豊田通商と関西学院大学 革新的な炭化ケイ素半導体ウエハー製造プロセスを共同開発
~高品質かつ効率的な量産化技術の確立を目指す~
- (旧)機械・エネルギー・プラントプロジェクト
2019年09月27日
豊田通商株式会社(以下、豊田通商)と学校法人関西学院(以下、関西学院大学)は、次世代半導体材料であるSiC(炭化ケイ素)ウエハーの生産技術が抱える現場の課題を解決するため、革新的技術の共同開発を進めます。
1.SiCとは
現在、半導体の基板材料にはSi(シリコン)ウエハーの使用が主流ですが、Siの性質上、電力ロスが発生します。そのロスを大幅に低減できる次世代の省エネルギー材料がSiCです。SiCにはSiの3倍のバンドギャップ*1、4倍の熱伝導度*2、9倍の絶縁破壊電界*3を持つ特性があり、SiCウエハーは、電力利用の効率化および冷却装置の小型化を可能にします。自動車・鉄道・家電・電力分野など幅広い分野でのSiCウエハーの実用化が始まっており、中でも、EV・HEVなどの電動車両への活用のニーズは高く、期待されています。
2.従来のSiCウエハー製造の課題(次頁図1参照)
高性能なSiCウエハーですが、品質と製造コスト面で課題があります。SiCインゴット内にもともとひずみなどの欠陥(原子配列の乱れ)が多く存在しています。さらに従来の製造プロセスでは、表面を機械加工する際に、傷などの欠陥が発生することにより性能が発揮できないことがあります。また従来の機械加工では、複数の工程が必要で、コストの削減が進まず、SiCウエハー普及の妨げとなっています。
3.課題解決に向けた豊田通商と関西学院大学の取り組み
関西学院大学は、「グリーンモビリティ材料開発プロジェクト」(リーダー: 理工学部 金子 忠昭教授)を重点的に推進しており、SiCウエハー表面の原子配列を自律的に制御するナノ加工プロセス(次頁図2参照)を開発し、その技術を保有しています。
豊田通商と関西学院大学は、SiCウエハーの持つ課題解決のために、実用化レベルでのSiCウエハーのナノ加工プロセス技術の確立と、量産化に向けた製造プロセスの開発を推進しています。
豊田通商は、専門人材や情報の提供、知財マネジメント、マーケティングを行い、関西学院大学と共同でナノ加工プロセス技術の市場投入に向けたプラットフォームを構築し、自動車分野などさまざまな産業における高品質SiCウエハーの普及を目指します。
4.成果発表
2019年9月29日から10月4日に京都で開催される「ICSCRM2019(SiC及び関連材料に関する国際会議2019)」において、共同開発成果の発表ならびにブース展示を行います。
*1 バンドギャップ :高温に耐えることを示す指標であり、高いほど高温動作に適応可能となる。
*2 熱伝導度 :熱を逃がす性能を示す指標であり、数値が高ければデバイスの冷却が容易になる。
*3 絶縁破壊電界 :電圧をかけたときに物質が壊れる寸前の限界値のこと。値が大きいほど物質が壊れにくいことを示し、製品を小型にすることが可能となる。
図1 従来のSiCウエハー製造の課題
図2 原子配列を自律的に制御するナノ加工プロセス
リリースに掲載されている情報は、発表日現在の情報です。
発表日以降に変更となる場合があります。あらかじめご了承ください。