ブックタイトル豊田通商70周年史

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概要

豊田通商70周年史

希少金属の中国依存から脱却せよアルゼンチンで始まったリチウム資源開発2000年半ば、希少金属に関する、ある現実が進行していた。EVやHEVなどのエコカーに欠かせない電池やモーターに使われるレアアースのほとんどを、日本では中国に依存していたことだった。日本はレアアースの世界最大のユーザーだったが、その中国依存度は90%以上にもなっていた。それがいかに危ういことであったかは、2010(平成22)年8月、尖閣諸島問題によって中国がレアアースに輸出規制をかけ、日本のユーザーが苦慮したことで思い知らされることになった。同じく電池やモーターに欠かせないレアメタルと合わせ、希少金属をいかに確保していくか。天然資源が乏しく、海外に頼らざるを得ない日本にとっても喫緊の課題になっていた。エコカーに力を入れていたトヨタ自動車も強い危機感を持った企業の一つであった。そのトヨタが豊田通商に期待したものこそ、「レアアースで脱・中国を図り、レアメタルの確保も進める。そのための希少金属の確保に向けた資源の上流開発」であった。当社は2008年12月、金属本部の金属企画グループから金属資源部を発足させたが、同部が与えられたのは、そうしたミッションであった。リチウムは電池に欠かせない希少金属の一つである。そのリチウム資源の確保を目指してアルゼンチンでのプロジェクトが始まったのが2010(平成22)年。オーストラリアの資源会社と組み、リチウム資源開発事業のFS契約を締結し、2012年にはアルゼンチン北西部フフイ州オラロス塩湖開発プロジェクトの権益のうち25%の取得に成功した。アルゼンチンの資源埋蔵量の豊富さと採掘の容易さは魅力的であり、それだけに同国のリチウム資源に注目していたライバルは多く、日系だけでなく中国や韓国の企業も資源開発を狙っていた。にもかかわらず、どうして当社がパートナーとして選ばれたのか。金属資源部のメンバーは振り返る。「短期的な利益を狙っていたライバルとは違い、我々は長期的な取引関係を築き、継続的なビジネスを望んでいるという姿勢を相手側に伝えられたことに加え、提示したファイナンスのパッケージも高い評価を得ました」。当社であれば自動車分野という安定したユーザーが確保できることも大きかったと話す。事業化への道のりは平坦ではなかった。経済危機を経験したアルゼンチンでは外資への警戒感が強く、求められる現地調達率が高いのである。「輸入制限が厳しいため、例えばあまり性能のよくないアルゼンチン製ポンプでも使わないといけないし、故障しても簡単に部品が交換できないわけで、その点でも苦労しました」(金属資源部)。2014年12月、炭酸リチウムの生産に着手し、翌2015年から日本や欧州への出荷を開始した。オラロス塩湖テーマ編197