リスクマネジメント

方針

当社では「リスク管理基本方針」において「リスク」を「業務に不測の損失を生じさせ、当社グループの財産、信用などを毀損する可能性を有するもの」と定義し、業務から生じるさまざまな「リスク」について認識・検討を行い、経営の安全性を確保し、企業価値を高めるため、適切かつ統制された範囲内でリスクを取ることを基本的な考え方としています。
上記を遂行するために、当社グループのリスクを包括的に管理するERM・危機管理・BCM推進部を設置し、COSO-ERMフレームワークなどの考え方を参考に、当社グループ全体のリスクにつき、各部署・各グループ会社との連携により、連結ベースでのリスクマネジメント体制の構築、強化を図っています。財務系リスクの管理については、定期的にリスクアセットの計測を実施し、当社連結ベースでのリスクアセット総量とリスク許容量との均衡を図ることに取り組んでいます。また、下記8リスクを主要リスクと定義し、各々のリスク主管部署にて管理方針を策定、連結ベースでのモニタリング体制を構築し、これらのリスクに対処しています。また統合リスク管理委員会において、主要8リスクに関する連結ベースでのリスクの把握と問題の発見に努め、必要な対策を議論し、推進しています。

※主要8リスク…「市場リスク」「信用リスク」「事業リスク」「人事労務リスク」
「情報セキュリティリスク」「コンプライアンスリスク」「安全・環境リスク」
「カントリーリスク」

リスク管理体制

2021年3月期から従来のERM委員会を拡充し、統合リスク管理委員会を立ち上げました。統合リスク管理委員会は、主要リスクを主管するリスク主管部署およびその担当役員が出席し、定量・定性双方のリスクをより幅広く取り上げ、全社的なリスクの把握と問題の発見に努め、必要な対策を議論・推進しています。
具体的には、経営目標に関する全社的な重要リスクの特定及びその対応方針の協議・決定、 また取締役会へ全社的なリスクマネジメントに関する議題の提言を行っています。 担当する副社長、CFO(副委員長)で構成される会議を原則年4回実施し、連結ベースでのリスク状況及び対応方針についてCEO への提言や取締役会への報告を行っています。具体的には豊田通商グループ経営に重大な 影響を及ぼすリスクを明確化し、経営目標に関する全社的な重要リスクの特定及び対応方針の協議・決定、リスク管理プロセスの有効性検証を行い、取締役会へ提言します。取締役会では十分な審議を通じて適切な措置を講じ、具体的な対応に繋げるという継続的なプロセス(PDCAサイクル)を実施しております。

サステナビリティ推進委員会も統合リスク管理委員会と連携し、重要課題(マテリアリティ) に関わるESGリスクを管理し、取締役会に報告しています。

リスク管理の取り組み

1.事業投資リスク管理

(1)財務健全性維持に向けた取り組み

当社は、財務健全性を維持した安定的成長を目指して、「資産の効率化」と「資産の内容に見合った調達」を柱とする財務戦略を推進しています。
「資産の効率化」については、「最小限の資金で最大限の利益確保」を目指し、売掛債権回収の早期化、在庫の削減などによる運転資本の効率化や、不稼働・非効率固定資産の削減など、資金の効率化を進めています。これらの活動によって得られる資金を、より将来性の高い事業への投資や、有利子負債の圧縮に充当することにしており、「企業価値の向上」と「財務の健全性向上」の両立を目指しています。
資金調達については、金利変動リスクや為替リスクなどを踏まえながら「資産の内容に見合った調達」を基本方針とし、適切な流動性の確保と安定性の維持に配慮しながら、金融機関からの借入およびコマーシャルぺーパー、社債の発行を行っています。
またコロナの影響などによる、グループ各社の資金繰りに対応すべく、銀行借入枠もコミットメントラインを含め十分に確保し、事業に支障なきよう流動性にも留意しています。
また当社は、当期利益による継続したリスクバッファー(RB)の積み上げを行うことで、健全かつ安定した財務体質の維持を目指しています。リスクアセット(RA)総額を国ごとに把握し、定めた上限値の範囲内に抑えることで、リスクの過度な集中を防ぐカントリーリスク管理を行っており、その結果2020年3月期についても引き続きRAをRBの範囲内に収めることができました。
これらの継続的な取り組みの結果、2020年3月期はネットDER*は0.86倍、ROEは11.3%となりました。ネットDERは前期比0.03倍の悪化となりましたが、これは主に当期より、IFRS第16号「リース」を適用したことで、リース負債が増加した影響などによるものです。

*ネットDER:ネット有利子負債÷自己資本(親会社所有者帰属持分)

財務指標
19/3 20/3 増減
ROE 11.2% 11.3% 0.1%
ネットDER 0.83倍0.86倍0.03倍
(リース負債除く)
0.83倍
0.82倍
0.86倍
0.77倍
0.03倍
▲0.05倍
RA/RB 0.8 0.8 0.0
ネット有利子負債/自己資本(親会社所有者帰属持分)/ネットDER

(2)投資サイクルの運用

会社の持続的成長には、リスクを適切に管理し、投資を確かな成果へと結びつけることが大切であると考えています。当社では短期的な利益を狙うような投資ではなく、中長期的に事業を育て、当社グループのバリューチェーンの拡大・強化につながるような戦略的投資を基本としており、投資の検討から実行に至る各段階において、社内の知見・経験を集結し審議を重ねる体制を整えています。また投資実行後のフォロー体制を充実させ、事業会社の課題解決や資産入れ替えに取り組んでいます。
新規投資案件については、方針会議、投資戦略会議で大きな方針を決定、個別案件は投融資協議会・投融資委員会で事業計画をスクリーニングの上、機関決定を行っています。CFOが議長を務める投融資協議会では、当社独自の指標であるTVA(資金効率指標)*1、ならびにRVA(リスク収益指標)*2を用いるとともに、当社独自の環境チェックシートを用いて、気候変動をはじめとした環境リスクも評価するなど、案件を複数の観点から定量的に検証しています。また国内外の一部の関係会社には、投資意思決定の迅速化を目的に、投資権限の委譲を進めています。
投資実行後については、課題のある案件について、コーポレート部門と営業本部共働で課題の進捗管理・支援を継続的に行っています(チェック&サポート活動)。また、営業本部での自主的な業績モニタリングに加えて、コーポレート部門にてBS/PL基準*3によるモニタリングも実施。定量基準を下回った場合には、その事業の継続可否を検証・判断し、撤退か再建かの判断を行っています。
今後もこの投資サイクルを回していくことで、適切な経営資源の配分と資本効率の向上を目指します。

*1 TVA: 投下資本に対する収益規模が確保されているか検証する指標。ROICの考え方に基づく

*2 RVA:リスクに見合う収益が確保されているか検証する指標

*3 BS 基準:資本欠損率50%以上

PL 基準: 当期利益2期連続赤字、あるいは投資時計画値より2期連続30%以上の下振れの場合に、再建、撤退を判断

2.信用リスク管理

取引先の財務内容をもとにした当社独自基準の格付(8段階)を行い、売掛金・前渡金など取引の種類ごとに限度枠を設定しています。なお、低格付の取引先に対しては、取引条件の見直し、債権保全、撤退などの取引方針を定め、個別に重点管理を行い、損失防止に努めています。

3.市場リスク管理

(1)商品リスク

商品価格変動リスクに晒される非鉄金属・原油・石油製品・ゴム・食料・繊維などの相場商品取引については、ポジション限度枠を設定し、限度枠遵守状況の定期的なモニタリングを行い、価格変動のリスクを低減する施策を講じています。

(2)外国為替リスク

為替変動リスクに晒される外貨建ての取引については、為替予約などによるヘッジ策を講じています。やむを得ない理由でヘッジできないものについては、ポジション限度枠を設定し、実績を定期的にモニタリングする中で、為替変動リスクを低減する施策を講じています。

4.環境リスク管理

当社グループの事業体は、環境方針および生物多様性ガイドラインに基づいて運用されています。既存の事業体については、設備ごとの環境汚染リスク度と、作業現場の管理レベルを定量評価し、環境汚染リスクの低減に取り組んでいます。また、環境法令の順守評価を半年ごとに実施し、さらに 内部監査、外部審査で重点課題の法令順守状況をダブルチェックしています。

5.危機管理(セキュリティ対策)

(1)海外危機管理

2013年1月に発生したアルジェリアでのテロ事件を受け、同年4月に専門組織として人事部内にセキュリティ対策室を設置。2017年4月には総務部減災・BCM推進室、2019年4月にはERM部と統合して、ERM・危機管理・BCM推進部が設立されました。社員教育としては、海外赴任者、帯同家族を対象とした「海外赴任前説明会」に加えて、海外特有の危険を実際に体験する訓練も実施しています。

① 海外経験の浅い若手社員を対象に「海外出張時『基本動作』確認講習会」

② ハイリスク国の駐在員を対象に「テロなどへの対処訓練」また、セキュリティ情報の収集・分析強化を行い、海外危機管理ホームページを通じて、国内外のグループ社員に情報発信しています。医療面では、海外滞在先から電話による医師への医療相談や緊急医療搬送などに24時間365日対応する体制を敷いています。

(2)新型コロナウィルス感染拡大

2020年1月E本部(緊急対策本部)を立ち上げ、3月当社として緊急事態宣言を発出しました。国内外主要拠点をつなぎ、以下の情報共有、対応方針決定を行っています。
①社員の安全 ②地域/社会の安全 ③事業に与える影響

6.紛争鉱物への対応

コンゴ民主共和国(DRC)及び周辺9か国で採掘される鉱物資源が、人権侵害・ 環境破壊などを引き起こしている武装勢力の資金源となっていることが全世界で 懸念されています。米国上場企業を中心にグローバルにサプライチェーンを さかのぼり、これらの紛争鉱物が含まれていないか確認する調査が2013年から 毎年実施されており、当社もサプライチェーンの一員として、積極的に調査に参加しています。