プロジェクトストーリー国内

生活資材の再資源化による循環型社会実現への挑戦
~リーディングサーキュラーエコノミープロバイダーを目指して~

資源の有効活用と再利用の取り組みは、環境負荷軽減と効率的な経済活動の推進を両立する手段の1つ。豊田通商グループは、自動車分野で培ってきた金属類のリサイクル事業をさらに磨き上げるとともに、プラスチック類のリサイクルにも挑み、循環型社会(サーキュラーエコノミー、CE)の実現に貢献します。

便利の裏側にある廃プラ処理の問題

色、形、強度などの面で成形の自由度が高いプラスチックは、容器、ペットボトル、自動車や家電の部品などさまざまな用途で使われ、いまや私たちの生活で欠かすことができないものとなりました。
国内では963万t(2022年実績)のプラスチックが生産され、841万tが消費され、822万tが廃棄プラスチック(廃プラ)、つまりゴミとして排出されました。
一方で、大量の廃プラは処理方法が課題です。適切に処理されなかった廃プラが川などから海に流入し、世界で1億5,000万トンのプラスチックごみが浮遊していると推計されています。これらプラスチックごみは漁業や観光業にも影響し、世界で年間130億ドルの経済的損失を発生させているといわれています。

燃やす以外の処理が重要
企業や個人もプラスチック問題を考える時代

国内の廃プラ処理を見てみると、リサイクル率は86%と高いのですが、その多くは焼却して熱源などにする熱回収です。また、廃棄物を原材料として再利用するマテリアルリサイクルの多くは海外輸出されています。プラスチックはナフサ(粗製ガソリン)が主な原料ですから、燃焼時にはCO2が発生します。カーボンニュートラル実現のために熱回収以外の方法が重要です。
国の取り組みでは、海洋プラスチックごみやCO2排出などの課題に対応するため、2020年に省庁横断で「プラスチック資源循環戦略」を策定。2022年4月からは、プラスチック製品の設計、製造、販売、廃棄の全てにおいて3R(Reduce・Reuse・Recycle)とRenewableを推進することを目的として、プラスチック資源循環促進法(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)が施行されました。
このような潮流は世の中にも浸透し、民間企業や個人レベルでもプラスチックを有効利用する取り組みが広がっています。エコバッグの活用、プラスチックストローから紙ストローへの置き換えなどがその例といえるでしょう。そして今、使い終わった製品を元の製品に戻す水平リサイクルが注目されています。この水平リサイクルの代表例としてペットボトルが挙げられます。
燃やす以外にも国内での資源循環を推進することや水平リサイクルの促進が重要です。

自動車分野のリサイクルに強み

豊田通商グループは資源の有効活用を重視し、リサイクルの推進に取り組み続けています。その歴史はプラスチック問題が注目されるはるか前、モータリゼーション黎明期の1970年代にまでさかのぼります。
例えば、自動車のリサイクルを手掛ける豊田メタル株式会社は1970年設立。使用済み自動車(ELV)をシュレッダーで破砕して鉄・非鉄スクラップを選別する会社です。現在は自動車リサイクル研究所(トヨタ自動車株式会社から受託)を通じてリサイクルしやすい自動車の設計提案なども行っています。
他にも、産業廃棄物の中間処理を行う豊田ケミカルエンジニアリング株式会社(73年設立)、ELVからのレアメタル回収などを手掛ける豊通リサイクル株式会社(85年設立)などを通じたリサイクル事業で3R(Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル))を推進。海外でも、北米、欧州、中国、南アフリカなどで各社の事業と機能を組み合わせながら自動車産業のリサイクル・バリューチェーンと資源循環モデルを確立してきました。

実績と知見を生かし資源の循環経済を牽引

このような歴史の中で培ってきたネットワークを生かすとともに、リサイクル事業で得た知見をモノ作りの設計に反映させるリバース・エンジニアリングを実現しながら、当社グループは資源の循環型社会(サーキュラーエコノミー、CE)を牽引するリーディングCEプロバイダーを目指しています。
世界中でカーボンニュートラル(CN)に向けた取り組みが進む中、当社グループは未来の子供たちへより良い地球環境を届けることをスローガンに掲げ、全社をあげて、CN実現に向けた取り組みを進めています。当社グループならではの強みを持つ5つの領域(以下)を設定。リーディングCEプロバイダーとなるための強みを磨き上げながら、資源循環のさらなる推進に取り組んでいます。
このように当社が過去から培ってきた資源循環の経験を生かし、プラスチックのリサイクルやペットボトル、衣料品など生活資材のリサイクルも視野に入れ、取り組みを開始しています。

CN実現に向けて取り組む5つの領域

強みを持つ5つの領域を
中心に、
カーボンニュートラル
実現をけん引します

再生可能エネルギー・
エネルギーマネジメント

バッテリー

水素・代替燃料

資源循環・3R
(リビルト、リユース、リサイクル)

Economy of Life
(エコノミー・オブ・ライフ)

より大きな視点で資源循環に取り組む

日本初の技術と日本最大級の工場で
使用済みプラスチックを再資源化

静岡県御前崎市

株式会社プラニック

プラスチックの材料にはポリプロピレンやポリエチレンなどいくつかの種類があり、再資源化のためには材料を選別する必要があります。しかし、リサイクル材料として回収する廃プラは複数の樹脂が混在しているミックスプラスチックで、選別が困難なため、プラスチックのマテリアルリサイクルが進まず、熱回収で処理されてきました。
当社グループはこれまで熱回収されてきたプラスチック材料をマテリアルリサイクルするために、静岡県御前崎に国内最大級のプラスチックのリサイクル工場を建設しました。
2022年10月に本格稼働を開始したこの工場は、ヴェオリア・ジャパン株式会社、小島産業株式会社、当社の3社共同で設立した株式会社プラニックが運営。自動車や家電から出る使用済みプラスチックの他、物流センターやショッピングセンターから回収する梱包資材、使用済みパレット、コンテナなどに使われたプラスチックを収集し、再びプラスチック原料として再資源化します。
プラニックは、プラスチックの「Car to Car」リサイクル技術を持つGalloo Plastics S.A.から技術供与を受け、日本で初めて高度比重選別技術を使うリサイクル方法を確立。ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABSをフレークやペレットに加工し、自動車、家電、日用品、物流資材の原材料に使用可能となる高品質な再生プラスチックを生産し、CEを実現します。

プラニックとサーキュラー・エコノミー

ペットボトルを再びペットボトルに戻す
水平リサイクル工場を稼働

滋賀県日野町

豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社

より生活に近い分野ではペットボトルの水平リサイクルにも積極的に関わっています。
日本では販売されたペットボトルの96.7%が回収され、88.5%が国内または海外でリサイクル(熱回収込みの有効利用率は98.0%)されています(2020年度)。しかし、そのほとんどは食品トレイやポリエステル綿などの繊維として使われているのが現状。ペットボトルのCE確立のためにはペットボトルから再びペットボトルに水平リサイクルするボトルtoボトルの割合を高めていくことが求められています。
この課題解決に挑むため、当社はウツミリサイクルシステムズ株式会社、株式会社中央倉庫などと共に豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社を設立。滋賀県日野町にペットボトルの水平リサイクル工場を建設しました。2021年から段階的に稼働を開始したこの工場では、収集したペットボトルをリサイクルし、飲料用ペットボトルをつくるための原料であるペレットを生産します。工場のフル稼働後は年間約4万トンの飲料ボトル用リサイクルペット樹脂の生産を実現し、ペットボトルの循環モデルを進化させていきます。

ペットボトルリサイクルの現状
ペットボトルリサイクルの現状
国内再資源化と海外再資源化
国内再資源化と海外再資源化
ペットボトル再資源化の流れ
ペットボトル再資源化の流れ

その他の資材・素材の再資源化への取り組み

アルミの水平リサイクルで
紙やプラスチックの置き換えを狙う
大量生産、大量消費が続く
アパレル業界にもリサイクルで変革を

環境と事業の2つの視点で資源循環を推進

豊田通商グループは、中期経営計画にて掲げている4つの重点分野の1つとして、廃棄物を再資源化し生産につなげる「循環型静脈事業」を成長戦略としています。また、モノづくりに関わるグローバルな商社として、自然界にある資源の確保、安定供給、再生産によってあらゆる分野の循環モデルを構築し、環境負担を軽減していくことが大切な使命であると考えています。
豊富な実績がある自動車分野のリサイクル事業を推進、進化していくことはもちろん、廃棄される生活資源の資源化にも積極的に関わりながら、CNを実現するリーディングCEプロバイダーを目指し続けます。

循環型静脈事業は重点分野の1つ
循環型静脈事業は重点分野の1つ

2022年12月12日

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