ブックタイトル豊田通商70周年史

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概要

豊田通商70周年史

コラム幻に終わった政府の指定商社制朝鮮特需後の深刻な不況を受け、当時の政府が進めた対策の一つに指定商社制がある。大手商社の体質強化を目的に指定商社制を採用し、中小商社には一定の線引きをして営業活動を抑制しようというものであった。これが採用されれば、基盤整備が遅れている当社への影響は必至だったため、東京支店常務室に情報収集の担当者を置き、調査活動や政府、関係方面への働きかけを行った。1955(昭和30)年4月の取締役会では、タイのビシダ商会オーナー・スーチンとの現地合弁会社の設立やロサンゼルスでの現地法人設立、マニラでの代理店の設置、台湾・香港の駐在員事務所の支店への昇格、羊毛業務の推進といった具体策が打ち出されたが、これらはすべて政府の指定商社制導入への対応であった。最終的に各方面からの反対が多かったこともあり、指定商社制は採用されることなく幻に終わった。その後は通商産業省(現経済産業省)によって地域別に輸出入組合を作る新輸出入取引法が国会に提出されたが、これも成立しなかった。こうした政府の動きは1960年代以降、当社の海外志向を加速させる一因となった。62