循環ネットワークは広がっていきました。

近年、サーキュラーエコノミーの潮流に変化をもたらすことになった背景は以下の3点です。

1.動脈産業側の変化

欧州の自動車生産時の再生プラスチック・電池の再生材使用義務や、インドの拡大生産者責任といった法規制を受け、動脈産業は「再生資源を使わなければ生産できなくなる、商品が販売できなくなる」という課題に直面しています。

2.再資源化への挑戦

電動車戦略を推進するには、電池廃材や使用済み電池をいかに回収し、サプライチェーンに戻すかが大きな課題となります。また、樹脂においても、欧州の規制強化に対応するため、高品質な再生樹脂の安定供給が不可欠です。

3.日本国内独自の課題

国内生産約900万台/年の多くは新車として、もしくは中古車・中古車部材として海外に流出するため、国内に残る資源は100~200万台分に過ぎない、という事実があります。グローバルで自動車OEMが再生材の使用比率目標を掲げる中、今後、再生資源の獲得競争が激化することは必至です。

ここ数年で、規制の強化や顧客ニーズの変化により、再生資源への需要は本格化しています。こうした背景の中で、資源循環を安定的に拡大させていくには、モビリティ領域にとどまらず、多様な産業との「連携」や「協調」が鍵となります。
2024年には、当社を含めたトヨタグループ11社が参画し、業界を横断した一般社団法人Circular Core(サーキュラー・コア)を設立。「サーキュラー・コアでの取り組みにおいても、早期に実績を示し、仲間を増やしていきたい」と語る平位さんは、当社の資源循環ビジネスを長年けん引してきたキーパーソンの一人です。

「再生資源というのは、基本的に廃材であり、質も量も安定しません。その不安定な素材を原資にしながらも、私たちは実際のサプライチェーンに安定供給を続けてきました。 これは、商社として“サプライチェーンを守り抜く”という強い意志を持つ当社だからこそできたことです。モノづくり企業であるお客さまが何を求めているのか、どう応えるべきかを常に追求してきたスピリッツが、他社には真似できない再生資源の供給体制を築いてきたのです。
この50年で、私たちはお客さまが必要とする再生資源を届けるために、質・量ともに安定した供給体制とネットワークを構築してきました。 しかし、これからの市場では、より一層高い品質と安定供給が求められます。だからこそ、これまで培ってきた強みを活かしながら、新たな連携を広げていくことが重要だと考えています」(平位)

北米で出会った、理想のパートナー~ラディウス社を選んだ決め手とは~

2025年7月、豊田通商は北米の大手リサイクル企業ラディウス社を完全子会社化しました。

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豊田通商がラディウス社の協業検討を本格化させたのは2023年のこと。1906年創業の老舗であるラディウス社は、年間約480万トンのスクラップを取り扱う北米有数のリサイクル企業。金属スクラップの回収・選別・加工のみならず、その上流でPick-n-Pullという自動車解体・中古部品販売も行っており、北米市場で自動車リサイクラーとしての確固たる地位を築いています。
市場分析や候補企業の絞り込み含め、構想段階から検討チームに参画していた冨田さんは、こう語ります。

「当社における日本のELV(使用済み自動車)リサイクルは99%近い高水準のリサイクル率を達成しています。このノウハウを活かしてグローバルに規模を拡大させるためには、広域で安定した回収ネットワークが不可欠だと考えていました。その点、ラディウス社には大きな可能性を感じました」(冨田)

「決め手となったのは、価値観の近さでした。ラディウス社には旧社名シュニッツァー・スチール・インダストリーズの頭文字をとった”SSI”というバリューがあり、“Safety(安全)”、“Sustainability(持続可能性)”、“Integrity(誠実性)”を重視しています。なかでもSafetyを最優先しており、すべての会議が安全の共有から始まることに感銘を受けました。現場の災害や学びをトップ自らが発信し、全拠点で改善に取り組む姿勢は、豊田通商の文化と深く重なり、『この会社となら一緒にやっていける』と確信しました」(冨田)

トヨタグループの一員として受け継いできた「現地現物」「安全第一」の姿勢。ラディウス社が100年以上大切にしてきた価値観は、その根底で私たちとつながっていたのです。

ラディウス社買収がもたらしたシナジー

ラディウス社の買収により、豊田通商の循環型静脈事業は新たなステージへと進化しました。

ラディウス社が持つ圧倒的な回収ネットワークと、豊田通商が長年培ってきた「再資源化機能」「再資源化技術」「品質管理・クローズドループ構築力」が融合することで、北米市場における高品質な再生材のサプライチェーンはこれまで以上に強化されます。

私たちは特に「金属スクラップ」「ELV(使用済み自動車)」「車載用電池」の3領域でシナジーを最大化し、再生資源のグローバル供給拠点の確立を目指しています。

「買収から5か月が経過し、当初想定していた商品やサービス面でのシナジーに加え、統合後に新たな可能性も見えてきました。例えば、米国の大手製鉄会社との連携です。ラディウス社のネットワークで回収したスクラップを同社に供給し、そこで製造された鉄鋼製品を豊田通商が自動車メーカーへ提供する。静脈(回収)から動脈(製造)までを一体でつなぐ、完全なクローズドループを北米で実現していきます」(冨田)

未来の子どもたちのために――グローバルNo.1サーキュラーエコノミープロバイダーを目指して

サーキュラーエコノミー本部COO
Radius Recycling, Inc会長兼副社長
片山 昌治さん

豊田通商が50年にわたり築き上げてきた資源循環ビジネスは、単なる廃車スクラップの処理にとどまりません。私たちが提供してきたのは、回収から加工・供給までを一貫して担い、お客さまの求める品質の再生材を安定的に届けるネットワークです。廃棄物を資源へと転換し、循環型サプライチェーンを構築する――それこそが、私たちの考えるサーキュラーエコノミーの姿です。
ラディウス社の買収により、この『動静脈一貫モデル』はさらに進化しました。広域な回収体制が加わったことで、資源循環をグローバルに推進できる基盤が整い、私たちは世界No.1のサーキュラーエコノミープロバイダーを目指しています。事業のグローバル展開を通じて、市況変動の影響を受けにくい安定収益型のビジネスモデルを確立してまいります。
今回ラディウス社を迎えるにあたり、強く感じるのは“縁”の力です。企業買収は、互いの企業文化に共感できて初めて建設的な議論が可能になります。120年の歴史を持つ企業をパートナーに迎えられたのも、先人が築き上げてきた現場力があったからこそ、私たちの理念をご理解いただけたのだと思います。
資源循環のループを真に実現するためには、私たち自身が動脈・静脈の現場に深く関わることが不可欠です。自ら汗をかき、仲間とともに社会をより良くしていく――自分たちのためではなく、次の世代のために。その想いを胸に、ラディウス社のスタッフと二人三脚で挑戦を続けてまいります。

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