食料資源分野への取り組み

クロマグロ「完全養殖」の事業化を目指してヨコワ育成事業を担う新会社を設立

日本の食卓に欠かせないクロマグロ。しかし近年、世界的に消費量が増加し、個体数の減少が進んでいます。
豊田通商は、世界初の「クロマグロ完全養殖」を実現した近畿大学とパートナーシップを結び長崎県五島市に設立した新会社「(株)ツナドリーム五島」を通じて安定的・持続的なクロマグロの供給に貢献していきます。

  • ヨコワ:マグロの若魚

乱獲によって個体数が減っている天然クロマグロ──「完全養殖」への高まる期待

マグロの中でも、最も味が良いとされるクロマグロは、近年世界各国でその消費量が増加し、乱獲による個体数減少が問題となっています。この貴重な天然水産資源を守りつつ、食卓にクロマグロを安定的に供給していくためには、養殖による生産量を増やしていく必要があります。しかし、従来のクロマグロ養殖は、海で捕獲した天然のヨコワをイケスで育てるやり方だったため、生産量の安定化と資源保護の両面で問題がありました。

そうした中で、近畿大学は、マグロの「完全養殖」を目指し、30年以上前から研究を進めてきました。完全養殖とは、卵を人工ふ化させ、それを成魚にまで育て、またその成魚が次の世代となる卵を産むというサイクルを確立する、つまりすべてのプロセスを人工的に管理することです。

近畿大学は2002年に世界で初めてこの完全養殖のサイクルを確立し、現在では、国内の養殖業者に「完全養殖ヨコワ」を出荷しています。

完全養殖を商業ベースに乗せるため長崎・五島列島に新会社を設立

完全養殖クロマグロを普及させていくためには、この完全養殖ヨコワを大量に育成し、安定的に供給しなければなりません。しかし、そのためには大型イケスなどの大規模投資や販売先の拡大が必要です。そんな理由で学外の協力者を模索していた近畿大学と、食料分野事業の強化を進めてきた当社の思いが一致し、両者の間に「クロマグロ完全養殖」に関する技術協力提携が結ばれました。この提携にもとづいて、当社は完全養殖稚魚をヨコワサイズまで育てる「中間育成」を事業とする新会社の設立を決定。静かで清浄な海が広がる長崎県の五島市を事業拠点に選び、地元産業への貢献や漁業関係者との共存にも配慮しながら新会社の設立準備を進めました。

こうして2010年6月に創設されたのが、新会社「(株)ツナドリーム五島」です。同社では現在、五島市福江島に設置した海上イケスで、近畿大学から提供される人工孵化稚魚(体長約6cm)をヨコワ(体長約30cm)に育成しています。2010年12月には、このヨコワを養殖業者に初出荷。今後も、同事業のさらなる拡大を目指していきます。

完全養殖クロマグロの育成・供給

豊田通商の子会社「(株)ツナドリーム五島」では、近畿大学から提供されたクロマグロの稚魚をヨコワまで育成、国内の養殖業者に供給します。ヨコワは各養殖業者のもとで出荷サイズの成魚にまで育てられ、卸売業者や小売業者を経て飲食店や各家庭の食卓に提供されます。

世界最大のマグロ消費国・日本

年間の世界のマグロ消費量約208万トンのうち、日本は約3割を消費しています。このうち日本国内での漁獲量は約21万トン程度に過ぎず、残りの約37万トンは、台湾・地中海沿岸諸国・オーストラリアなど、世界各地からの輸入でまかなっています。世界最大のマグロ消費国である日本には、マグロに関わる生物多様性の保全に、とりわけ大きな責任があります。

生物多様性の保全と食料の安定供給を両立するために、「獲る」から「育てる」へ。

生物多様性の観点からクロマグロという貴重な種を保存すること。
そして、魅力的な食材であるクロマグロを安定的に供給すること。
これら2つの課題を一挙に解決する鍵を握るのが、近畿大学が開発したクロマグロの「完全養殖」技術です。

豊田通商は、この技術を活用して完全養殖ヨコワを育成し、養殖業者に供給する新会社「(株)ツナドリーム五島」を設立しました。
これまで天然ヨコワの漁獲に依存していた養殖業者にとっても、経営の安定化につながるものと考えています。

食料事業部 部長 兼 
株式会社ツナドリーム五島 代表取締役
西出 智

ステークホルダーの声

五島市長 中尾 郁子 氏
五島市では豊かな環境に囲まれた「しま」の優位性を活かすため、地域一体となった「マグロ養殖の基地化」を推し進めています。マグロの生育に適している五島の海に稚魚の安定確保という要素が加わることは、大きな強みとなっていくに違いありません。ツナドリーム五島の発展に期待しております。

近畿大学水産研究所 所長 宮下 盛 氏
当研究所が実現したクロマグロ完全養殖技術の確立は、水産資源の枯渇問題に対する一つの答えです。ツナドリーム五島様の事業ドメインは、私たちの産業支援型研究の実践であり、社会的な研究成果といえます。今後もクロマグロの完全養殖を通じて世界の水産資源持続に寄与できればと思います。

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