豊田通商株式会社 CSRレポート2012
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ヨードはX線造影剤、殺菌剤などの原料として医療分野に欠かせない資源です。世界人口の伸びとともに需要が拡大しており、豊田通商ではその確保のため、1970年代からヨードを採掘・生産・販売する事業に取り組んできました。 ヨードの主たる産地は、日本、米国、チリの3ヵ国にほぼ限られています。当社は日本および米国で年間2,000トンのヨードを採掘・生産し、大手造影剤メーカーの生産拠点がある米国とヨーロッパを中心に販売しています。 近年では、中国やインドなど新興国で医療ニーズが高まっていることから、ヨードの市場は年4%のペースで拡大しています。これら新興国では造影剤のジェネリック医薬品※メーカーが台頭しており、この需要の伸びに対する新規供給源の確保が急務となっていました。しかし、日本では採掘にともなう地盤沈下の問題があり、米国でも埋蔵量が限られていることから増産が難しいという問題がありました。そこで当社は世界で唯一大規模開発が可能なチリで、ヨードの採掘・生産事業に着手しました。医療用途を中心に新興国で需要が拡大するヨード ヨード生産のプロセスは、日本・米国とチリでは異なります。日本と米国では、地下の「かん水」と呼ばれるヨード含有溶液をくみ上げて、そこからヨードを抽出・濃縮しています。これに対してチリでは、まずヨードを含む鉱床を掘削し、これを野積みした上に大量の散水をしてヨードを溶かしだす方法を取ります。 チリでのヨード開発では通常、この散水に使用する水に地下水を利用していました。ところが、新たな大規模開発については、地下水保護の観点から地下水の取水が制限されています。そこで今回のプロジェクトでは、海岸から鉱床のある内陸部の砂漠地帯までパイプラインで海水を引き込む方法を採用しました。 しかしながら、海岸付近は希少生物の生息地域です。絶滅が危惧される野鳥のGaviotin Chico(ガビオチン・チコ)とGaviota Garuma(ガビオタ・ガルマ)が繁殖するエリアが、計画ルート上にありました。そこで、パイプラインを敷設するにあたっては、その生態系を乱すことのないよう、繁殖地域を迂回するよう慎重にルートを設定しました。 また、鉱区周辺には考古学的に重要な遺跡があることが予測されたため、生産活動を開始するにあたっては、当地の遺跡を調査・研究している考古学者のチームと協力の上、発掘調査も実施しました。地下水保全・野鳥保護の観点から開発計画を策定 当社はチリにおいて、チリのACFミネラ社と共同で、ヨード開発・生産会社アルゴルタ・ノルテ社に出資。2010年5月からチリ・アントファガス州において工場建設に着手し、2011年から操業を開始しました。 当社は現在、世界のヨード市場約28,000トンのうち約7%のシェアを占めています。今回の事業開発によって、2015年には15%まで拡大することを目指しています。日米に続き、チリで大規模なヨード開発事業に着手環境・無機化学品部 部長佐藤 崇ACFミネラ社 副社長Mr. Carlos DeUrruticoechea S.米国チリ日本6%中国アゼルバイジャントルクメニスタンインドネシアロシアヨード産地 当社では希少な資源であるヨードの安定供給に貢献するだけでなく、現地の雇用創出にも貢献しています。チリ・プロジェクトの場合、約300名の従業員を雇用し、現地の重要な産業として役割を果たしています。 今後はヨードの採鉱・生産・販売に加えて、X線造影剤の製造にも参入し、医療分野の川上から川下までを貫くバリューチェーン構築につなげていく計画です。担当者メッセージ拡大する医療分野でのヨード需要に応えていきます。 当社は、過去25年以上、ヨードと硝酸塩のビジネスを展開してきました。豊田通商の長年にわたる物流・販売の実績を尊敬し、ビジネスパートナーになりました。この事業では、厳しい砂漠地帯において労働に適した環境を整え、300名分の雇用を生み出しています。また、環境への影響を最小限にとどめる対策も講じています。今後も法規制の遵守のみならず、環境や地域コミュニティに対しても配慮を欠かさない企業であり続けることを誓います。ステークホルダーの声60%30%砂漠の真ん中にそびえるブローアウトタワーで、ヨードを抽出・濃縮する環境や地域コミュニティに配慮した事業を行います。※ ジェネリック医薬品:新規開発した医薬品メーカーの特許が切れた後、他のメーカーによって同一成分で製造された医薬品。18

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