ブックタイトル豊田通商70周年史

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概要

豊田通商70周年史

“かつての日本”がそこにあった発端はNEDOからの研究委託目の前に広がっている情景はある程度予想していたこととはいえ、やはり驚きだった。北京にある自動車解体工場の一つ。高く積み上げられた使用済み自動車が雑然と並べられ、一瞬ゴミかと見間違うかのような中古部品。その間を制服やヘルメットを被らずに歩き回る工員。もちろん機械化はされておらず、ほとんどが人海戦術による手作業。話を聞くと中国では他の解体工場も似たようなものだという。視察に来た金属本部の社員は衝撃は受けたものの、その一方でこうも感じていた。「かつて日本の解体業も同じような状況だった。雑然としていて無秩序。日本はそのレベルから出発してリサイクル事業を立ち上げ、再利用するためのシステムを構築し、軌道に乗せてきたのだ」と。かつての日本と同じような状態にある中国の解体業。当社の金属本部は日本で蓄積した再利用システムの技術やノウハウをそ使用済み自動車リサイクル事業の海外展開の発端は、当社と昭和メタルがNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)から「アジアにおける先進的な資源循環システム国際研究開発/先進的自動車リサイクルシステム」の研究を受託したことにある。昭和メタルは自動車解体事業を行っており、当社は豊田メタルをはじめとするグループ会社とともにELV(End ofLife Vehicle)に関する自動車リサイクル事業を手掛けてきた。その実績とネームバリューは国内でもトップクラス。この両社がタッグを組めば、ELVの適正処理事業を海外で展開していくことは十分に可能であるとの判断がなされた。その最初の進出先となったのが中国であった。金属本部のメンバーが現地で目撃したように、中国では手作業での人海戦術が主であり、とりわけ安全・環境対策で遅れが目立つ。そこに当社と昭和メタルのノウハウを注ぎ込もうということになった。こに移植しようとしていた。日系企業として初めて資本参加中国で最大級の市場規模を持つ北京。そこで解体事業のライセンスを持つ企業のうち、交渉先として選んだのは北京博瑞聯通汽車循環利用科技有限公司であった。なぜ、同社だったのか。親会社である祥龍集団と新車ディーラー事業および中古車流通事業で合弁の実績があり、信頼の置けるパートナーであったことと、もう一つは同社が工場の新築移転を計画していたことにあった。既存工場の視察から、安全管理や環境対策が全くと言って良いほどなされておらず、解体スクラップヤードテーマ編193