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次世代自動車の普及に欠かせないリチウム資源の安定供給へ

プラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)などの次世代自動車やスマートフォンなどに利用されているリチウムイオン電池。一度充電すれば長時間長持ちしたり、高出力を得られたりすることから今後も需要が拡大することが見込まれています。その正極材に使われている炭酸リチウムも、リチウムイオン電池需要と比例して需要が伸びています。豊田通商は、その炭酸リチウムの安定供給に大きく貢献しています。

リチウムの需給環境

リチウムは、現在、南米、豪州、中国などアジアに分布することが確認されているレアメタル(希少金属)です。需要拡大にともない、南米、北米などでも開発調査が行われているものの、現在、リチウムの生産者は世界にも多くなく、日本はリチウム原料の100%を輸入に依存しており、次世代自動車のさらなる普及のためには、新たな供給ソースの開拓が必要不可欠となっています。

アルゼンチンオラロス塩湖開発プロジェクト
調査開始から開発権取得まで

リチウムイオン電池普及の加速が確実視された2008年、当社は原料となるリチウム獲得のために世界の資源鉱量調査に乗り出しました。調査の結果、当社が着目したのはアルゼンチンのオラロス塩湖でした。当時、オラロス塩湖は未開発であったこと、湖水のリチウム含有量が多く、不純物が少ない上に、生産・輸送に必要なインフラが整っていたためです。

2010年1月、世界各国の企業が採掘権獲得に名乗りを上げていた中、オラロス塩湖の権益を所有する豪州資源会社Orocobre Limited(以下、オロコブレ社)より当社は開発パートナーに選定されました。トヨタグループとしての販路はもちろんのこと、川上から川下まで一貫したバリューチェーン機能の提供が可能であるとともに、持続的な成長を目指す当社の方向性が高く評価されたからです。

2010年以降、オロコブレ社と共に事業化調査を開始し、2011年にはパイロットプラントでの実証実験を開始。2012年9月に本プロジェクトの権益の25%相当を取得し、12月にはオラロス塩湖からかん水を汲み上げ精製をするプラント建設に着手しました。

パイプでかん水を引き、人工池で1年間乾燥させてリチウムを生産する

本格生産開始

低コスト・高効率な生産方法を
採用

2014年12月には施設の開所、本格生産をスタートしました。

リチウムの生産には主に2つの方法がありますが、塩湖の水からリチウムを精製する生産方法は、鉱石を粉砕して成分を抽出する方法よりも生産工程が少ない分、低コスト化が可能です。また、今回本プロジェクトで採用した生産プロセスでは二次精製工程をおこなうため、電池の正極材に適したより高純度のリチウムの生産が可能です。

資源の少ない日本にとって、資源確保は国家戦略の一つです。当プロジェクトは国家戦略にもかなうプロジェクトとして、JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)より鉱量評価調査などへの技術支援およびインフラFS調査に続き、債務保証制度の活用など一貫した支援を受けるプロジェクトとなっています。

安定供給に向けた取り組み

2018年2月には、パートナーであるOrocobre Ltd.へ15%の出資を行い、より強固な関係を構築しました。

リチウムの需要増に向けた増産対応、安定供給を目指し、同年11月には、生産能力を17,500トン/年から、42,500トン/年に拡張することを決定しました。拡張生産は2022年の開始を予定しています。

進化し続けるモバイル機器へ、そして期待の高まる次世代自動車へ。リチウム市場の新しいサプライヤーとして、事業価値向上はもちろん、炭酸リチウムの100%販売代理権取得により安定的にリチウム資源を確保し、次世代自動車の普及に貢献していきます。また、事業の拡大だけでなく、資源という川上分野の開発を進めることで、川下分野のさらなる発展に貢献し、ひいては両国の発展の橋渡し役を目指します。

  • リチウムの弊社売上構成比率は、売上高の約1.0%

2021年04月01日

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