IR情報

CFOメッセージ

CFOメッセージ
成長投資と
財務規律を両立し、
持続的な企業価値向上を
目指します
取締役副社長、CFO*
岩本 秀之
*Chief Financial Officer

着実な利益成長と収益基盤の強化

2026年3月期の親会社の所有者に帰属する当期利益(以下、当期利益)は3,705億円となり、5期連続で最高益を更新することができました。2026年3月期末の中東情勢の緊迫化による物流への影響や一過性の損失を織り込みながらも最高益を更新できたことは、大きな成果だったと受け止めています。

今の豊田通商は特定の営業本部だけが成長を牽引するのではなく、各営業本部がそれぞれ着実に利益を積み上げており、収益基盤の強さを感じています。近年は地政学リスクの高まりやサプライチェーンの再構築等、私たちを取り巻く環境が大きく変化しています。前期も米国の関税政策の変化による影響が懸念されましたが、当社への影響は最小限にとどまり、むしろ、新たな課題への対応を通じて、お客さまから期待される役割が一層高まりました。

財務面においては、バランスシートを意識した運営を進めました。2026年3月期末には物流混乱による出荷遅延や戦略的な在庫積み増しにより棚卸資産が増加したものの、営業キャッシュ・フローは5,000億円近い水準を確保しました。キャッシュ創出力こそが事業の実力を示す重要な指標であり、成長投資と株主還元を支える重要な原資となっています。

加えて、資本政策については、前期より重要課題として掲げていたトヨタグループ内での株式持ち合いの整理に取り組み、2026年3月期に(株)豊田自動織機との株式の持ち合い解消を実行しました。これにより、政策保有株式の大幅な圧縮が進み、バランスシートの一層のリーン化と資本効率の向上に向けた大きな一歩を踏み出すことができたと考えています。

オーガニック成長による当期利益4,500億円の達成

2025年4月末に公表した中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)(以下、現中計)を、これまでのローリングから計画期間中は固定化する方針としました。外部環境の不確実性が高まる中にあっても、目標達成に強いコミットメントをもって取り組んでいきます。

現中計2年目の2027年3月期については、当初、地政学リスクやサプライチェーンの変化を踏まえ、慎重を期して保守的に4,000億円を計画していましたが、第1四半期の実績および足元の事業環境を勘案し、4,300億円に上方修正しました。

現中計の最終年度である2028年3月期に当期利益4,500億円を達成するという目標は、各営業本部における利益の積み重ねにより、オーガニックに達成可能であると考えています。既存事業では、新たな大規模投資に依存せず、サービスや機能の付加価値を高めることで収益性の向上につなげています。

こうした利益成長やキャッシュ創出力を支えているのは、当社がこれまで培ってきた事業基盤です。当社はモノを動かし、物流をつなぐだけでなく、さまざまな機能を組み合わせながら、お客さまの課題解決を通じて価値を創出してきました。こうした現場に根差した事業基盤こそが当社の強みであり、環境変化への対応力の源泉になっています。

社長・CEOの今井が掲げる「生命体型サプライチェーン」は、こうした当社の特長を端的に表しています。1つのルートに依存するのではなく、その時々の状況に応じて最適な選択肢を見出し、複数の機能を組み合わせながら価値を創出していく。このような柔軟性と自律性を持つ組織が、環境変化の中でも持続的な価値創出を支えています。

異能領域への投資と事業ポートフォリオ改革が次の成長を創る

当社は現中計において、4つの異能領域を中心に累計1.2兆円の投資を計画しており、事業特性に応じたROICを基準に、規律ある投資を進めています。異能領域として、アフリカを起点とするインド、ブラジル含むゴンドワナ経済圏、サーキュラーエコノミー、ネクストモビリティ、再生可能エネルギーの4つを柱としています。

最も大きな成長余地を持つと考えているのが、アフリカを起点とするゴンドワナ経済圏です。当社はアフリカ全域に事業基盤を有し、自動車販売に加え、ヘルスケア、コンシューマー、グリーンインフラへと事業領域を広げながら、売上収益約1.9兆円、当期利益940億円を超える規模へと成長してきました。現中計では、ゴンドワナ経済圏という考え方の下、アフリカ、インド、ブラジルをつなぎ、新たな商流の創出を進めていきます。インドでは自動車を中心としたモノづくりに加え、ヘルスケア分野の拡大を進めています。また、ブラジルでは北部港湾を基盤とした食料バリューチェーンの強化に取り組んでいます。

サーキュラーエコノミーも大きな可能性を持つ領域です。当社は早くから、資源循環分野へ経営資源を配分してきました。近年はバッテリーをはじめ、リサイクルへの注目が高まっています。この分野は今後も大きく成長し、当社が先駆者として価値を発揮できると考えています。

ネクストモビリティでは、車載半導体分野で培ってきた知見を基盤に複数の製品や技術を組み合わせ、お客さま毎のニーズに応じたソリューションを提供しています。品質管理や在庫管理、設計機能まで含めた価値提供ができることは当社の強みであり、AIやソフトウェアの活用が広がる中で、大きな成長機会があると考えています。

再生可能エネルギーについては、収益性を重視しながら取り組みを進めています。特にアフリカでは高い投資収益率が期待できる案件も多く、有望な投資先の一つと考えています。また日本国内では、既存設備の効率化や蓄電池、データセンターとの連携等を通じて収益性の向上に取り組んでいます。

一方で、異能領域への投資を進めるだけでなく、事業ポートフォリオの見直しも継続していきます。例えば、当社は石油・石炭事業や火力発電事業から撤退し、経営資源を成長分野へシフトしてきました。現在も収益性の低い事業の見直しを進めており、撤退・再編の判断基準を見直す等、新陳代謝を加速しています。今後もより成長性・収益性の高い領域へ経営資源を再配分していきます。

親会社の所有者に帰属する当期利益の推移と、2028年3月期計画4,500億円に向けた増減要因を示したグラフ。
事業領域別ROICターゲット。Nature Value 5.0%以上、Social Value 10.0%以上、Core Value 15.0%以上。2026年3月期のROICはそれぞれ2.4%、9.3%、17.7%。

財務規律を軸に、資本配分を最適化

2028年3月期の全社ROE目標については15%を掲げています。目標達成に向けて、リターンの追求に加え、資本効率の向上にも取り組んでいきます。

まず、リターンの追求という点では、従来にも増して積極的な投資を実行していきます。当社は現中計において3年間累計1.4兆円の営業キャッシュ・フローを見込んでおり、年間5,000億円規模のキャッシュを安定的に創出できると考えています。こうしたキャッシュ創出力を背景に、成長投資の原資を着実に積み上げていきます。

その上で、財務面では規律を重視した運営を基本としています。指標となるネットDERについては0.8倍を上限として管理しており、将来の大型投資やM&Aにも機動的に対応できる財務余力を確保しています。こうした規律の下でも、現中計期間に累計1.2兆円の投資を進めながらROE15%の達成は可能であると考えています。

一方で、株主還元については、2028年3月末に総還元性向40%以上を達成目標(KPI)としています。累進配当による安定的な還元を継続するとともに、株式売却等による資金創出を踏まえ、2026年6月末に6,636億円の自己株取得を実施しました。自己株取得については、これまで成長投資に比べ優先度を低く考えてきましたが、ROE15%の達成に向けた重要な手段の一つと位置付けており、今後も成長投資とのバランスを見極めながら活用していきます。

政策保有株式についても、継続的に見直しを進めています。

2026年3月期には、当社の政策保有株式の大きな割合を占めていた(株)豊田自動織機との株式持ち合い解消を実行したことにより、政策保有株式比率は大きく低下しました。これは、資本効率の向上に向けた重要な一歩であったと捉えています。

今後も事業戦略上の意義や取引関係への貢献に加え、資本コストを上回る価値を生み出しているかという観点から、保有の妥当性を継続的に検証していきます。

これらの取り組みを通じて財務規律を維持するのは、単に数字を整えるためではありません。自らコントロールできる事業や資産を基盤とし、経営の実態を的確に把握しながら、機動的に意思決定できる財務基盤を築いていきます。

成長投資と株主還元をバランスよく実行しながら、資本効率の向上と持続的な企業価値の拡大を実現していきます。

4つの異能領域と基盤事業への投資配分。2026年3月期実績と2027年3月期~2028年3月期の累計投資計画、および2028年3月期の投資計画1兆2,000億円を示した図。
キャピタルアロケーションにおけるキャッシュ・インとキャッシュ・アウトの内訳および、株主還元・成長投資・財務健全性に関する目標を示した図。

対話を通じて、企業価値への理解を深める

投資家との対話は、企業の立ち位置を客観的に見つめ直す重要な機会だと考えています。対話を通じて、市場が当社をどのように見ているのか、何を期待し、どのような点が十分に伝わっていないのかを把握することができ、開示や説明の改善に加え事業や戦略を見つめ直し、経営を磨いていくための大きなヒントにもなっています。近年は、当社の事業や戦略が以前より理解しやすくなったという声をいただくようになりました。アフリカ事業については、以前は成長性やリスクに対するさまざまな見方がありました。しかし、事業を着実に拡大し、成果を積み重ねてきたことで、当社の成長性や強みが徐々に伝わってきたと感じています。モビリティ分野についても、台数に依存しない収益構造が、半導体やデバイス化の進展、物流機能の高度化を通じて理解されつつあります。

こうした取り組みが少しずつ市場にも伝わり、当社の事業や成長性についても、見方が変わってきたことを実感しています。こうした評価の変化は株価の上昇にも表れている一方で、その期待に見合う成果を継続的に創出していくことが不可欠です。市場からの期待に応え続けることが、持続的な信頼の獲得につながると考えています。

当社は今、現中計で掲げた目標の実現に向けて、着実に歩みを進めています。総仕上げに向けて、社長・CEOをはじめ経営陣一同、強いコミットメントを持って目標達成に取り組んでいきます。株主・投資家の皆さまには、引き続き当社の成長にご期待いただき、応援していただければ幸いです。

株主還元方針と配当金・配当性向の推移および2028年3月期の目標を示したグラフ。累進配当18期連続増配予定と総還元性向40%以上を掲げる方針を示している。