プロジェクトストーリー国内海外

「未来へのコンパス」COCE制定から10年、グローバル7万人をつなぐ行動倫理規範の現在地

豊田通商グループがグローバル行動倫理規範(COCE)を制定してから10年。昨今インテグリティ経営の重要性が叫ばれていますが、当社では世界130カ国・地域、約7万人のメンバーが共有する価値基準として、COCEは国や文化を越えた事業活動の土台となってきました。策定メンバーと現在の推進担当者へのインタビューを通じて、その誕生の背景、世界各地で広がる浸透活動の歩み、そして次の10年に向けた展望を紹介します。

2026年9月11日

INTERVIEW

コンプライアンス・危機管理部
コンプライアンス統括G
グループリーダー
藤本 拓也さん

コンプライアンス・危機管理部
コンプライアンス統括G
井上 英二郎さん

コンプライアンス・危機管理部
コンプライアンス統括G
樋上 絢子さん

「ルールだから守る」ではなく「正しいことだからやる」
制定から10年、COCEが果たす役割

世界130か国に拠点をかまえ、連結従業員数約7万人を擁する豊田通商グループ。国籍も言語も文化も異なるメンバーが同じ方向を目指して歩む、そのコンパスとなっているのが「グローバル行動倫理規範(COCE)」です。
COCEの内容は、コンプライアンスだけでなく安全、環境、改善、人権、DE&Iにまでおよびます。しかしこれは、単に規則を並べただけのリストではありません。役職員一人ひとりが正しい行動を実践し、「人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業を目指す」という企業理念と、グローバルビジョン「Be the Right ONE」を実現するための、いわば「未来へのコンパス」。グローバルで多様な事業を展開する上で、なくてはならない価値基準です。

■グローバル行動倫理規範(COCE)

  1. 1私たちは、安全衛生活動に全力を傾け、安全で健康的な職場環境をつくります。
  2. 2私たちは、反汚職、独占禁止及び国際取引に係る法令を含む全ての適用法令を遵守します。
  3. 3私たちは、正確な財務情報を開示します。
  4. 4私たちは、全ての社内規程遵守に責任を負います。
  5. 5私たちは、誠実、正直、公明正大、公正透明に企業活動を行い、全てのステークホルダーとの信頼関係を維持、発展させます。
  6. 6私たちは、持続可能な社会の発展に貢献します。
  7. 7私たちは、環境に配慮した企業活動を追求、促進します。
  8. 8私たちは、創造と弛まぬ改善により付加価値を提供します。
  9. 9私たちは、人権を尊重します。
  10. 10私たちは、社内及び社会における多様性を尊重して受け入れ、違いを活かすD&I*に積極的に取り組みます。

* ダイバーシティ&インクルージョン(現DE&I)

全文はこちらから
https://toyota-tsusho.disclosure.site/ja/themes/15/#7

2016年7月のCOCE制定から10年。浸透活動は、今なお世界中のメンバーを巻き込みながら続いています。策定メンバーの一人である井上さん、コンプライアンス統括Gグループリーダーの藤本さん、世界各地で浸透活動の中核を担う樋上さんに、COCEの軌跡とこれからの10年について語ってもらいました。

井上:COCEを策定する前、グローバルに事業を展開する中で、世界中のメンバーが共有の価値基準のもとで行動できる基盤づくりが重要になっていました。そこで、アンケートを実施し、役職員の価値観や行動に関する考え方を調査しました。そこで見えてきたのは、「正しいこと」を上司から学び、それを実践するという社内文化です。しかし、国が違えば価値観も正しさの基準も変わります。判断を個々の役職員に委ねたままでいいのだろうかと考えました。
他のグローバル企業に目を向けると、多くの企業が行動規範や倫理規範を掲げています。ならば豊田通商でも、世界中の視点を取り入れた共通の規範を作ろうと考え、各拠点から策定メンバーを集めることになりました。

藤本:声をかけたのは、各社で信頼を集めている人たちです。役職に関係なく、倫理を語り合えるのは誰か、という観点で選びました。議論の場では、発言のニュアンスや熱量を汲み取るためにあえて通訳を入れず、全員が英語でやり取りしました。ネイティブは平易な言葉でゆっくり話し、英語が得意ではない人も臆せず発言し、お互いの意見を否定しない。そうした共通ルールのもとで、誰もが意見を発しやすい場づくりを進めていきました。

井上:共通ルールは決めましたが、開始前は「意見がまとまらないのでは」と不安もありましたよね。他企業の取り組みや国連グローバルコンパクトについて学びながらも、まずはメンバーの自由な声を聞こうという姿勢で臨んでみると、案の定、多様な意見が活発に飛び交いました。押し付けにならないように丁寧にすり合わせ、一つの言葉へと集約していく作業は簡単ではありませんでしたね。

樋上:とくに日本との違いを感じたのは「ルールだから従う」という発想です。ルールを決め、破った者を厳しく罰することで組織の規律を保つべきだという考えが根強い国も少なくありません。しかし、私たちが目指すCOCEはそれとは根本的に違います。自分の内側から湧き出てくる倫理観に基づき、正しいと信じているから行動するということが本来の姿だと考えました。

井上:COCE違反を処分の理由にしないと決めたのも、そのためです。当時の社長からも賛同を得て、明確な方針として打ち出しました。こうして自分たちの手で作り上げていったことが、策定メンバーの「自国の仲間にも知ってほしい」という原動力になりました。それぞれの国に帰った後も、ほとんどが浸透活動を担う推進メンバーとして活躍してくれました。日本のメンバーだけでは決してここまでたどりつけませんでした。世界中に同じ思いの仲間がいたからこそ、COCEが着実に浸透していったのだと思います。

各国で学び合い、広がり続ける浸透活動。
大切なのは、コンプライアンスとインテグリティ

せっかく作ったCOCEも、「作って終わり」では、時間の経過や役職員構成の変化とともに形骸化していきます。そうならないよう豊田通商グループでは、経団連が定める企業倫理月間に合わせ、COCEへの理解を深めていただくために、毎年10月に「COCE・コンプライアンスDays」を開催し、継続的な浸透活動を実施しています。
このイベントでは、ライブセミナーやeラーニング、経営陣の対話会記事配信のほか社員食堂でCOCEのキーワードからとった「COCEカレー」をはじめとした特別メニューを提供するなど多角的なプログラムを展開しています。2025年度にはセミナーやeラーニングへの参加者がのべ3万6千名にのぼりました。これは、初年度である2021年度の約9倍にあたります。
浸透活動は「COCE・コンプライアンスDays」以外にも各拠点でトップメッセージやコンプライアンス通信を定期的に発信するなど、その舞台は国内拠点にとどまらず世界へと広がり、各極・各国で工夫を凝らした活動が開催されています。

COCE・コンプライアンスDays in Japanセミナー&eラーニング接続数の推移

各拠点のCOCE・コンプライアンスDaysの様子

井上:制定直後に課題になったのが、豪亜極各国への浸透です。策定時は全ての国から参加いただくことができなかったため、日本から当室(当時)のメンバーが現地に直接出向き、各国の主要メンバーを集めてCOCEの成り立ちや意義を伝えました。重視したのは、対面で伝え、正しく理解してもらうことです。

藤本:その後、他の極、地域においても、現地の推進メンバーをサポートするために各国でトレーナーに対する研修なども実施し、一緒になって研修などの浸透活動を進めています。

井上:浸透を後押ししたのはCOCEの多言語化展開だと思います。12言語から始まり、1年後には18言語へ、現在は23言語にまで増えており、それも各国メンバーの「自分たちの母語で伝えたい」という思いが募り、自身で翻訳をサポートしてくれた結果です。これほど多くの言語で規範を整備している企業はあまりありません。

COCEの10か条をアイコンで表現

樋上:翻訳に加えて、十か条をアイコンで表現したポスターも効果的だったと思います。直感的に分かるアイコンなら、言語や文化を越えて世界中のメンバーに伝わります。社内からの評判も高く、研修の場でも理解を促すのに役立ちました。

藤本:COCE・コンプライアンス Daysも広がりを見せています。きっかけは、2019年にブラジルの事業会社が開催した1日限定のCOCEイベントです。これに着想を得て、日本でも同様のイベントを立ち上げることにしました。イベント期間は経団連の企業倫理月間に合わせて10月の1か月間とし、伝えたいことが次々にあふれてきました。その後、各国でも同様の動きが一気に広がっていきました。
うれしかったのは、本社の指示ではなく、各極の推進メンバーが「自分たちもやりたい」と自発的に動き始めたことです。ブラジル・日本発の取り組みはインドや豪亜極、東アジア、アフリカへと波及し、極をまたいだ合同開催の構想も生まれました。今、活動は策定メンバーの思いを受けた中堅・若手メンバーへと引き継がれ、互いの取り組みを学び合いながら各極独自のイベントへと発展しています。

樋上:年に一度開催する日本でのグローバル会議や、本社メンバーがゲストスピーカーとして登壇する各国のイベントなど、推進メンバーが顔を合わせる機会も増えています。その交流が刺激となり、浸透活動の熱量はますます高まっています。
こうした活動を進める中で印象的だったのが、ベトナムの現地スタッフの言葉です。「この価値観は自分たちも大切にしてきたもの。グループ共通の価値観として言語化してくれて本当にうれしい」と。一方で日本人駐在員からは「こんな当たり前のことを、今さらなぜ研修するのか」という反応もあり、この受け止め方の違いは私の気づきにもなりました。

井上:確かに「当たり前」は日本共通の感覚かもしれません。しかし、いざ問題が起きた時にその当たり前を貫けるのかと問われれば、決してそうではないと思っています。もちろん、頭で考えずとも自然とCOCEに沿った行動を取れるのが理想ですが、そのためにはやはり、意識してCOCEに立ち返ることが大切です。
その軸となるのが「インテグリティ」です。決められたルールに従うのがコンプライアンスなら、誠実さや高潔さを指すインテグリティは、誰も見ていなくても正しい行動をとる自律的な姿勢を意味します。豊田通商グループの一人ひとりがインテグリティに根ざして判断し、行動するようになれば、もっと世界に貢献でき、グループビジョンである「未来の子供たちにより良い地球を残す」ことにもつながっていくはずです。だから私たちは、COCEを「未来へのコンパス」と呼んでいます。

樋上:私も、そこに尽きると思います。「守るべきもの」としてコンプライアンスを伝えることも必要ですが、研修やワークショップ、COCE・コンプライアンス Daysは、インテグリティを育むという観点でも作り上げてきました。

藤本:目指すのは、組織としても個人としてもCOCEに沿った行動を実践することです。それこそがインテグリティ。ここから先は“実践の10年”にしたいと思っています。

グローバル会議でのCOCE旗への署名の様子(左:CHRO小泉/右:取締役社長 今井)

浸透活動に、終わりはない。
7万人を巻き込みながらCOCEを次のフェーズへ

社会環境の変化や多様な役職員の増加、企業に求められるガバナンス強化といった潮流に応じて、COCEの運用も継続的にアップデートしています。2025年10月には、COCEブックレットを改訂、視覚的に理解を促すデザインへと一新しました。
次の10年に向けた課題は、社内に育まれた「高い倫理観に基づき自律する組織風土」をさらに深化させていくことです。社会から信頼され持続的に成長するグループを目指し、COCEの実践と定着に向けた新たな試みを続けています。

樋上:多様な仲間たちとともに選ばれ続ける企業を目指すには、同じコンパスが必要です。豊田通商グループが新たな企業を迎え入れ、拡大を続けている今だからこそ、COCEの重要性はますます高まっていると感じています。

井上:これまで当社グループに新しく会社が加わった際、先方がすでに独自の行動規範を持っている場合は、双方の規範を一行ずつ突き合わせ、根本にある価値基準は同じだと確認しあった上で豊田通商グループのCOCEを受け入れてもらってきました。これから10年、20年とグループが拡大していく中でも、COCEは一つの企業理念を同じ価値基準で実現していくための土台になると思います。

藤本:私は、今井社長がいう「7万人の大旅団」のコンパスがCOCEだと思っています。役職員みんなが同じ方向に進み、自ら取るべき行動を考え、実践する。そんな仲間をどんどん増やし、ともに楽しみながら浸透活動を広げていきたいですね。

井上:策定当時の社長が発信したメッセージも、浸透に大きな影響がありました。「業績につながる案件であっても、COCEに反するならその機会を逃してもいい。COCEに則って判断したのであれば悔やまなくていい。」そう言い切ってくれたのです。「COCEはあらゆる指示に優先されるもの」というこのポリシーを引き継いでいけば、役職員は胸を張って正しい行動を取ることができるはずです。

樋上:実際、COCEへの優先度は着実に高まっています。イベントを告知する前から、「今年はいつやるのか」「どんなプログラムがあるのか」と問い合わせを受けることも増えました。皆さんが関心を持ち、率先して周知に動いてくれている姿を目にするたび、この10年での意識の変化を実感します。

井上:それでも浸透活動はまだ終わりません。「COCE=コンプライアンス」と捉えられがちですが、十か条を読むと分かるように、コンプライアンスに直接触れているのはほんの一部です。そのほかは安全やサステナビリティ、環境や人権、DE&Iと幅広く、経営そのものに直結しています。COCEはもっと広く、深い価値を網羅しているのだと、これからも粘り強く伝え続けていきます。

これまでの10年

2016
  • 各社トップメッセージ、ポスター、ブックレット等による周知
  • 各社COCE担当者のアサイン
  • ブックレットの他言語化が進み、12言語から18言語に
  • 自社の状況に応じた周知・浸透活動実施
  • 第1回COCE誓約活動で100%に近い誓約率
  • E-learning作成・グローバル展開
2017
  • Global Meeting / 極担当者集合
  • COCE周知・浸透活動
  • COCE誓約活動
  • 第1回日本国内A格連絡会開催
  • TTCコンプラ担当が各地で研修+トレーナートレーニング
    (TTI, TTVN, TTTC, TTMSB, TTSC, TTGC, TTHK, TTTWにて実施)
  • ブックレット18言語→23言語
2018
  • コンテンツ拡充
  • EA極にて研修+トレーナートレーニング
  • Global Meeting / 極担当者集合
  • COCE周知・浸透活動
  • COCE誓約活動
  • 第2回国内A格連絡会
2019
  • コンテンツ拡充
  • Global Meeting / 極担当者集合
  • COCE周知・浸透活動
  • COCE誓約活動
  • 第3回国内A格連絡会
  • TTCコンプラ担当が各地で研修+トレーナートレーニング
    (TTB, TTESA, TTR, TTVにて実施)
  • 南米にてCOCEイベント“COCE Day”を開催
2020
  • COCE担当者向けパッケージ作成・グローバル展開
2021
  • コンプライアンスDays in Japan(第1回)
  • 他極でも同様のイベント実施(北米、南米、インド)
  • COCE5周年CCOメッセージ動画のグローバル配信
2022
  • コンプライアンスDays in Japan(2年目)
  • 他極でもCOCE・コンプライアンスイベント拡大(北米、南米、インド、CFAO)
  • COCE周知・浸透活動
  • COCE誓約活動
2023
  • Global Meeting再開
  • コンプライアンスDays in Japan(3年目)
  • COCE周知・浸透活動
  • COCE誓約活動
2024
  • Global Meeting
  • COCE対話会(記事の配信)
  • COCE周知・浸透活動
  • COCE誓約活動
  • 国内A格連絡会
  • COCE・コンプライアンスDays in Japan(4年目)
  • 他極でもCOCE・コンプライアンスイベント実施(北米、南米、豪亜、東アジア、アフリカ)
2025
  • Bookletリニューアル
  • Global Meeting
  • COCE対話会
  • COCE周知・浸透活動
  • COCE誓約活動
  • COCE・コンプライアンスDays in Japan(5年目)
  • 極を越えたコラボイベント実施(タイ・東アジア・日本)
  • 他極でもCOCE・コンプライアンスイベント実施(北米、南米、豪亜、インド、東アジア、中米)
2026
  • 10周年に向けた活動
  • 一斉メール、サイネージの活用
  • COCEチョコ、スリーブ配布
  • 食堂スタッフがCOCEエプロンを着用
シェアする
  • X
  • Facebook
  • LINE
  • 国内
  • 海外
  • NEW
「未来へのコンパス」COCE制定から10年、グローバル7万人をつなぐ行動倫理規範の現在地
  • 国内
  • 海外
豊田通商が描く、グローバル・サーキュラーエコノミーの未来
  • 海外
アフリカと共に歩み、共に未来を創る
豊田通商の挑戦
  • 国内
  • 海外
未来の子供たちのために、豊田通商だからできる環境戦略
  • 海外
高品質な医療サービスでインドのWell-being(ウェルビーイング)な成長と発展に貢献