プロジェクトストーリー国内

豊かな風資源を最大限に活用する、
未来に向けた道北プロジェクト

世界的なカーボンニュートラル推進の潮流の中で、太陽光や風力をはじめとする再生可能エネルギーの発電と利用が加速しています。多様な再エネ事業を進めている豊田通商グループは、北海道の道北地区における風力発電設備の増設と送電線の整備を手掛けています。「未来の子どもたちに、よりよい地球環境を。」届けるため、グループ一丸となってカーボンニュートラルの取り組みを加速しています。

我が国のCN実現に向けて2030年までに再エネを大幅拡大

地球温暖化をはじめとする世界的な気候変動問題への対応として、政府は2050年までにカーボンニュートラル(CN)を目指すことを宣言しました。CNは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガス(GHG)の排出量と、植林や森林管理を通じた吸収量を差し引きして実質的にゼロにすることです。
この目標を達成するため、GHGの発生側である産業分野ではCO2排出量が少ない再生可能エネルギー(再エネ)の生産と利用を増やしていく取り組みが加速しています。

2021年の国内の発電源は、石炭、LNG、石油による火力が71.7%、原子力が5.9%、太陽光、水力、風力などによる再エネが22.4%であり、再エネの内訳は、太陽光9.3%、水力7.8%、バイオマス4.1%、風力0.87%、地熱0.25%でした。
再エネ比率は1年あたり1~2%の割合で増加してきていますが、政府は、2030年までに再エネを36~38%に引き上げる目標を掲げており、目標達成には現在のスピードをさらに加速する必要があります。
また、風力発電は大きく拡大する計画があり、再エネにおいて重要な役割を担っていることがわかります。

2030年に向けた目標

CN実現に向けた豊田通商グループの取り組み

豊田通商グループは「未来の子どもたちに、よりよい地球環境を。」をスローガンに掲げ、2050年のCN実現を目指しています。また、2030年までに1.6兆円の投資を予定しており、その約半分に当たる7,000億円を再エネ事業に充てる予定です。

当社グループの再エネへの取り組みは、地球温暖化への懸念が広がり始めた1980年代後半にスタートし、以降、国内外で太陽光や風力発電事業を展開してきました。近年ではその取り組みを加速させ、2022年にはユーラスエナジーホールディングス(以下ユーラスエナジー)を完全子会社化し、23年にはSBエナジー(現テラスエナジー)を子会社化しました。 ユーラスエナジーは、国内外15の国と地域で風力と太陽光の発電事業を展開しています。国内では最大の風力発電事業者で、2023年3月末時点の再エネの発電量は風力と太陽光を合わせて約3,420MW(3.42GW)です。
SBエナジーは、東日本大震災をきっかけにソフトバンクグループが設立した会社で、国内では最大規模の太陽光発電事業者です。再エネ発電量は太陽光発電を中心に国内外合わせて823MW(0.823GW)となります。
その他、バイオマスや小水力などを加え、当社はグループ一丸となった取り組みで、2022年3月期に3,600MW(3.6GW)だった再エネ発電量を、2025 年に5,000MW(5GW)、2030年に10,000MW(10GW)以上へ増やす計画です。

豊田通商の発電量の目標

再エネ事業の始まり

宗谷岬ウインドファーム

ユーラスエナジーの風力発電事業は、株式会社トーメン(現豊田通商)の電力事業として1987年にアメリカで始まりました。その後、イギリス、イタリア、スペインでも同事業を始めました。
日本では、国の政策で風力発電が事業として成り立つ環境が整備されたことを受けて、北海道屈指の強風地帯である北海道の苫前町でユーラス苫前ウインドファームの運転を開始しました。1999年に始めたこの事業は、当社グループにとって日本国内で初の風力発電事業です。また、ウインドファームと称される大規模風力発電所としても日本国内で最初の発電施設であり、日本における再エネの導入と拡大の端緒となる事業となりました。その後、北海道では2001年にユーラス浜頓別ウインドファームⅠ、2005年にユーラス宗谷岬ウインドファームの運転を開始しました。

道北にて地域と連携する送電事業に挑戦

今回整備した送電線
北海道北部風力発電株式会社
立:2013年8月8日
資本金:19.5億円
株主構成:ユーラスエナジー 他
従業員数:13名(2023年7月1日現在)
社:北海道稚内市末広五丁目5番1号

北海道の道北地域は風力発電事業に適した自然の条件が揃っています。この風資源を十分に活用することで、国内の再エネへの取り組みは大きく前進します。
しかし、そのためには解決しなければならない課題が2つありました。
1つ目の課題は送電網です。
道北は風力発電の適地であるものの、送電網が脆弱なため風力発電の導入と拡大に課題があったのです。
ここに再エネ普及の課題と可能性を感じた政府は、2013年、道北地域を特定風力集中整備地域に指定し、送電網を整備する実証事業の担い手を公募しました。10年かけて送電網の整備と技術課題の実証に取り組み、風力発電の導入と拡大に結びつける事業です。
ユーラスエナジーは、この実証事業が社会と地域の課題解決につながると考え、送電事業のための新会社として北海道北部風力送電株式会社を設立。送電事業の事業者として実証事業に応募し、採択されました。
この送電事業の新会社は、ユーラスエナジー以外の事業者や地域の金融機関などの出資を受け、地元企業とも連携しながら、送電網整備の事業に着手することとなりました。

プロジェクト完遂のもう1つの課題

今回設置した蓄電設備

送電網の整備が決まり、道北の風資源を有効活用する目処が立ちました。具体的な計画も決まり、稚内から豊富町の変電所を経て中川町まで1市4町を跨ぐ約78kmを送電線で結び、中川町で北海道電力ネットワークの系統に接続することとなりました。
しかし、ここで2つ目の課題にぶつかります。
電気は常に電力の需要量と発電量が一致する必要がありますが、風力発電と太陽光発電は当然ながら天候によって発電量が左右されます。自然変動電源と呼ばれるこれらの再エネは、需給バランスを過度に乱す可能性があるのです。
この課題を解決するため、豊富町の変電所に、日本最大、世界でも最大級である240MW/720MWhのリチウムイオン蓄電池からなる蓄電システムを設置することにしました。発電された電気の充放電によって送電線に流れる電気をコントロールすることによって風の強弱などに左右される風力発電の弱点を補完し、変動を緩和した形で風力発電からの電気を系統に届けるためです。
このように、送電線による大容量の送電と需給調整の蓄電池により、道北地域における風力発電の導入と拡大に資する体制が構築されることになったのです。

未来の子どもたちのために私たちができること

送電線と蓄電システムの工事は、2018年に始まり、2023年に完工しました。最盛期では600名を超える関係者が工事に携わり、事業費は国からの補助金を含めて1,050億円となりました。
今後は2025年までにユーラスエナジーなどが稚内市、豊富町、幌延町に建設する9か所の発電所と送電線を接続していきます。全ての風力発電設備が完成してつながると、総出力は540MW(0.54GW)となります。これは北海道全体の風力発電とほぼ同じ出力量になります。
また、地域に根差す風力発電事業を実現していくため、ユーラスエナジーは2023年4月に地域創生推進室を立ち上げました(7月からは地域創生推進部)。「地域貢献」ではなく「地域創生」という名前にしているのは、地域貢献だけではなく、地域の皆さんと共に発展したいと考えているためです。当社グループは道北の未来の子どもたちが風車のある「ふるさと」の風景を誇りに感じる日が来ることを思い描きながら、今後も再エネ事業に邁進していきます。

2023年5月16日 豊富町で竣工式を開催後、稚内市で記念パーティーを開催

現場の声
北海道北部風力送電株式会社
代表取締役社長
吉村 知己さん

道北地域の豊かな風の資源を活かすには、送電網の拡充は重要な課題です。本プロジェクトは実証事業という形で当社が送電網の整備を手掛けました。
ただし、これ“だけ”が正解ではありません。より広い視野に立って、より大規模な整備計画を検討していくことで、道北地域は、巨大な風力発電の潜在力を有する地域としてさらなる拡大と発展が期待できます。
当社は、連系する風力発電所が発電した電力を最大 限送電する機能をしっかりと果たし、地域の皆さまに信頼され、愛され、そして地域社会に貢献できる企業を目指していきます。

株式会社ユーラステクニカルサービス風力事業統括 第一統括事業所
宗谷事業所長

小林 義和さん

ユーラスエナジーは、苫前町で日本初の風力発電事業をスタートした後、各地で事業を展開しています。道北地域では長年の課題であった送電事業の実現に伴い、私たちのプロジェクトも続々と拡大しています。
私たちがメンテナンスする風力発電設備の機械室はマンション20 階に相当する高さにあり、スタッフがそこまで登って点検や部品交換などの作業を行います。また、猛吹雪や -20℃近くの過酷な自然環境と対峙する困難な場面も多々あります。
これから順次、風力発電所が稼働し、風力発電設備も続々と増えていきますが、発電所の安全な運営に努め、地域の皆さまに安心していただけるクリーンエネルギー事業を推進していきます。

2023年11月06日

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